ひとひらの眠り。「刃ちゃん、この間のことなのだけれど」
「エリオに私が演じるべき『脚本』を確認してもらったの。そうしたらしばらくの間は重要な役割は無いと言っていたから、幾らか好きに動ける時間を作れる事になったわ」
「何が言いたいって……言い方が回りくどいかしら?」
「つまりはね、貴方が私の事を好きにしていいと言うことよ。貴方が何を言っても私はそれを拒まないわ」
次の星間移動の為に待機していた船内のロビーに現れたカフカは、突然、そんな突飛な事を刃に言い出した。
聞けば先日、あの男に敗れた後にしてしまった事の埋め合わせをしたい、との事らしい。刃からすればあの日の事はもう過去になっていて、された事を忘れた訳では無かったが、お互いの間違いについては精算したつもりでいたのだ。だが、カフカから見た分には同等の罪滅ぼしになってはいなかったらしく、この現状となっている訳だが。
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