よるをわたる 夕飯をたらふく食べて、帰宅したのが午後八時。
風呂に入って、髪も乾かないうちにベッドに押し倒したのがおそらく午後九時前。
ズルズルと音を立ててカップ麺を啜ったのが午前一時頃。
ふわ、とあくびをして船を漕ぎ出したのが三十分前。
そして現在午前二時。
簓の膝の上でぐーぐー寝息を立てて眠る空却。テレビの光だけがぼんやりと暗い部屋に点っていた。
空却はタンクトップにパンツ姿で、膝を折り曲げて、丸まって寝息を立てている。それを見下ろしながら、床に放られた上着を手繰り寄せた簓は、ゆっくりとそれを空却に被せた。
テーブルの上に置かれた箱から煙草を一本取り出して咥える。
ジッポは……、と。
テーブルの上を一瞥するが、無い。ぐるりと記憶を辿るが、箱と一緒に置いていないのなら、おそらく事務所のデスクの上。
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