Rubedoいつの頃からか、“誰か”を殺す夢を見るようになった。それが訪れるのは月が出ない夜だった。赤と紫が混じるネオンに照らされた機械仕掛けの街の片隅、ざあざあと降り続ける雨に打たれる凍えそうな寒さの中で、俺は大切なはずのその人間を手に掛ける。
決まって始まりは手に持ったハンドガンで、そいつの心臓を撃つシーンからだった。どうしてそんなことになったかはわからない。何らかの諍いの果てなのか、或いは敵同士だったのかすら。貫かれる弾丸と重力に従って倒れていく身体が水溜まりのできたコンクリートに赤い染みを作るのを、ただただ呆然と見ている。遠くから聴こえる遠雷。ぴくりとも動かない肉の塊。長く反響する無機質なサイレンに酷く眩暈がする。
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