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    U_Re_0820

    バビロニアアニメからFateジャンルに入って王様に気を狂わせました。
    よろしくお願いします!!!!!

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    U_Re_0820

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    ※ぐだキャスギル(付き合ってない)
    ※一応寝た経験はある

    背中を触られてぞわぞわしちゃう王様の話「王様の背中、綺麗ですよね」
     ふとそんな感嘆混じりの声がギルガメッシュの耳に届いたのは、マスタールームの備え付けベッドに寝転がって、タブレット端末に表示された情報を何とはなしに眺めていた時だった。
     スクリーンから目を離して顔を上げる。うつ伏せのまま声のした方へ視線をやれば、これまた備え付けの丸椅子を律儀にベッドの側まで引っ張って座っている部屋の主と目があった。彼の手にはつい先ほどまで手慰みのように開かれていた本がすっかり閉じられた状態で鎮座している。読み終わったのか、はたまた単に飽きたのか。目の前の情報だけでは判別することはできなかった。
     先ほど青年に告げられた言葉を頭の中で反芻する。悪意など微塵もないであろうその言葉に、しかしギルガメッシュはぴくりと片眉を吊り上げた。
    「……我が玉体に文句があると?」
     常人であれば、自身の容姿を褒められたと喜ぶか、もしくは照れるところだろう。だが、ことギルガメッシュにおいて、それらは当て嵌まらない。一部を選んで褒められるということは即ち、それ以外は称賛に値しないと言われているに等しいのだ。
     褒められたにもかかわらず不機嫌を隠そうとしないギルガメッシュの様子から、その意味合いを察したのだろう。
     藤丸は、そうじゃなくって、と人懐こい表情を浮かべた。
    「もちろん王様はどこもかしこも綺麗で格好良いですけど」
    「そうであろうとも」 
     ギルガメッシュはふふんと鼻を鳴らすと、続きを促すべく青年を見上げた。彼は少し考え込むような仕草のあと、へにゃりと眉尻を下げて笑う。
    「なんていうのかなぁ。……ほら、背中とかって自分じゃなかなか見えないじゃないですか?そういう、普段意識しないようなところまで完璧なんだな、って」
    「……何をのたまうかと思えば、くだらぬことを」
     ギルガメッシュは、はぁ、と小さく溜息をついた。呆れ混じりの声と共に、再び視線を手元のタブレットへと戻す。
     有象無象の雑種共はともかくとして、仮にもこの王の玉体だ。どこであろうと瑕疵などあろうはずもない。美しいのは当然のこと。言葉で褒めそやされたところで鼻白んでしまうだけだ。例えるならば、水底を泳ぐ魚を見て「泳ぎが上手だ」と称賛するような愚かさだ。
     とはいえ、根が素直な青年のことだ。本当に深い意図などなく、ただ思い付いたことをそのまま口にしただけなのだろう。
     ギルガメッシュは画面を指先でスクロールしながら、視線をその上へ滑らせていく。その興味の対象は、すでに端末に映し出される文字列へと移っていた。
    「王様、」
     しかし、青年の方はそうでもないらしい。彼はギルガメッシュの顔色を窺うようにちらちらと視線を向けながら、言葉を続けた。
    「あの、ほんと変な意味じゃないので、全然拒否してもらっても大丈夫なんですけど……」
    「何だ」
     視線を上げぬまま相槌を打つ。
    「ちょっとだけ触っても?」
    「貴様、思ったより図太いな??」
     つい直前までしおらしい言葉を吐いていたのと同じ口から出たとは思えない大胆な物言いに、ギルガメッシュはあんぐりと口を開けそうになった。思わず青年を見上げれば、彼はしゅんとした様子でこちらを見つめている。
    「やっぱり、だめですか……?」
     ベッドに寝転んでいるギルガメッシュより、椅子に座っている青年の方が目線の位置が高いはずだ。それなのに、どうしてか上目遣いに見上げられているような錯覚を覚えてしまう。
     ギルガメッシュは逡巡ののち、ふい、と視線を戻した。青年から飛び出た予想外の言葉に一瞬虚をつかれた心地がしたものの、別に目くじらを立てるほどのことではないと思い直す。本来であれば不敬と断じて然るべきところだが、仮にも相手はマスターたる青年だ。特段厭う理由もなく、触れられて困るような場所でもない。……それに、とギルガメッシュは内心でひとりごちる。この青年の手の温度は、嫌いではなかった。
    「……好きにせよ」
     ぽつんと呟かれた言葉に、藤丸はその表情に微かに喜色を滲ませる。彼は失礼します、とよく分からない挨拶の言葉を吐いて、ギルガメッシュへと手を伸ばしてきた。
    「……」
     そろりと、指先が控えめに背の中腹あたりに触れたのを感じる。どちらかといえば低体温気味の自分とは異なって、ぽかぽかと温かい子供のような体温だ。
     ややかさついた指が、おずおずと皮膚を辿って背骨に触れる。そこにある骨の形を確かめるように軽く押して、それから背筋の窪みをなぞるようにゆっくりと上へあがってきた。焦ったさすら感じるような手つきに、ギルガメッシュは知らず吐息を漏らす。
     藤丸はある程度上まで辿り着くと、青い上衣で隠れる肌には触れることなく、そのまま横へと指先を滑らせた。ギリギリ上着では隠れない肩甲骨の下、微かに凹んだ箇所を親指の腹ですり、と撫でる。僅かに圧を掛けて何度か往復した後、少しの間を置いて、ぺたりと手のひら全体が肌に添わされた。
    「っは……、」
     無意識に息を吐いた。熱い。この青年の手はこんなにも熱かっただろうか。遠慮がちだった触れ方が次第に大胆なものに変化していくのを感じながら、ギルガメッシュは額をベッドに置いたままのタブレットへと押し付けた。液晶のひんやりとした感触が心地良い。そこでようやく、ギルガメッシュは自身の顔がほんのりと火照っていることに気が付いた。
     青年の手のひらが背中を辿っていく。面立ちのせいで幼い印象が強かったが、藤丸の背は彼の母国では男性の平均にあたり決して小柄という訳ではない。数々の死線をくぐり、困難を乗り越えてきた青年の手は思いのほか大きく、しっかりと厚みのある男の手をしていた。
     肩甲骨のあたりに置かれていた手が今度は下に向かって降りていく。腰に向かって撫で下ろすような仕草に、ぞくりとしたものがギルガメッシュの肌を這い上がった。
     別に、背中自体は触れられて困るような場所ではない。ない、が。
    「っ、」
     背中を撫でていく手のひらが、ほんの少し腰の括れを掠める。じわ、と身体の芯に熱が灯るような感覚に、ギルガメッシュはきゅうと目を瞑った。触れられた箇所が熱い。肌からその内部へ染み込むようにじんじんと疼いている。皮膚接触をしているせいで、彼の魔力が流れ込んでいるのだろうか。よく分からない。ただ不思議なほどに熱くて。ぞわぞわとして。けれど不快ではなかった。
    「王様は、」
     不意に青年の声が響く。右半身を辿っていた手が左側へと移動し、つつ、と腰から上の方に向かって滑っていく。
    「この背中に、ずっとひとりでウルクを背負っていたんですよね」
     肌を辿った指先が、ちょうど心臓よりも少し下のあたりで止まる。
    「ウルクだけじゃない。この背中が、……俺を、俺たちを守ってくれた」
     藤丸の手が置かれた場所。その意図に気づき、ギルガメッシュは微かに瞠目した。それは、あの決戦の日、特異点と化したウルクの地でギルガメッシュが最期に負った傷。青年を庇い、ティアマトの狙撃が貫通した部位だった。
     青年の指がそっとその部分を撫でる。労るように、祈るように。ひどく優しい手つきで、藤丸は触れる。
    「ぅ、ッん」
     そこにはもう傷口はおろか、傷跡さえ残っていない。今のギルガメッシュはサーヴァントなのだから当然だ。だが、致命傷となったその場所は英霊となった今も記憶に刻まれたまま、繊細な感覚を残している。
    「やっぱり、綺麗だ」
     そこを指の背で柔く撫でられるたび、腰が震えそうになる。漏れそうになる声を何度も呑み込んで、代わりのように熱っぽい息を吐き出した。もっと触れて欲しいような、触れて欲しくないような、矛盾した感情にのまれていく。
    「……ぁ、ふじ、ま」
     もどかしさと切なさに耐えかねて腰を浮かせ掛けた時だった。
     それまで背に触れていた温度が、ふと遠ざかっていく。
    「……?」
     急に全てを放り出されたような状態に思考が追い付かず、ギルガメッシュはのろのろと顔を横に向けた。傍に立つ青年をぼんやりと見上げる。
     藤丸は普段と変わらない様子で、そこに佇んでいた。彼は気の抜けるような笑みをギルガメッシュへと向ける。
    「ありがとうございました。俺のわがままを聞いてくれて」
     穏やかに紡がれた青年の声は平静そのもので、そこには微塵の動揺も感じられない。椅子に腰をおろそうと足を向けかけた藤丸の服の裾を、ギルガメッシュは反射的に掴んでいた。
    「……それだけ、か?」
    「?」
     ギルガメッシュから発せられた問い掛けに、青年はきょとんと首を傾ける。一瞬わざとだろうかと思ったが、ギルガメッシュから見える彼の瞳には悪意も何も見当たらなかった。
     本当に、分からないとでもいうのだろうか。あのように触れておいて、本当にただそれだけだというのか。あんな温度で、手つきで。この肌に触れたくせに。
    「〜〜〜〜っ!」
     怒りとも羞恥ともつかない感情が湧き起こり、カッと顔に熱がのぼる。
     仮にもだ。仮にも、褥を共にしたことのある相手に触れておいてこの仕打ち。あのように執拗に撫でられては、身体も勘違いをしようというものだ。
    「……王様?」
     こちらの気も知らず、青年は心配げに覗き込んでくる。他人事のようなその振る舞いにひどく腹が立った。
    「このっ、唐変木!朴念仁!甲斐性なし……!」
    「えっ」
     とても至高の賢王の口から出たとは思えない罵倒の羅列に、藤丸は一瞬呆気に取られたようにぽかんとした表情を浮かべた。そしてそれはすぐさま困惑と焦りに取って代わる。
    「え、あのっ……、お、俺、なんか余計なことしました?」
    「逆だ、馬鹿者!」
     何もせぬのが問題なのだ。喉まで出かかった言葉をすんでの所で呑み下す。この身を乞われ与えてやるならばまだしも、自ら乞うなど、流石に矜持が許さなかった。
    「ふん。もう良いわ、興が削がれた。とっとと去ね 」
    「……えぇ」
     しっしっ、と犬を追い払うように手首を振れば、青年は情けない声を上げた。
     ギルガメッシュは構うことなくころりと寝返りを打つと、藤丸に背を向けて目を閉じる。取り付く島もないその様子に、さしもの図太さを持つ青年も今は無駄だと悟ったのだろう。彼はしばらく物言いたげにしていたが、やがて諦めたように苦笑を浮かべた。
     ここ、俺の部屋なんだけどなぁ、とおどけたような口調で呟いて、藤丸はおもむろに踵を返す。
    「そうしたら、また夕方くらいに来ますね」
     足音と共に青年の気配が遠ざかっていくのを感じながら、ギルガメッシュはそろりと瞼を押し上げた。
     シュン、と扉の機械的な開閉音がして、室内に静寂が落ちる。ひとり残されたマスタールームで、ギルガメッシュはそっと溜息を吐いた。
     ──鈍い鈍いとは思っていたが、これほどとは。
    「……全く、本当に出て行くやつがあるか」
     ギルガメッシュは不服げにぼやくと、枕元に転がしたままだったタブレット端末を掴み、黄金の波紋の中へと放り込んだ。そして一度だけ青年が出て行った扉の方へちらりと視線を向けると、身の内に燻りかけた火照りを誤魔化すように掛布を頭まで引き被った。
     こういう時は、不貞寝をするに限るのだ。
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