ミラームーブ・ワルツ「ふぅふぅちゃん、こう、手を前に突き出して?」
正面に立った浮奇が右手を伸ばして来たので、それに倣い、同じ様に右手を差し出す。するとそれは彼の意図した行為ではなかったようで、「そうじゃなくて……ね」と前置きをして事の説明を始めた。
「ミラームーブ。鏡合わせっていうか、相手を真似して鏡に映っているように動くっていうやつしたかったんだ」
「最初に言ってくれれば合わせたぞ」
「それじゃつまらないかなと思って」
浮奇は今回の様なコミュニケーションのひとつであっても何かとサプライズが好きなのだ。失敗しても笑うが、成功すると柔らかな、それでいてセクシーな声音でヘヘッと嬉しそうに声を漏らし目を細める。どちらも愛おしいと思うが、このまま別の話題にいくのも残念な気がして、降ろしていた右手を再び掲げて見せる。
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