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    いりこ

    読みたいものがうまく見つけられない…!ので書きはじめました
    ぼんやりと創作BLを書いています

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    いりこ

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    つづき(前日譚)なれそめ的な話です
    書きたい順に書いてるので時系列がぐちゃぐちゃ…

    #小説
    novel
    #創作BL
    creationOfBl

     昔から、同性に恋をしてきた。
     はっきりと自覚したのは中学生の頃だ。仲の良かった部活の先輩が彼女が出来たと言っているのを聞いて、桐島はそこではじめて自分の好意の種類に気がついた。はじめての恋で、はじめての失恋だった。
     桐島は自分の性的志向について悩んだことはあまりない。交友関係が狭い自覚はあるが、友人や家族には恵まれているんだろうなと思う。恋が実ったことはないが、これは性的志向ではなくて桐島自身の問題だ。
     両思いになれたら、を想像することはあったが、それを現実にしようとは思わなかった。小説やドラマや周囲の「恋人」を見ていると、なんとなく自分には向いていなさそうな気がした。
     だから桐島にとって恋は、一方的に遠くから眺めるだけのものだった。それはそれで十分に幸せだったと思う。少なくとも、当時の桐島はそう信じていた。
     
     中途入社で入ってきた彼は須永春仁という名前だった。歓迎会の挨拶のとき、元々社長と知り合いでこの業界に前から興味があったので久々に会ったのがきっかけで思い切って転職したのだとにこやかに話していた。
     webや書籍などのデザインをやっている小さな会社で、あまり新規人員を募集していないので中途入社はだいたい誰かの知り合いというパターンが多い。桐島は新卒だが、入社した当時から同期はひとりだけだった。
     
     須永こ第一印象はハキハキ喋っていて表情が豊かで、あと笑うとちょっとかわいいな、だった。桐島より少し年上だが、外見も相まってなんとなく人懐っこい大型犬を連想させる。
      人見知りの桐島とはあまりにタイプが違いすぎて、共通する話題など1つもないような気さえした。この年になって人見知りをやめられるとは思わないが、初対面の相手に自分から積極的に話せるのは少し羨ましい。
     歓迎会の隅でぼんやり眺めていると、須永とふと目があった。視線を外さないままにこっと微笑んだかと思うと、そのまま近づいてくるので桐島は慌てて会釈をした。
     
    「はじめまして、桐島さん……でしたか? すみません、まだお名前が曖昧で」
    「はい、桐島です……これからよろしくお願いします」
    「こちらこそ! 不慣れでご迷惑をかけるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
     
     にこにこと挨拶をすると、そのまま隣の同期にも話しかけている。どうやら皆にやっているようだった。……桐島と目があったから来たわけではなかったのかもしれない。なんだか寂しく感じて、桐島は自分の心の動きに動揺した。好きになってしまった、のか? 飲み会で目があって微笑みかけられたくらいで? こんなのは初めてだ。
     それほど飲んでいないはずだが、酔っていて感情的になっているのかもしれない。あるいは、これが一目惚れというやつなのだろうか。どちらにしても、桐島にとっては未知の体験だった。
     
    「あの……」
    「! す、すみません、少し酔っちゃったみたいでぼんやりしてました……」
    「いえ、こちらこそすみません! お水飲みますか? ……それで、あの、もしよかったら酔いさましに少しお話しませんか?」
    「え、はい……ありがとうございます……?」
     
     桐島が動揺している間に須永は一通り挨拶を終えたのか、なぜか桐島の前に戻ってきていた。てきぱきと水を渡されて、ありがたく受け取って一口飲む。須永が目の前であの人懐っこい笑顔でこちらを見てくるので、あまり頭が冷えた気はしなかった。
     それから、須永といくつか話をした。趣味の話とか、前職の話とか、休みの日なにしてるかとか、そういうとりとめのない話だ。好きな小説の話で意外にも趣味が合うことがわかって思いがけず盛り上がったところで、須永は社長のいる方へ呼ばれて行ってしまった。……須永の方も名残惜しそうにしていたのは今度は気のせいではないと思う。
     桐島の人見知りを発揮する間もなくどんどん話しかけてくるので、初対面の人とは思えないくらい話し込んでしまったが、不思議と不快ではなかった。コミュ力の高い人というのはこういう人のことを言うんだろうな、と桐島は感動した。
     
    「盛り上がってたね〜」
    「! びっくりした」
    「桐島が初めての人とあんなに話すの珍しくて思わず横で聞いちゃった、ごめん」
    「いや、別に大丈夫だけど……確かにすごかったな。コミュ強っていうのはああいうのを言うんだろうな」
    「須永さんはいい人そうだし、桐島が楽しそうでよかったよ」
    「なんだそれは……」
     
     隣でずっと聞いていたらしい唯一の同期を軽く睨むと、なんだろうね? と時任は微笑んだ。なんの答えにもなっていないが、この顔をしている時任は大抵桐島の疑問に答える気がない。桐島も本気で答えてもらおうとは思っていないので、つまりは同期のいつものじゃれ合いだった。
     桐島は時任との会話で自分が落ち着くのを感じて、須永とのなんでもない会話で思ったより高揚していた自分にも気がついて、ため息をついた。飲み会で目があって……同じはずなのに違う。やはりそういうことなのか、と内心で頭を抱える桐島を見て、時任はいつもより少しおかしそうに笑った。
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