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    猫と忘羨魏無羨は軟体動物か何かなのだろうか。
    藍忘機が自ずから食事を作って食べさせているので、最近は申し訳程度に肉がつき、両手で掴むとあまりの細さにぞっとしていた腰もまだ落ち着いて見られる細さになった。
    莫玄羽の置かれていた環境のせいか骨と皮しかないような肩や背中もほんの少しだけ柔らかくなったし、脇腹の肉をほんの少し掴めたときは嬉しさのあまり、天天の最中何度もプニプニとつついてしまい、魏無羨に怒られた。
    天天、そう天天だ。魏無羨があまりにも柔軟性に優れているため、理性を失った藍忘機が無理な体勢を強いても難なく受け入れてしまう。
    翌日筋肉痛になることもなく、痛みを訴えるのは腰と尻だけ。
    極めつけは、事後に風呂に入れたとき。魏無羨の身体を風呂桶に横たわらせ、あああれを忘れたとほんの少しだけ目を離したとき。
    藍忘機がその場に戻ってきたときには、魏無羨の身体は液体かなにかかと疑うほどふにゃふにゃになって、頭までお湯に沈んでいたのだ。
    藍忘機が慌てて引き上げると、「蓮花塢ではもっと長く潜っていられたしこの程度なんともない」とけらけらと笑う始末。
    「君のそれは潜るではなく沈むだ」と言っても「そうか?大して変わらないよ」と何処吹く風。
    魏無羨は軟体動物か何かなんだろうか。
    藍忘機もそれなりの柔軟性を持っているが、魏無羨のそれは異常である。


    ある日、二人でぶらりと町を歩いていると、魏無羨があっと声を上げ路地裏に駆け込んで行った。
    脊椎反射で藍忘機も後を追う。
    しゃがみこんで何事かにゃあにゃあ言っていた魏無羨はパッと藍忘機の方を振り返ると、満面の笑みで手の中のものを見せてきた。上半身を掴まれ、下半身が異様に伸びた猫だった。
    「見ろよ藍湛!液体みたい。猫って面白いよなあ」
    藍忘機は生まれてこの方猫を持ち上げたことも持ち上げられた姿も見たことがなかったため、ぎょっとした顔で猫を見つめた。
    猫は不細工な顔で「ぁん」と鳴く。藍忘機が恐る恐る視線を下ろしていくと、かなり下の方まで腹が伸び、足も伸びきってぶらんと揺れていた。小さなふぐりだけがちょこんと乗っている。
    藍忘機は暫く固まったあと、はっと息を飲み、魏無羨の脇に手を入れて持ち上げた。
    だらんと下半身を伸ばす猫を持ち上げている魏無羨を、まるで猫と同じように持ち上げる藍忘機。とある路地裏での異様な光景。
    魏無羨の身体は猫のように伸びきることもなく、ただぶらぶらと揺れている。
    「…………藍湛?」
    「君は、猫ではない」
    「当たり前だろ。何言ってんの」
    よかった、と安心する藍忘機に意味がわからないけど何か納得したのならよかった、とりあえず下ろしてくれないかなと考える魏無羨だった。
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    小月 輝

    DONEガーデンバース忘羨のタグで花の日のお祭りに参加した時のお話
    花を編む起きた時に感じるのは満たされた幸福感だった。
    ぬるま湯に浸るような心地よい寝床で目を覚まして、一番に目に入るのが美しい夫の寝顔である事にも慣れてしまう程の時間が過ぎた。ゆっくりと藍忘機に体重をかけないように起き上がり、くわりと大きく欠伸をする。半蔀から差し込む光はまだぼやけていて、明朝というにも早い時間に魏無羨が毎日起きているだなんて、この世でただ一人を除いて誰も信じないだろう。藍家の家規で定められている卯の刻起床よりも早い、まだ草木も鳥も寝静まっている時間だ。もちろん時間に正確な魏無羨の美人な夫もまだ寝ている。
    毎晩あんなに激しく魏無羨を苛んでいるとは思えない静謐な寝顔に、思わず頬が緩むのをおっといけないと押さえて、だらしなく寝崩した衣を更に肌蹴る。魏無羨は美しい夫の顔を何刻でも見ていられたが、今はそれよりもすべき事があるのだ。腕や胸、内腿まで、体のあちこちに咲いている花を摘んでいく。紅梅、蝋梅、山茶花、寒椿に芍薬、色とりどりに咲き乱れる花々は魏無羨が花生みである証であると同時に、昨晩藍忘機にたっぷりと水やりをされた証でもある。栄養過多になると、魏無羨の体は花を咲かせる事で消費するのだ。だから、毎朝、一つずつ丁寧に摘んでいく。
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