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    nekoginka_gno

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    落書きとかゲームのオリジナル主人公の設定とか。

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    水そうめんで出す予定の写真集のテキスト部分。レムナン視点の革命組ショートストーリー。文章推敲中

    #グノーシア
    gnosia

    THE SELECTED NEW AGE―――僕はずっと、囚われたままだった。
    暗く、狭い部屋でずっと。いつからか、なんてもう覚えていない。

    頭の中で嗤い声がリフレインする。
    「アハハッ!レムナンにピィーッタリの首輪、つけてあげる☆」
    ずっと、ずっと、【あの人】の愛玩動物として、管理首輪をつけられて。
    「アタシが大事に飼ってあげるんだから。さぁ、今日はどうやって遊ぼうかな」
    自分の意志で体を動かすこともままならないまま。
    「ねぇ、もっと逃げ回って見せてよ。もっともっと怖がる顔みせてよ、ねぇ?」
    体も心も嬲られ、踏みにじられて。僕が怯えて、痛みに顔を歪めるたびに【あの人】は喜悦の表情を浮かべていた。

    それでも、這う這うの体で逃げ出して、何年も何年も逃げ回って…やっと、自由を手にしたと思っても。
    「どこに逃げても無駄だって言ってるじゃない。アタシから逃げ切れるなんて、できるわけないのに」
    あの、あざ笑う声がどこからか響いてくる。逃げ出したときに力尽くで外したはずの首輪が、また僕の首にはまっていて。どんなにあがいても外れない。
    「どうして…。どうし、て…僕、は…逃げられたはずじゃ…」
    助けて、助けて、助けて、助けて、許して…
    苦痛とともに数えきれないほど何度も何度も吐き出した言葉が口を吐く。


    「…君。いつまでそンな下らない物に囚われているつもりだい?」
    ふいに声が響いた。
    空色に様々な色を集めたような鮮やかな姿。ふわふわと揺れる羽根帽子と灰緑色の髪の下から覗く碧い眼が、僕を冷ややかに見下しながら眼前に立っている。
    「これでも僕は君には期待しているンだ。それなのに、こンな【下らない事】にいつまで縛られているつもりなンだろうね?まったく。失望なンてさせないで欲しいンだけど?」
    「下らない、事…?…っあなたに…!あなたに、一体何が分かるって言うんだ!今まで…どんなに、僕が、苦しい思いをしてきたか…っ!!」
    聞き捨てならない言葉に、恐怖の底に押し込めていた怒りが牙を剥く。思わず荒げた言葉にも、眼前の姿は臆することなく皮肉げな笑みを浮かべた。
    「ああ、下らないね。過ぎた過去にいつまでも囚われるなンて、愚の骨頂さ。いいかい?そンなもの」
    そういって僕に見えるように広げて見せた手には、僕の首に嵌められていたはずの忌々しい首輪があった。
    思わず首元をまさぐり所在を確認する僕のしぐさを、その人は愉快気に見やると唇の端を吊り上げて。
    「壊して、踏みつけていくためにあるのさ」
    笑うような響きを持った声とともに傾けた手のひらから管理首輪が落ちる。それをなんの感慨も持たない眼で見やって。乾いた音を立てて床に落ちたそれをためらうことなく言葉通り踏みつけた。
    「あははっこれですっきりしただろう?君を縛る過去はもうない。下らない事に思い悩む必要もないってものさ!」
    高らかに笑う声があたりに響く。思いもよらない事に茫然とする僕の目の前に手が差し伸べられる。見上げれば、あふれる光を背にした鮮やかな姿が見下すような視線はそのままでいつの間にかすぐ目の前に立っていて。ただ見上げるだけの僕に向けて、一つ、大きなため息を吐いた。
    「…ほら、さっさと立ち上がってくれない?こンな所でグズグズしている暇なンて一分一秒もないンだからさ」
    呆れたような声音とともに、ひら、と差し出した手を揺らして催促する。僕が恐る恐る伸ばして掴んだその手は、固く握り返してきて僕を立ち上がらせた。
    「さぁ行くよ。君が成すべきことは山ほどあるンだ。覚悟しておくことだね」
    光に滲んだその表情は、軽口めいた言葉とともに柔らかく微笑んだような気がした。


    「………に……星系を通過……。……のタイミングで………」
    段々と覚醒する意識に伴って、端末を叩く音とどこかへと語りかける聞きなれた声が耳に届いてくる。迷いのない、自信に満ちた声。
    「…以上、これが最終の通達だよ。この機を逃すわけにはいかない。必ず、成功させるンだ。我々の自由と未来のために」
    どうやら僕は転寝をしていたらしい。まだ少しぼんやりとする意識のまま、その通信のやり取りを聞いていた。

    ルゥアンでのグノーシア騒ぎからもう、数年経った。【あの人】の元から逃げ出して、やっと逃げ延びたと思った先での災難。その時に一人で逃げまどっていた僕を引っ張って、唯一残っていた個人航宙船まで連れて行ってくれたのがラキオさんだった。
    行く当てのなかった僕はそのまま、彼と共にグリーゼ船団国家へと渡った。僕が【あの人】に見つかることを心配してくれたのだろう。あえて閉鎖的な自国なら見つかりにくいと踏んで避難先から同行させた被災者、という形で連れて行ってくれたのだ。
    …けれど、その場所は、うわさに聞いていた以上の階級国家で。自分より下の階級の人間は【人間】ではないとばかりの扱いを受け、同じ階級の人間でも少しでも水準より劣る様であれば容赦なく下の階級へと追いやられ、下の階級の人間はそんな国家の在り様に絶望し、いつ自分たちがただの道具として消費されるのだろうかと怯えていた。当然ながら外部からやってきた僕は、白質市民である彼の同行者という立場こそあったが、ラキオさん自身も【異端者】と白い眼で見られ、周囲からの風当たりは強かった。
    「こンな右に倣えしか知らないような凝り固まった国は一度壊すしかないだろう」
    革命を興そうと口にした彼は、元よりこの国の政治体制に辟易していたのだと言った。…もしかしたら、僕を【あの人】から逃がすためとはいえ、その時とはまた違った迫害を受ける国へ連れてきてしまった自分を責めているところもあったのかも知れない。
     劣っていると見做されたものはどんなにあがいても報われず、物と同じように使い捨てられる。そんな境遇で足掻き、自由を求める人たちを僕たちは集め、その硬直した支配体制を壊し作り変えようとずっとその機会を狙ってきて…そして、その決起の日を今日迎えたのだ。

    「居眠りなンて随分といいご身分じゃないか、レムナン?こっちは打ち合わせやら報告やらで大わらわだっていうのにさ」
    眼にも鮮やかないで立ちの姿が、こちらを見やって苦言を呈してくる。じとり、とねめつけてくる視線に思わず姿勢を正し、苦笑いで返すと、僕を見やるその人はやれやれ、と肩をすくめて大きく息を吐いた。
    「……ま、いいけど。君には僕と一緒に革命の旗振り役を担ってもらうンだ。僕は戦略と指揮を、君には現地での指令役として。そのための体力の温存なら文句は言わないさ。ちゃぁンと動いてくれればの話だけどね」
    「あはは…すいません、ラキオさん…。でも、ちゃんと期待に添えるような働きはしてみせます…。そのためにずっと積み重ねて…やっと、この日を迎えたんですから。それに、もう…踏みにじられて…逃げ回るのはこりごり、ですから。僕は…ここで新しい未来を勝ち取るんです。【あの人】にも屈しないように」
    「ははっ。随分とやる気だね。ま、そうでないと困るけど。…これから僕たちは全てを壊して、作り変えていくンだ。反旗を高らかに翻して、新しいステージへと…ってね」
    僕の言葉に笑みを浮かべたラキオさんは頭上へと右手を掲げ、旗が翻るさまを模してひらひらと振る。手首から連なる飾り布がふわりと舞い、正しくこれからの勝利を示す旗のようだった。

    僕らしくもなくおどけてしまった、と淡く苦笑いを浮かべた姿は、その碧い眼を一度閉じ。再び目を開くといつもの余裕ありげな笑みに揺るがない意思を乗せ、革命軍の指揮官としての決意を以て、ためらいも惑いもない強い視線と共に僕へ向かって手を差し出してくる。
    「…さァ、無駄話はここまでだよ。そろそろ皆の集まっている現地へ向かおう。今日が新しい記念日になるンだから。僕にとっても、君にとっても、そしてこの国にとっても。…期待しているよ、レムナン」
    さっき転寝の中で見た姿が差し出してきた手と、全く同じその手を握り返すと、彼は唇の端に浮かべた笑みとともに僕を引っ張り、ベンチから立ち上がらせた。
    僕が身支度を整えたことを確認して出口へと歩き出したその背に、僕は願いと確信を込めた言葉を向ける。
    「僕は、信じています…!ラキオさんとなら絶対、成し遂げられる…って。あなたは、僕たちの光、なんですから」
    だから。
    貴方の陰となってしまうその背中は僕が全てを投げうってでも。
    必ず守り通してみせる。

    開いた扉から覗いた空はまぶしくて。高く望んだその空の先に見えた、高らかに誇らしげに鳴きながら切り裂くかのように力強く飛ぶ紺碧色の鳥の姿はまるで未来を切り開くために先陣を切る【異端者】と呼ばれた彼のようで。
    光の中その先へと進む姿へと僕は固く固く誓った。
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