泥と星一点の光もない、暗闇の中にオレは居た。
ここはどこなのかと思い周囲を探ろうとしたが、ずぶずぶと泥のような感覚に足を取られて、歩くこともままならない。あたりは血と臓物の臭気に満ちており、抜け出そうともがけばもがくほど体が沈んでゆく。
正体の知れぬ、無明の中。
ふと、足に触れるものがあった。
硬くて軽い感触が体を這いのぼり、腰や腕にまとわりついていく。
がしゃがしゃと擦れあうそれは、骨の音だった。
「オォ……オオォォ……」
「ハドラー……さまぁ……」
そんな声が囁くなか、ハァ、と耳元に息が吐きかけられる。生気の感じられないそれは、浴びるだけで背中が泡立ち、肝が冷えるような思いがした。
「……失せろっ!」
振り払うと、骨の砕ける乾いた音が周囲に響いた。
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