孵らなかった初恋の卵「我が名は吸血鬼『男体妊娠が性癖! 』我が目を見た者はブェー」
はい、終わり終わり。と、相手が名乗り切る前にロナルドの右ストレートが決まる。
そのまま慣性の法則に任せて後ろに吹っ飛んだ敵性吸血鬼と思しき男は、何事かをブツブツ言いながらよろよろと立ち上がってみせた。
「アレ? スピード解決じゃないの? 」
と興味がなさそうにスマホをタプタプといじりながら間の抜けた声でドラルクが言う。
昼なのか夜なのかもわからなくなるほどに暑さが厳しい7月である。できることならさっさと帰って空調の効いた部屋で実況配信でもしたい気持ちなのだが、こうして夜毎に面白おかしい吸血鬼が現れるのでドラルクも仕方なく同行しているのであった。
4607