再会した彼は、かっちりとした立襟の黒のカソックを身に付けることはなくなった。
少しだけ、勿体ないと思ってしまう。彼の雰囲気や美しくぴんと伸びた背筋にその装いはとても似合っていたから。
初めて会った頃の張り詰めた様子は消え、随分と表情も柔らかくなった。目覚めてからは、体が酷く冷えるらしく、最近ではこの国のこたつがお気に入りのようだ。
こたつに吸い寄せられように、すっぽりと収まり天板に腕を枕代わりに置き、うとうととしている。
来客を前にした態度とは到底思えないが、油断しきった我が子は可愛くもあるし、彼にとって己はもてなすべく来客ではなく、もう身内なのだろうと思うと口元が緩んでしまう。
「クラージィ、眠いならベッドに行きなさい」
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