策士 この世に唯一つ、相容れないものがあるとするならば。
それは「生き延びること」であると思う。
そんなものに執着するから、何も見えない。良いように事を成せない。事を成さねば、何も生み出さない。そう。この身に満ちる血は何かを生きながらえさせる為にはない───何があっても替えがきくように、その威信を誇示するのみ。そんな最低限の能力もないのに、いいや、無いからこそ。「盾」としてはどこまでも有用だと言っていい。我が兄にしては珍しく、煌々と輝いてすら見える。こんなものは他ではない兄王の───晴れ舞台なのだ。
「兄上…侵攻はいかように。あとは貴方のご決断次第ですけど」
「……………」
「僕の質問が良くなかったようですね。して…いつご命令なさるおつもりで。」
975