『託した未来のその先』 さながら、闇を照らす光の標のようだった。
「カモン! シューティング・スター・ドラゴン・テックジーナス-エクスパンション!」
電子の夜空へと遊星が手をかざせば、耳朶に響く咆哮が喚ぶ声に応える。刹那、彼の頭上に銀翼の竜が現出した。
片腕の武装から一直線に迸る光を受けて、人の何倍もある機械の巨躯が鈍く輝く。翼から溢れた光は細氷の如く、粒となってきらきらと零れ落ちていた。
粛然と主の命を待つ竜を見上げ、遊星の傍らにいた決闘者――ブルーノは感嘆の息をついた。
タッグデュエル大会の場へと足を運んだのは、決闘者としての好奇心からだ。再び記憶を取り戻したばかりで平時の時間を持て余していた、という部分もある。パートナーはランダムに選ばれると聞き、どんな決闘者と組めるか心躍らせていたところに巡り合ったのが遊星だった。
改めて互いのデッキと戦術を確認した際、お前と肩を並べて闘えるのであれば、と差し出されたのがこのモンスターカードだ。あの時のブルーノは驚きのあまり言葉が出てこず、目線だけで問いかけるのがやっとだった。
「新しい未来で得た、オレ達の新たな絆の力さ」
互いの力が重なったアクセル・シンクロモンスターを、遊星は微笑みながらそう称した。
「ブルーノ」
不意に呼ばれて視線を落とす。こちらを向いて不敵に笑う遊星の瞳が、サングラスに隔たれたブルーノの視線を捉えた。
見ていてくれ。
凛とした青い瞳がそう語るので、ほんの少し口元を緩ませて頷く。遊星は返事を認めるなり、相手に向き直って次の一手を投じ始めた。マーカーが頬を伝う精悍な横顔に与り知らない進化の片鱗を感じて、ブルーノは目を細める。
前を走り教え導いたことも、後ろで見守り支えたことも、相対して鎬を削ったこともあった。だからこそ、今、隣で共に闘えることが何よりも嬉しい。今日は純粋に腕を競い合う場だから、尚更だ。
遊星が敵を指し示すと、銀翼の竜は天高く舞い上がった。上空から剣の切っ先を向けて狙いを定めると、一直線に急降下しその刃で目標を穿つ。光の軌道は空を疾走る願い星のそれに似ていて、ブルーノに流れ星の言い伝えを想起させた。
二人の友の希望となった流星が、己が限界を超えて掴んだ無限の力を手にしたというならば。願い事をひとつだけ、この縁を頼りに委ねておこう。
――どうか、いつまでもキミの傍に。
竜の形をした流れ星に、ブルーノは願いを託した。