無題 人は死んだら広い広い一面の草原に行く。
しかしそれはよく見ると全部セロリだ。
いつだったか、死んだらどうなるのか気軽に死ぬアホに気軽に尋ねた。返ってきた答えは衝撃的で、死んだら問答無用で地獄行き確定。ひどすぎる。右を見ても左を見ても地平線の彼方まで続く悪魔の草原を想像して、死にたくないと泣き喚く俺にドラルクはなんて言ったんだったか。笑っていたのは間違いない。真っ白で無駄に立派な牙を剥き出しにしながら、俺を指差してムカつく顔で笑っていた。
ドラルクの声が聞こえにくい。最初はあいつが小さな声でボソボソ喋っているせいだと思っていたが、どうもそうではなくて、俺の耳がおかしくなっていただけらしい。もしかすると意識が一瞬飛んでいたのかもしれない。危なかった。うわんうわんと邪魔していた耳鳴りがチューニングを合わせるように徐々に治まり、声がはっきり聞こえ始める。それでも俺はまだドラルクが呪文か何かを唱えていると思っていて、それがちゃんとした日本語だと気付くのに更に少しだけ時間がかかった。
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