「口説かれてる気がするんだ」
「うん、俺もそう思う」
「そうだよな!?」
「うわ、桐島のそんな大声初めてかも」
「時任、僕はどうすればいいんだ……?」
「普通に口説かれればいいんじゃないの?」
桐島も嫌じゃないんでしょ? 相談があると個室居酒屋に呼び出された時任は楽しそうだ。桐島は知らなかったが、もしかして恋愛話が好きなんだろうか。
ここしばらく悩んでいた桐島はもう限界だった。歓迎会で一目惚れを自覚してしばらく経ったが、最近須永にそういう意味で距離を詰められている気がする。
最初の頃は気づかれないように後ろ姿を見つめるだけで満足しようと思った。今までもそうしてきたし、そうできると思っていた。ただ、須永は遠くで見ているだけのはずの桐島にあっさりと気づいた。こちらを振り向いて、笑顔で近寄ってきて、毎日話しかけてくる。
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