エフヒーの文章 その夜は外出していた。
目的があった。───そういうことにして置く。
物資は本国から無事に届けられるようになった。当然のことだ。そのために尽力したまでのこと。
今すぐにでも縋りつきたい贅沢も、私に相応しい特権も、この場の誰も理解し得ない。時折咆哮する魔物だけがこの静寂を守ろうとしない。私が声をあげる迄もない。
「王子、よろしいのですか? 今宵の風はさわります」
「こんなもの。本国ほどでもあるまいに」
「しかし…屋内のほうが。随分と暖かいものです」
「勝手にすればいい、私は好かん」
「…ご用命でしたら、直ぐにお申し付けください。しばし控えさせていただきます」
優秀な騎士ほど、どうも口が上手くない。
それほど私は人との輪を嫌うように見えるらしい。すき好まねば酒の一杯も嗜めない王族だと。
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