「…………なんだそれ」
「高校ん時の制服」
「とうとう自分の年齢も分からないくらい馬鹿になったか」
「ちげーよ!」
おもむろに談話室へ現れた紘が身に纏っていたのは、紛れもなく学生服だった。卒業して数年は経っているはずのそれに、何故今更袖を通しているのか。そもそも寮に持ってきていたのか。よく分からないことだらけだし、さすがにその顔で高校生と言うにはもう無理があるんじゃないのか、と眉を顰める。
そんな善の顔を見て、紘はため息をつきながら経緯を話し始めた。
「夏組全員制服で出掛けるんだよ……」
「また頭悪そうなことを」
「俺提案じゃねえし、むしろ最後まで抵抗したけど」
「……まあ、無理だろうな」
紘が最年長の夏組は、全ての組の中で平均年齢がぶっちぎりで一番下だ。しかし残念ながら、そんな彼らの中で紘の言葉が通じることは少ないのだ。現役の学生たちに混じって明らかに見た目だけは大人が制服を着ている図は、さすがにほんの少しだけ同情してしまう。
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