眠れない夜「…眠れないのか?」
ヒュンケルは、自分の隣でもぞもぞと動くエイミに話しかけた。一週間の出張が明け、久々の我が家の寝台だというのに、どうにも落ち着かない様子だ。
「今週ずっと忙しかったから、体がリラックスモードに切り替わらないのよ…体がなんだか熱くて…」
エイミはもじもじと恥ずかしそうに答えた。
それを聞いたヒュンケルの手が彼女に向かって伸びる。
彼女はドキリとした。…のも束の間。その手は期待を裏切り、彼女の目元を覆ったのだ。
「眠らなくとも目を閉じるだけでも回復はするそうだ。明日に備えて少しでも休むと良い」
(…もう…キスの一つでもしてくれればいいのに…)
むくれて心の中で独りごちた刹那、彼女は眠りに堕ちた。
***
「君の心身が回復したら…頼むよ。なにせ一週間分だからな…」
ニヤリと笑う男の顔がそこにあった。