IFKK構想ジークが巨人の腹から産み出されたかのように現れた。その瞬間に大雨が止まり、雲の隙間から光が差し込む。
まるで祝福された子のようなジークに忌々しい気持ちを抱きながら、私は覚悟を決めて一か八かの賭けに出た。
天使の梯子など呼ばれる薄明光線が溢れる中、私は大怪我で意識がほぼないリヴァイを抱えていまだ渦巻く濁流の川に飛び込んだ。
育てたつもりの部下に裏切られ、エレンは取り返しのつかないことをしようとしている。
フロック率いるイェーガー派に無残に拘束され、ジークを追いやった場所への道案内を大雨の中、私はさせられた。まだ馬に一人で乗せてもらえることだけが人扱いされてるのかもしれない。
だが……
間もなく私は殺されるだろう。
辱めを受けるかもしれない。
そして……
私の遺体は見せしめにされるだろう。
頭に浮かぶ嫌な経験と想像をもとに、心は一人勝手に死地へと赴いていた。
もうすぐ巨大樹の森に差し掛かる川岸に悲惨な状況が現れた。
粉々に壊れた荷馬車、火傷を負い死んだ二頭の馬、散らばった人の体、うつ伏せにうずくまった煙を出す巨人がいるという想定外の出来事に突如出くわしたのだ。
周囲を見回すと川縁の草間に自由の翼を纏った人物が倒れている。
安否を確認するために駆け寄る私を咎める元部下の声がするが無視した。
ああ、やはり……、当たって欲しくない勘ほど当たる。
リヴァイ、君は一体なぜこんな事になってるのだ。
ほぼ死体としか見えない君に、危害を加えようとする元部下達を私は嗜めた。
そして、諦めてた生への渇望が湧く。
「もう追っ手はいなくなったよ」
草むらに隠したリヴァイに声を掛ける。
リヴァイの怪我は酷く、包帯代わりに彼の顔に巻いた兵団マントに傷の形に血が浮かぶほどだった。
私はリヴァイを守るため、追っ手となった元部下を二人、手にかけた。
先ず一人目の喉を掻き切り、その亡骸を目につくところに置き、罠とした。ついでに彼の武器なども頂く。
二人目はその亡骸を見つけたおひとよし。
そうか、掻き切った彼は「オリヴァー」というのか。罠にかかってくれた彼の名前はわからないのは申し訳ないが、林の中から狙撃させてもらう。隻眼の私でも命中させれた。そして、倒れた彼に追撃をする。非道なことをしている自分と元部下たちへの思いが右目から流れた。
川縁から巨大樹の森へと身を隠す為に移動する。
巨大樹の森は荒らされており、確実になにか大変なことがあった様相だ。
幸いに、修理すればどうにかなるかもしれない荷車に、無傷の野営道具の木箱が見つかった。
先程の追っ手の馬なども連れてこれたから、どうにかなる、できるという気持ちになった自分に安堵した。
テントを張り、焚き火をして寝具にリヴァイをねかせる。濡れた上着は脱がせた。
リヴァイの顔の傷を縫い合わせながら、私はいろいろ呟く。こんな重傷でも命があるのは、アッカーマンだからだと……。あどけない顔をして昏睡するリヴァイに上掛けを掛ける。
そして、私は上掛けの中に手を入れ、リヴァイのズボンや下着を取り払った。湿っている体を拭きあげるときに、私は驚愕の事実に目を見張る。
「リヴァイ 、(OKK874完成時にセリフが入ります。今日はお預けです)」
動揺した私は、かえって難しい独り言をごちていたように思う。
きっと、あれは、突然湧いた出来心だったのかもしれない。そう言わないと落ち着けなかったのかもしれない。
「いっそ二人でここで暮らそうか」
ねぇ……リヴァイ ――
弱音なのか本音なのか区別つかない私の言葉は巨大樹の森の夜に、昏睡してるリヴァイの耳に吸い込まれていた。