半年も傍にいたのに、すっかり騙されていた。こんな力付くで……いつもの、紳士な彼はどこへ行ったのか。
「何で嫌がんの。孝支くん、こういうオレが好きなんやろ?」
夏でも体育館の床は冷やりと背中に染みる。
侑の顔が、ぐぐぐと間近に迫り、両腕は上から押さえ込まれ、体を捩って逃げようにも身動きが取れない。
せめてもの抵抗で、首筋を仰け反らせて真正面からの視線を避け、そうでもしないと彼のその雰囲気に引きずり込まれてしまう。
騙されていた。
はい、どうぞと、いつも優しくトスを上げられていたから、侑の獣さながらのあのプレースタイルさえ忘れていた。
そう、騙されていたのではなく、忘れていたんだ。彼は、最初からそうだったじゃないか。
狙った獲物は必ず仕留める。
実際に狙われた田中や西谷、そこに自分を置き換えて、足元からゾゾゾと羽虫が体を駆け上るような悍け。
「せやろ。待ってたよな? 待たしてゴメンなぁ」
「……あつむ…!」
そうだ、自分は自ら彼の標的となることを望んだのだ。