月の兄弟は新月に沈む〈誰そ彼時〉
「キョウは僕とレン、両方が同時に溺れてたらどっちを助けてくれる?」
夕日が射す教室の中、アスターは課題の手を止めて、机の向かい側に座るキョウにぽつりと投げかけた。
「なんだ、それ」
スマホの画面を見つめていたキョウは顔を上げ、訝しげな顔でアスターに向き合う。
しかし、天つ人は陽に照らされた空を見つめており、キョウと視線が交わることは無く、ただ無言の空間に答えを促された。
「俺は、」
〈彼は誰時〉
「キョウはさ、俺とアスター、両方が同時に崖から落ちそうになったら」
気怠く、だけど淡い光が清々しさを感じさせる朝の空気の中で、隣に並ぶレンはふとキョウに喋りかけた。
ドクンと心臓が鳴る。この質問は、どこかで。
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