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    702_ay

    DC(赤安)、呪術(五夏)の二次創作同人サークル『702』のアカウントです。
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    <2/3 帳の中の誕生日会>
    【祓ったれ本舗パロ】夏油の誕生日を祝う話です!

    \傑 Happy Birthday!!/

    ##五夏

     猛獣がうなりを上げるかのように、数機の複合機が絶えず稼働していた。その音の隙間を電話が埋め、判で押したようなお決まりの営業トークが始まる。キーボードを打ち込む音や、雑談なのか相談なのかわからない会話が聞こえてきて、街中のような騒音状態だ。
     その中で我関せずと、歯車のひとつとして動く。淡々と作業をするように進めて本日やるべき業務を終わらせる。なるべく定時に終わるように。だからといって素直に業務時間内に終わることはそうそうないが。今日は何事もなければ珍しく定時上りができるかもしれない。そう。このまま何もおきないまま、キーボードを淡々と打つことができれば。
     小さなバイブレーションが胸ポケットから奏でられ続けていた。不協和音だ。あまりにもしつこい着信に根負けして、表示されている名前を確認するとすぐさま電源ボタンを押した。
     見なかったこと。もっと言うならば、気づかなかったふりをするのが一番。
     瞬時に脳がすべきことを伝達して、自然と仕事の頭に切り戻す。
     さすがに一度切れられると、電話を諦めてメールに変更するだろう。たぶん、と希望的観測はすぐさまは打ち消された。細やかな振動は七海の胸ポケットの中で衰えを知らない。
    「あの……七海さん、携帯鳴っていますけど……」
     しかもすごい勢いで、と七海の努力を無下にするように隣の席の後輩に声をかけられた。
     様々な音が鳴り響くオフィスだが、比較的、七海がいる部署の一角は静かなのだ。だからこそ、地味に響く音が耳について気になってしまうのだろう。申し訳なくなるが、今言えることは心を無にしろということだけ。同じように眉ひとつ動かさずに、無表情のまま仕事を進めてもらうしかない。
    「気にしないで下さい。ただの迷惑メールなので」
    「いやいや、迷惑メールってそんなに……」
    「大丈夫です。くだらない迷惑メールなので」
     頻発して届きませんよ、という言葉をかき消して、着信を告げている振動を不要なメールだと言い切る。迷惑メールでなければ、営業の電話。押し売り。マルチの勧誘。なににしろ、不必要なものだ。そう伝わればいい。
     どこにそれだけのパッションがあるというのか。一般的な人間なら、一度電話を切られると都合が悪いと察して電話を諦める。留守電を残すか、メールで要件を告げることはあるかもしれないが、ディスプレイが映し出していた名前は予測の斜め上を平気で行くような人だ。相手が電話を取るつもりがないと察しただろうに、これだけ永遠と電話を掛け続けられる強靭な精神の持ち主。心の強さは未確認生命体、UMAでも相手にしているようだ。自分なら心がとっくに折れているはずだろう。その前にこんなに鬼電するつもりはないが。
     不毛な我慢比べ勝負を行うつもりだった。相手にするのは仕事が終わってから。それで十分だろうと思っていたが、外回りから帰ってきた女性社員が興奮気味に隣の席の社員と話をし始める内容が聞こえてくると、そうもいかないことを悟るしかなかった。
     うっすらと漏れ聞こえてくる会話に、ぴくりとこめかみが引き攣る。
    「ねぇねぇ。今、会社の入り口にさ……」
    「嘘っ! 入り口に? え? なんで? 撮影?」
    「わからないけど。カメラとかなさそうだったし、一人だったからオフじゃないのかな? 生で見るとマジ顔小さいし、足長すぎて、リアル九頭身。世の中の理不尽さを目の当たりにした感じ」
     カタ、とキーボードを打ち込んでいた手を止め盛大に息を吐き出した。これはおそらく、逃げられない。このままではいつか大声で名前を叫び始められても不思議ではない。相手はそんな男だ。
     デスクに積まれた書類の山と今日の残りのスケジュールを瞬時に脳裏に思い描く。どれもこれも優先度は高いが、今日中に終わらせなくても締め切りまで余裕があるものばかり。本日すべき最低限。本当に最低限の仕事はすでに終わらせている。ならば。
     未だに主張を続けるスマートフォンを取り出し、電話には出ずにアプリを立ち上げた。送信先は二名。至急と書いておいたので、仕事が終わり次第、駆け付けてくれるだろう。たぶん。いや、一人は問題ないだろうが、もう一人には断られる気はするが。
     社内システムに問答無用で有休を申請し、承認されることを確認もせず席を立ち上がった。今は一刻も早く。しかるべき場所に行くために。
    「すみません。急用を思い出したので、本日は早退させていただきます」
    「え? あ、おい! 七海!」
     後ろから追ってくる上司の戸惑いの声を聞こえないふりして、エレベーターに飛び乗った。
     オフィスから一階に向かうまでおよそ十分。ものすごく長い時間に感じる。どうしてコート掛けなんかにコートを掛けていたんだとか、そんないつもなら何も思わないようなことに時間を使用することでさえイライラが募って。
     予想通り、ビルを出ると男が壁にもたれかかっていた。
     変装のつもりなのか申し訳ない程度に丸いサングラスが特徴的な瞳を隠しているが、最も目立つ白髪はそのままだ。せめてキャップでもかぶっていればと思ったが、彼の場合はキャップをかぶろうと、日本人の平均身長を頭ひとつ分、飛び出る高身長を持ってして意味がなくなるのだろう。
     スマートフォンを操作している男――五条に躊躇いもなく声をかけた。
    「とてつもなく迷惑だということが、わからないんですか?」
     鬼電も、ここに直接来られることも。
     遠回しな言い方は時間の無駄になるため、ストレートに言葉にしたというのに、目の前の男は晴れた日の空のように表情を明るくした。
    「あ、七海ぃ―! お疲れ! もう終わったの?」
    「いいえ。五条さんのせいで早退してきました」
    「えっ!? 僕、大人しく待ってたのに!? てか、社畜の七海が僕のために早退してくれるとか、僕、すげぇ愛されてるくない!? あ、でもごめんね。僕には傑っていうマイベストナンバーワンがいるからさ」
    「夏油さんに勝とうなんて一ミリも思っていませんよ。それより、私のことを思うなら先に連絡をください。それかどこかの店で大人しく待っていてください。こんな会社のド真ん前で待たれるなんて、ただの嫌がらせでしかありません」
    「だって、七海が何時出てくるとか僕、知らないもん。それに連絡ならめっちゃしたじゃん」
     事前アポという言葉は五条の中には存在していないようだ。あくまで自分本位。元から知っていたことだが、一般企業とは少し違ったとしても仕事をしている大人。社会の荒波に揉まれ、常識を身に着けたかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
     これ見よがしにため息を吐く。オフィス街で行き交う人間の雑踏の音が多かろうと、これだけ近ければ聞こえるはず。聞こえたところで、五条の場合は露とも気にすることはないのだろうが。
    「なら覚えておいてください。一般的な社会人の終業時間で最も多いのは十八時です。そして、今はまだ十五時。つまり基本的に仕事中です」
    「ふーん。あっ! それより相談があるんだよね!」
     一刀両断。これほど力強く言った言葉をたった四文字でまとめる人間がいるだろうか。これは覚える気がさらさらないということだ。つまり、また同じようなことを繰り返すことになるのだろう。
     毎度、今日のように早退ができるとは限らない。むしろできないことのほうが多い。今日は本当にたまたまなのだ。会議もなければ、締め切りに追われた仕事もなかった。もしかしたら定時で上がれるかもしれないなんて、淡い期待が持てた日でなければ。
    「その人の話を全く聞かないところは相変わらずですね」
    「なんか言った?」
    「いいえ。それより移動しますよ」
     日常会話がもはや漫才レベルのツッコミどころ満載な男との会話に人々の視線が突き刺さる。主に女性から。そうして聞こえてくるのは、あれって祓ったれ本舗の五条? だ。一応疑問形ではあるが、九割九分は確信の響きが含まれている発言。
     まずは移動が最優先。このままここにいては、ただの見世物になってしまう。余計なギャラリーが増える前に移動しなければ。どこに行こうがこの男は人の注目を集めるのだろうが、少しでも人の目を避けられる場所に向かうべきだろう。
     相談というものが一体なにか想像がつくような、つかないような。ある程度予測を立てながら、タクシーを停めた。退社前に送っておいた至急連絡に反応があったほうに、移動先を連絡することも忘れることなく。



     目の前に置いてあるブラックコーヒーの味がまったくしない。こんなことのために、自分は仕事を明日に回してまで早退してきたのか。眩暈がすると同時に馬鹿らしくなってくるが、五条を相手にすればそれら全部がまかり通ってしまう気がするのだから、呆れを通り越して腹が立ってくる。弱火でじわじわと沸点を茹でられている気分だ。
     これは一人なら耐えられなかったはずだ。
     業後に駆けつけてくれれば御の字と思っていたところを、同じように早退して来てくれた。やはり持つべきものは同級生の友人らしい。ひしひしとありがみを実感していたのに、すぐに申し訳なさに変えてくれる男はもはや天才なのだろう。そう思わなければやってられない。
    「相談っていうのは、傑の誕生日プレゼント何がいいかなってこと!」
     どうでもいいような世間話を吹っ飛ばし、余分な言葉をすべて切り捨てて告げられた内容は予想の中のうちのひとつではあった。眉を顰めるような内容でなかったことだけは救いか。ごくごく普通の内容とはいえ、メールでもよかったんじゃないだろうかと思ってしまう。少なくとも事前連絡もなく、人の職場に押しかけてくる必要性は感じられない。
     手元にあるドリンクで唇を湿らせてから口を開いた。
    「五条さんからのプレゼントだったら、何でもいいんじゃないんですか」
    「自分もそう思います! 夏油先輩は喜んでくれますよ!」
    「それって道端に落ちてる石でもってこと?」
    「え、えっと、……」
     予想外の切り返しだったようで、灰原は言葉を詰まらせていた。五条を相手にするには未だに純粋すぎる。もうずいぶんと長い付き合いで、あしらう時はひとつの迷いもなくあしらうしかないというのに。
     実際、夏油ならひとつ瞬いてから、ありがとう、と大人の対応をするだろう。たとえそれが道端の石だろうと、悟が渡してくるっていうことは何か意味があるんだろう? とか言って。
     そっと息を吐き出して灰原に助け船を出してやる。
    「道端の石が気になるようなら、月の石にでもしたらどうですか?」
    「あー、なるほどー。月かー。それいいな。だけど、さすがに今から行ってこれねぇしな」
    「……本気にしないでください」
     真顔で悩み始める男に真顔で返した。
     石は無理だろうが、月の土地はどこかで販売していると聞いたことがある。それならワンチャンあるだろうか。そんなものプレゼントだと渡されても困るだろうが、ネタとしては十分な気もする。だが。
    (余計な事を言ったら、夏油さんを困らせるだけだろうな……)
     月の石ではなく月の土地のほうがいいんじゃないんですか? いや、月の土地なんてよくわからないものを貰うくらいなら、やっぱり日本国内の土地のほうが実用性があっていいんじゃないんですか?
     そんな正当なツッコミをしてしまえば、本気でどこか国内の土地を買いそうだ。夏油のことを思えば、ここは静かに聞き流すのが一番だろう。味のしないコーヒーカップを持ち上げ、喉を潤すことで飛び出しかけた言葉を一緒に口の中に流し込む。
     さて、どうすれば五条は自分の中で納得した答えを得ることができるだろうか。夏油が困らないような、一般的な誕生日プレゼントを頭に思い浮かべていると、じいっと水縹の瞳がこちらを見ていた。
    「ちなみにオマエらどうすんの?」
    「あ、自分たちは連名でドラム式洗濯機です! もちろん家入先輩も一緒ですよ」
    「何、その具体的な品物。傑ん家、洗濯機あるけど?」
    「雨だろうと洗濯する人がいるらしいので、気にしなくても済むようにしたいそうですよ」
    「ふーん、あのガキどもか。傑に迷惑かけるとかマジうぜぇな」
     たぶんアナタのことですよ、とは口が裂けても言えなかった。五条の言うガキどものほうがよっぽど常識を理解している。きっと彼女たちは彼女たちで身の丈に合ったプレゼントを渡すのだろう。それを受け取った夏油が嬉しそうにしていることに、また五条はへそを曲げるのだろうが。
    「それ傑に聞いたの?」
    「家入先輩が聞いてくださいました。あ、いっそのこと夏油先輩に聞いてしまうのはどうでしょう?」
    「やだよ。サプライズにしたいもん。えー、本当、何がいいと思う?」
     ね、ね、アイディア頂戴、と駄々っ子のように口にしてくる男に灰原と顔を見合わせた。
     五条のほうがよっぽど夏油が欲しいものを知っているはずだ。自分たちもプレゼントをどうするかと話していた時に、タイミングよく家入から連絡がきた。今年の夏油の誕生日プレゼントは連盟な、と。社会人、それも医者や一流企業の人間が集まり、さらには連盟となると下手な物を渡すわけにもいかない。結果、あの小さなアパートに似つかわしくない最新式のドラム式が選ばれた。夏油なら乾燥機が付いていれば何でもよかったのに、と苦笑しそうだが。
     そもそも規格外な五条は今まで何をプレゼントしてきたのだろうか。はじめて相談があると面と向かって聞かれると気になってしまう。
    「ちなみに去年は何をプレゼントにお渡しされたんですか?」
    「去年? んー、……車?」
     疑問形になっているのは聞き流すのが正解なのだろう。一言一句気にしていては、常識が追い付かなくなるに決まっている。
     珍しいもの持ってますね、と言うと、もらったんだよ笑っていたのはそういうことか。夏油にファンという名のパトロンでも現れたのかと思っていたが、腑に落ちた。考えてみれば、もしもそんなファンが存在しているなら五条が難癖をつけるに決まっている。乗ってみたいとは露とも思ったことのない派手な車の選択は、さすが五条らしい。確かに運転をしている夏油は似合っているが、あのスポーツカーであの古いアパートに帰るのはアンバランスすぎる。
     頭を悩ましている五条に灰原が首を傾げた。
    「家入先輩には聞かなかったんですか?」
    「五条が渡したら何でも喜ぶだろ、だって。オマエらと全く一緒の回答で困ってんの!」
     本当にその通りだと思う。家入も言葉の通りにそう思ったから、そのまま言っただけだろう。
    「夏油先輩の家は物も揃ってますしね……。んー。ないとすれば……物の置き場?」
    「ん?」
    「いえ、相変わらずあの家で暮らされていますし、整頓はされていますが贈り物も多いみたいなので、たくさんの物で溢れかえっている印象があって……」
     看板番組こそないがレギュラー番組はあるし、雑誌の仕事も増えているから、芸人の仕事だけで食べられるようになったと言っていたか。飲みに行けばおごってもらう回数も増えた。金回りがよくなっていることは明確だが、変わらず築年数のある古いアパートに住んでいる。
     知った土地だから、引っ越しする暇もなくて、なんて本人が言っていたことも聞いたことがあるが、消えものではない貰い物の置き場に困っているとも確かに言っていたことはあった。だが。
    「物置ってこと? トランクルームみたいな? なんか面白みに……ああ! そっか。いっそのこと、家にすればいいのか!!」
    「ああ。なるほどですね! それっていわゆる、あいの――……」
     慌てて灰原の口をふさいだが遅かった。半分以上飛び出た言葉に五条は盛んに瞬いて。
    「あいの……? はっ! そうか! 愛の巣じゃん!」
     上機嫌になった五条の反応をみるに、どうやら今年の誕生日プレゼントが決まったようだ。それもはた迷惑な方向のプレゼントが。
    「そうと決まればさっそく探さなきゃ! じゃあな、オマエら!!」
     現れた時と同じように嵐のように去っていく五条に、本気ですかね、と灰原が声を落としている。
     この様子は多分でもなく本気だろう。基本的に金銭感覚が狂っている男だ。とりわけ夏油のことに関するとそれは類をみない。
     サプライズにしたいらしいが、内容が内容だけに夏油に事の顛末を伝えておくべきだろう。あまりにも重すぎる誕生日プレゼントになりそうだと、謝罪のメールを送ることにした。

    【Happy Birthday……?】



    (おまけ)

    「ジャ、ジャーン! ここが傑君の新しいおうちになりまーす!」
     目の前に広がる一室は広々としたカウンターキッチンのリビングだ。ここだけで今住んでいるアパートの部屋がすべて入ってしまいそうなくらいの。
     事前に連絡があったため、衝撃はまったく知らなかった時のことを思えばまだマシだろうか。いや、現実的に見せられると誰だって頭が痛くなるだろう。車に続き、家なんてなると、来年あたりには婚姻届けでも持ってきそうだ。いますぐに同性婚のできる国に移住しようなんて言い出して。
     プレゼントだと渡されるものは基本的に受け取るようにしている。そこに値段の優劣はなく、相手が自分のことを考えてくれているのだから、受け取らないという選択肢は失礼にあたるだろう。ファンから送られてくるようなものなんかは最たるものだ。手紙一枚だろうと、そこに気持ちが見え隠れしているのだからどんなものだろうとありがたいと思う。
     五条の場合の気持ちはと考えていた無言を感動と受け取ったらしい。水縹がキラキラと輝く。そんな顔をされるから、強く言い返すことができないのだ。まったくもって、甘やかしている自覚があるだけに、我ながら悪い癖だなと小さく息を吐いた。
    「嬉しすぎて言葉が出ない感じ!?」
    「そうだね。相変わらず重いプレゼントだなって思ってるところかな」
     止めるなら止めてほしかった。そして余計な助言もしないでほしかった。だが、今さら言ったところで後の祭り。後輩たちにとって、いや自分にとっても五条は難攻不落だ。何をしでかすかわからないし、本当に規格外すぎる。彼らを責めるべきではなく、悪いのは常識というものを母親のお腹の中に忘れてきた五条だ。
    「僕たちの愛の巣だよ。湾岸エリアも一望出来て景色も抜群だから! それに傑が料理しやすいように広めのキッチンにしたんだよねー」
     さて。どうするべきか。素直に引っ越すか、言葉を尽くして諦めさせるか。
     救いは七海が責任を感じて、仮契約で引き留めてくれていることだ。家は人によっては一生ものです。そうなるとやはり本人が気に入ることが一番大事ですよとさりげなく言葉を尽くしてくれたらしい。そのため今ならまだギリギリ引き返すことができる。この分不相応なタワーマンションから去ることはできる。
     こういう時、七海は本当に真面目だ。五条に振り回され続けているだろうに律儀に対応して、常識の範囲で物事を考えてくれる。灰原だと五条にまるめられてしまうだろうし、反対に家入ならおもしろがって、そのまま本契約まで進めていただろう。
     車と違い所有していないものではない。慎重な言葉掛けが必要になるわけだが、楽しそうにここがこうで、あそこがああで、と説明をしてくる姿を眺めているといろいろ考えていたセリフが出てこない。
     あ、と声をあげて最も大事なことを忘れていたと五条が笑う。
    「誕生日、おめでとう! 傑!」
     これからのことを考えると頭が痛いことには変わりないが、純粋に喜ばせようとしてくれる善意だけを今は受け取ることにした。
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