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    いりこ

    読みたいものがうまく見つけられない…!ので書きはじめました
    ぼんやりと創作BLを書いています

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    いりこ

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    いい友達が出てくるタイプのBLが…好き!(1つ前の続きです)

    別サイトに投稿してみています

    #小説
    novel
    #創作BL
    creationOfBl

    「口説かれてる気がするんだ」
    「うん、俺もそう思う」
    「そうだよな!?」
    「うわ、桐島のそんな大声初めてかも」
    「時任、僕はどうすればいいんだ……?」
    「普通に口説かれればいいんじゃないの?」
     
     桐島も嫌じゃないんでしょ? 相談があると個室居酒屋に呼び出された時任は楽しそうだ。桐島は知らなかったが、もしかして恋愛話が好きなんだろうか。
     ここしばらく悩んでいた桐島はもう限界だった。歓迎会で一目惚れを自覚してしばらく経ったが、最近須永にそういう意味で距離を詰められている気がする。
     最初の頃は気づかれないように後ろ姿を見つめるだけで満足しようと思った。今までもそうしてきたし、そうできると思っていた。ただ、須永は遠くで見ているだけのはずの桐島にあっさりと気づいた。こちらを振り向いて、笑顔で近寄ってきて、毎日話しかけてくる。
     桐島が年下だし敬語じゃなくていいですよというと嬉しそうにするし、桐島も敬語じゃなくていいよと言ってきてやんわり断ると悲しそうにする。気軽に食事に誘ってくるし、まだ話したいから家で飲もうと言ってくる。桐島も嫌ではないのでなんだか断れない。数ヶ月経った今では「須永は桐島にとても懐いている」ことは社内に知れ渡っていた。
     
    「でも、恋愛的に好かれてるのかいまいち自信が持てない」
    「好きとかは言われてないんだ?」
    「うん、一緒にいて楽しいとかそういうのは言われるんだけど、それってそういう意味だと思うか?」 
    「一般的には口説き文句に入ると思うけど……須永さんは友達にも素で言いそうではあるかな」 
    「前の職場にいた頃は彼女もいたみたいだし、もし勘違いだったら立ち直れない……」
     
     桐島は飲み干したグラスの横に突っ伏してこんなの初めてだ、と弱々しく呟いた。特別扱いはされていると思う。それがどういう感情から来ているのかわからない。知りたいが、確かめるのは怖い。見ているだけでいいはずだったのに、与えられるとどんどん欲しくなってくる。自分にもこんな欲望があったのだと、須永に気付かされているような気分だった。
     
    「須永さんなら大丈夫じゃない?」
    「僕が大丈夫じゃない……」
    「それは……そうだね、ごめん。無責任なこと言った」
    「……いや、わかってるんだ。僕の覚悟の問題だ」
     
     あの人なら感情をぶつけても、それが自分と違っても避けたり嫌ったりしてこないだろうと思った。元に戻れないのはきっと桐島の方だった。そうなるのが嫌で、結論を出すのを怖がっているだけだ。両思いになりたい、失恋したくない、期待と違ってがっかりしたくないとわがままを言っているだけ。桐島はグラスをまた飲み干した。
     
    「僕は恋愛の経験もあんまりないし、下手くそで、もうだめだ……」
    「うんうん、桐島一回水飲もうか」
    「ん、ありがとう……時任つきあわせてごめんな……すき……」 
    「うーん……それを須永さんに言えればなあ」
    「それは僕もそう思う……」
     
     時任は真剣な顔で少し考えているそぶりをして、ある提案をしてきた。今正直な気持ちを話して、それを時任がスマホで撮って須永に送信してみる、というやつだ。ドラマとかで見たことあるな……と桐島はぼんやり考えた。そういうのは普通は桐島に言わずにやるんじゃないか? とも思ったが、時任はあくまで桐島の意思でやることに意味があると思っているんだろう。いいやつだな、と素直に思う。
     本人は目の前にいないし、時任にさらけ出した今なら酒の勢いもあって言えそうな気もする。
     
    「やってみようかな」
    「うん、とりあえずやってみてから送信するか決めよう」
    「うん……」
     
     桐島はおぼつかない口調で歓迎会のときからずっと好きで、多分一目惚れだということ、今まで片思いの経験しかないのでどうなりたいとかは具体的にはまだないが、好きだと伝えたくなってしまったこと、もしそういうつもりでなかったら、嫌でなければ友達でいてほしいことをぽつぽつと話した。
     
    「なんだか自分の気持ちばかり押し付けてないか? 大丈夫かな……」
    「今すぐ答えがないからそう思うだけで、須永さんははいでもいいえでもちゃんと答えが返せる人なんじゃない?」
    「うん……そう、かな」
     
     それに客観的に見ると桐島は押されてる方だと思うよ、と時任は少し茶化すように笑った。……うん。それはその通りではあるな。一通り言いたいことを話して水を飲んだら少しすっきりして、桐島は開き直ったような気持ちになった。振られたらそれなりにしっかり凹むとは思うが、それはまあ、仕方ないことなんだろう。
     
    「ごめん、時任。やっぱり今度ふたりで会ったときに自分で言うことにする」
    「いや、桐島が後悔しないようにやればいいよ。今度会うの?」
    「今週末に家で映画でも見ながら飲まないかって言われてる……」
    「……桐島の不安はよく分かったんだけど、やっぱり口説かれてると思うな、俺」
    「そうだよな? やっぱりそう思うよな?」 
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