まつとしきかば 処暑を過ぎたにもかかわらず、未だ暑熱の去らないある日。
畑仕事から戻って来た太鼓鐘と物吉から、野菜の入った籠を受け取った光忠は、代わりに冷やしたタオルを渡してやった。
喜んでタオルにうずめた顔を再びあげた瞬間、鶴丸が吹き出す。
「こりゃ驚いた!
白い貞宗達が、こんがり黒くなっているぞ!」
指をさされた二人は、互いに顔を見合わせて、笑い出した。
「ほんとだ!
太鼓鐘、こんがりしちゃってますよ!」
「物吉だって!
これじゃあ黒王子だぜ!」
衣装も黒くするか!と、はしゃぐ太鼓鐘に、光忠も笑い出す。
「じゃあ二人とも、長船派に入る?」
言った途端、騒ぎを聞きつけたか、勝手口の扉が音を立てて開いた。
「日焼け止め、ちゃんと塗らなきゃだめだろう、お前達!
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