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    itsu_105

    ほぼ五乙しかないポイピクです。
    ドロライお題、ガチャお題、SSなど、スローペースですが小説をポイポイしてます。

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    POIPOI 5

    itsu_105

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    単に、子乙に悟お兄ちゃんと言わせたかっただけだったんだ……😅

    子乙IF所謂、限界集落と呼ばれる土地だった。

    たまたま“窓“の一人の実家がこの隣の集落で、数年ぶりの里帰りをした時にこの村の噂を耳にしてそれとなく情報を得ようとしたのだ。
    こういう場所では排他的な村が多いものだが、そこは特にそれが強かった。
    隣の集落とは言っても、他所者は他所者。何を聞いても答えてくれるわけもなし。

    しかし、確かに感じたのだ。

    その村の奥の家からの、とんでもない呪力をーーーーー





    後日、窓の報告を受けた高専から補助監督が派遣された。まだ若手とはいえ有能と定評のある伊地知が向けられていたが、なにぶんガードが固い。報告をくれた窓と共に情報収集に尽力したが大したものは得られなかった。こうなると、事態の平定に駆り出されるのは上位の術師の場合が多い。どんな時でも対処できるようにだ。


    「・・・まさか、五条さんが出てくるとは」
    「なに?僕じゃ不服なの?伊地知」
    「そうじゃありませんよ。てっきり1級の方がくるかと・・・」


    みんな出はからってて、お前が行ってこいと学長である夜蛾に言われたのだそうだ。まぁ色々癖のある男ではあるが現代最強の術師だ。どんな状況になっても確実に信頼できるのは間違いないと、米神を押さえながらも伊地知は彼に説明を始めた。



    問題の村は住民の数も少ない小さな所だ。散歩程度で村を一周できてしまう。その村の一番奥に建っている、この集落の中では一番大きな家・・・おそらく村長的な者の自宅と思われる。そこから発せられる異常な呪力の気配。
    非術師であれば“気味が悪い“と感じる程度だが、そもそも非術師にそう感じさせてしまうこと自体異常なのだ。
    視える者からすれば、それは禍々しく強い呪いの気配。もしかしなくとも特級案件だろう。たまたまだろうが、此処に来たのが五条で本当に良かったと内心、伊地知は思った。


    「・・・へぇ」


    その家の方向を目視して、五条は面白そうに口角を上げる。


    「申し訳ないのですが、此処の村はあまりにも排他的で、中の情報はほとんど得られなかったのです」
    「だろうね。いいよ、このまま踏み込むから後始末は任せる」


    なるべく穏便にいくよーと、右手をヒラヒラさせながら五条は集落へ入っていった。


    「帳はどうしますか?」
    「いいよ、このままで。どうせ村の連中を全員外に出すとかできないでしょ?」


    逃げてきたのだけ保護してやってくれと伊地知に告げて、五条は村民の忌諱な視線もまるで気にせず進んでいった。




    礼儀など何処へやら。
    中にいた住人の罵声も気にせずに、土足で件の家に上がり込む。そのまま居間を突っ切って庭先に面した廊下の木戸を開け放つと、農村の家屋独特の無駄に広い庭に出た。その庭の一番隅に、蔵がひとつ建っている。

    ますます濃くなる呪いの気配はその蔵から醸し出されていた。


    蔵の戸には太い鎖と大きな南京錠。用心の仕方が普通じゃない、己の呪力を込め、そのまま指先で鎖と共に南京錠を破壊した。その五条の様子に遠巻きに見ていた家主たちは驚愕したが、それ以上に中にあるものを見られたくないらしく必死に制止をしたが彼が聞く耳など持つわけがない。
    乱暴に錠の外れた戸を蹴破り、明かりも差さない中へと踏み込んだ。

    暗く、湿気た蔵の中に一気に外の光が入り込む。

    そこそこ広い、本来は物などを収めておくためのそこは驚くほど何も無かった。あるのはその正面奥にある古く年期の入った木製の格子・・・所謂、座敷牢というやつだ。
    こういう因習に塗れていそうな村ではよくあったものだろうが、この現代にいまだに活用されているとは思いたくなかった。高専でも、そういう類の封印の幽閉場所こそあれどそれは表に出せない確固たる原因があってこそだ。
    こんな民間の中で使われるそれは、単なる排除と隔離に過ぎない。
    伝染病、精神疾患など昔はそれに科学的裏付けなど考えもせず、忌ものとしてこうやって蔵などに隔離して死を待っていた。よくある話だ。

    しかし今、五条の目の前の格子の向こうにいるのは、小さな子供だった。

    格子には無数の札が貼り付けてある。少し見ただけでもなんの効果も無いただの紙切れだと、視る者がみればすぐにわかる。

    五条がそこに近づけば、十歳くらいだろうか・・・それにしては痩せて華奢な男児が蹲って座っていた。

    呪力の根源はその子供だった、いや正確に言えばその子供に憑いているものだ。


    「・・・こんにちは。君の名前は?」


    五条が子供に話しかければ、抱えてた膝に埋めていた顔をゆっくりあげてこちらを向いた。

    その絶望に、深く暗い眼をした子供だった。こんな所に閉じ込められていれば無理もない。まともに話せるかわからなかったが、よく観察してみれば思ったより子供の様子は荒れていなかった。
    服こそ薄汚れているが、ネグレクトのような栄養も摂れていない感じは見れなかった。


    「・・・おにいちゃん、だれ?」
    「僕は五条悟。君の名前は?言える?」
    「・・・ゆうた」
    「そっか、ゆうた君か。あのさ、君なんでこんなとこにいるのかな?」


    まぁ、大体理由はわかってはいるが、それにそんなこと蔵の入り口でビクビクと様子を伺っているクソな住民どもに腕ずくで吐かせればいいのだが、五条はこの子供に聞いてみたかった。


    「ぼくがいると、わるいことがおこるから。みんながこわがるから、ここにいなさいって・・・」
    「一人で寂しかったでしょ」
    「・・・でも、りかちゃんがいっしょだったから」


    “りかちゃん“

    それは恐らく、この子に憑いている呪霊だろう。
    五条が見てもまだこの呪霊の全容がわからない。ただ呪いとして憑いているにしては、この子に危害が加えられていない。むしろ護っているようだった。


    「ねぇ、ゆうたは此処にこのまま居たい?」

    分かりきったことを聞いてみる。


    「・・・やだ・・・ここ、でたい」
    「だよね!よし、わかった。お兄さんが此処から出してあげるよ」
    「・・・ほんと?」
    「ほんとほんと!」
    「・・・りかちゃんも?」
    「うん。“りかちゃん“もだよ。僕と一緒においで。それから、ゆうたのこれからを考えよう」


    暗く沈んだ子供の眼に、希望の光が差し込んだ。


    ちょっと離れてな。そう、子供に促し牢の奥まで下がらせる。

    (こんな胸糞悪いもんは木っ端微塵にしてやりたいけど、あの子に影響出ないように出力抑えてっと)

    こういう時、武具の一つもあればピンポイントで破壊できて楽だったのにと思いながら、戸の南京錠を破壊した時より少し強くーーーー



    古く、脆くなった木製の格子は軽く砕け散った。




    破片を踏みつけ蹴飛ばしながら、五条は子供に近づいていく。彼に憑いている呪霊の反応が気になったが、敵意のない相手には発動しない様子だった。

    大丈夫?と、手を差し伸べれば、小さな手がそれを掴もうとゆっくり伸ばされた。そのまま子供を抱き上げると、とても軽く、しかし温かかった。



    ーーー間に合ってよかった、心底そう思った。





    「・・・ねぇ、この子、此処に閉じ込めてどんくらい?」
    「・・・そ、それは呪われた子だ!それがいると村に不幸が起こる・・・人死にも出た。それをどうにかしようとすると必ず怪我人が出る・・・殺すことさえできんかった・・・」
    「・・・へぇ、この子、殺すつもりだったんだ」

    五条の怒りの気配に、村人たちは気圧された。

    「この現代にこんな時代錯誤してるところがあったなんてねぇ・・・まぁ、無くはないか。でも、目の当たりにすると胸糞悪いわー、というわけでこの子は引き取ってくわ。後の始末は外にいる眼鏡がやるから、包み隠さず吐くよーに」


    五条は腕の中にいる子供に、ちょっと目をつぶって耳ふさいでな、と声をかける。あの場所から出してくれた五条を信用したのか、子供は言う通りにした。
    その素直さに、腹の中に燻ってた怒りが少しだけ緩和する。

    残っていたどす黒い感情は全て、子供が閉じ込められていた蔵にぶつけて容赦無く破壊した。





    ◇◇◇



    山間部の過疎の村とはいえ、五条の後始末はそれなりに大変だった。

    五条は、子供を連れて帰るための別の車を手配させ、その場に伊地知を残し、村の後始末、この子供の身辺調査、村に起きた出来事を全て調べさせた。
    有能な補助監督とはいえなかなか骨が折れることだったろうと、他の同僚たちは彼に同情した。





    「憂太ー!具合どう?」
    「あ!悟お兄ちゃん!」


    高専の保健室に五条が顔を出せば、すっかり顔色の良くなった子供・・・乙骨憂太が、保健医の家入と共にいた。どうやら勉強を見てもらっている最中だったようだ。


    「・・・“悟お兄ちゃん“とか、胡散臭・・・」
    「だって硝子、五条さんとか他人行儀っぽくない?」
    「他人だろが」
    「嫌だなぁ、遠縁のお兄さんだよ、僕」


    にんまりする五条を、家入は心底鬱陶しそうに睨んだ。



    ーーーーー乙骨憂太に関する報告


    乙骨憂太は、限界集落であるかの村での唯一の子供。
    かつては彼の幼馴染である祈本里香という少女がいたが、山中での作業中に父親と事故死。その場に憂太もいたが子供に何ができるわけでもなく、駆けつけた周りにいた他の大人に保護された。
    もともと憂太の両親はこの村への移住者で、二年前に順に病死した。天涯孤独になった憂太は村長の家に引き取られた。
    限界集落のこの村にとって子供は貴重だ。当時は憂太も里香も、それは大事にされていたのだが、里香の死後から村におかしなことが起こり始めた。

    子供は大事にされるものではあるが、どこの世界にも捻くれた者はいるものだ。

    初めに、憂太を理不尽な理由で叱りつけ泣かせた男が、怪我をした。

    ただの偶然だろうと、その場は誰も気に留めなかったが、次に憂太に牙を剥いた住民の飼い犬が首を捩じ切られて死んだ。

    その異常な死骸を見て、ただでさえ排他的で迷信を信じやすい村人の中に、憂太を不気味がる者が出始めたのだ。

    恐怖は瞬く間に伝染する。

    憂太に危害を加えようとすると現れる“何か“

    大人たちは怯え、子供を閉じ込めた。あわよくばそのまま死んでくれればと、初めは食事も与えなかったが、そのたびに物が壊れ、怪我を負うものもいた。憂太を傷つけてはならないーーー
    正体の知れぬそれに怯えながらも、彼に最低限の生活はさせた。だが、生きる為に最低限というだけで後は件の蔵に閉じ込めたまま誰も近寄ろうとはしなかった。

    憂太が監禁されていたのは五条たちが来るまでの3週間。

    思ったよりも消耗が少なかったのは幸いだったと、憂太の健康管理を任せている家入は言っていた。しかしその表情は虫ケラを見るような様だった。



    高専に連れてきてから、まずは憂太の健康状態を確認。本来なら病院に連れて行くところなのだが、呪霊の存在を考慮して家入に預けた。
    それから、呪霊の解析。
    憂太が言うには、それは“りかちゃん“・・・祈本里香であるという。

    『里香ちゃんはずっとそばにいてくれたんだよ。あの中に入れられてから誰も僕と話をしてくれなくて、淋しくて、でも里香ちゃんが答えてくれたし話してくれた。だから大丈夫だったんだ』

    そう、憂太は言った。


    学長である夜蛾と共に五条は、憂太を介しながら“里香“について調査していく。


    “里香“は亡くなった祈本里香であることに間違いない。
    “里香“は生前、ごく普通の女児で潜在的な術者の可能性はないらしい。
    “里香“は『結婚』の約束を憂太としたという。
    “里香“は憂太の目の前で死んだ。

    “憂太“は里香の死を、拒んだ。



    「・・・これは、原因は“里香“ではないな」
    「はい、彼女を呪霊として此処に留めたのは間違いなく憂太本人だと思います」


    当人は全くの無意識で、自分の力に気づいてはいないけれど。


    子供同士の微笑ましい将来の約束。村でたった二人きりの子供、ましてやその年頃では女児の方が精神的に成長が早い。どこから持ち出してきたのか、指輪まで用意して婚約ごっこをしたのは里香からだったらしい。

    だが、里香の不慮の死が全てを変えた。


    「・・・で、これからあの子をどうするんだ悟」
    「どうもこうも、面倒見ますよ此処で」
    「呪霊の監視と対処はまぁ、わかる。だが、あの子を育てていくのにどうするんだと聞いているんだ!」

    現実的に夜蛾が言いたいことも理解できる。

    義務教育、生活、家庭・・・そして保護者。
    子供は社会的に一人じゃ生きられない。

    「学長、憂太の家系調査結果、伊地知から聞いたでしょ?」
    「・・・ああ、まさか道真の血筋とはな。驚いた」

    まさか、あの過疎の村で五条と同系の子孫に出会えるとは、五条としては偶然とは思えない縁を感じてしまう。

    「現実策としては、五条家でどこかの家に養子に入れればいいんじゃないのか?」
    「あ、無理無理。学長だってわかるでしょ、御三家の気持ち悪いくらいの血統主義。憂太は道真の血を引いていても生まれは非術者の突然変異、先祖返りだ。おまけに自分でやったこととはいえ呪いを背負っている。まず拒絶されちゃうね」
    「・・・なら、どうする」
    「だから、僕が見ますって」
    「高専の教師、特級術者として暇の方が少ないお前が、どの面さげて子育てができると言うんだ!」
    「まぁ、その辺は高専内のみんなに協力してもらうとして。学長、呪骸の面倒見てんだから子守も大丈夫でしょ!」
    「悟‼︎」

    学校は、近隣のに行かせればいい。義務教育が終わったら高専に入ればいいし、それから先の将来は本人に選ばせればいい。
    それまでには、あの呪霊の解呪もできるようになるだろう。

    「・・・あの呪霊、里香は、今でこそ大人しいが憂太の成長と呪力量によっては特級過呪怨霊に化けかねない」

    だが、憂太は里香の存在を認めて、里香とコンタクトが取れている。

    「憂太が正しく呪術と呪霊について学んで成長していけば、総監部に処分されることもなく解呪に至れる。万が一“里香“が暴走するようなことがあれば側にいる僕が抑え込めるしね・・・その為には、ここで肌で学ばせるのが一番いいと思いません?」
    「・・・責任は、」
    「もちろん僕が・・・」
    「いや、連帯責任だ。俺も持つ」
    「ひゅーっ!学長カッコイイ!」
    「やかましい!お前一人になんぞ任せられるか!」

    茶化す五条を、夜蛾が怒鳴りつける。

    「そうそう、知ってましたか?学長」
    「なんだ」
    「あの子・・・憂太、既に鬼籍にされてたって」
    「・・・・腐ってやがるな」


    人は弱い。

    弱いからこそ保身に走り、時には自分達の理解が追いつかない“異物“を排除しようとする。
    術師と非術師の間で葛藤し、離反した男がかつていた。


    「でも“里香“が憂太を護ってた。なんなんでしょうかね呪霊って。僕達にしてみれば祓う対象で、でも彼女は憂太を救ってた」
    「・・・呪霊は呪霊だろう。結果的にはあの子が自分で自分を護ったんだ。だが・・・」

    “里香“には自我がある。その自我は全て憂太を護るためだけに存在している。

    「魂を縛りつけた・・・いや、繋ぎ止めた、か。とんでもない子供だな」

    道真の先祖返りの成せる業か。


    「成長が楽しみでしょう?」
    「・・・お前が一番楽しみなんだろうが」



    孤独な“現代最強の術師“


    いつか、この男と共に立てる者たちが現れてくるのは今現在では不可能。
    可能性があるとすれば、それは今後先の話だろう。
    小さな芽を摘まず育てる、それができるのが高専の役目だと夜蛾は思う。


    「とりあえず、憂太と暮らす部屋でも探しておけ。戸籍の件はこっちでなんとかしておく」
    「・・・ありがとうございます」



    こうして、乙骨憂太は五条悟と高専に保護された。








    六年後ーーーーーー



    「あ、悟さ・・・じゃなかった、五条先生!」
    「いつもの通りでいいよー憂太。なんか他人行儀で淋しいじゃん!」
    「だって、高専に入ったら先生は先生だからでしょう?けじめはつけとかなきゃ」
    「家だってさぁ、近いんだからあそこから通えばいいのに。何も寮にまで入らなくったって」
    「・・・それが憂太の言うケジメだろうが。オマエより余程常識あるぞ。よくこんなに真っ直ぐに育ったな」


    いつの間にいたのか、そこには夜蛾の姿があった。

    「あ、夜蛾さ・・・じゃなかった、学長。おはようございます」
    「ああ、おはよう。入学おめでとう憂太。ようやく高専生だな」
    「はい。やっと呪術師として勉強できます!」
    「本当に真面目だな・・・コイツと六年間一緒に暮らしてて、よく影響も受けずに」
    「学長、反面教師ってやつですよ!」
    「ああ、なるほど」
    「・・・ちょっと酷くない⁉︎なんだよ憂太までーっ!」


    不貞腐れる五条を見て、呆れる夜蛾と微笑む憂太。


    呪術高専に晴れて入学を果たした乙骨憂太は、共に暮らした五条の家を出て高専の寮に入った。五条の言う通り通えない距離でもなかったが、ここに入学したらできるだけ自立していこうと以前から決めていたのだ。

    長いようで短い六年間だった。
    非術師に囲まれ学校生活を送り、学外では五条と夜蛾、家入などの術師たちに呪術師としてを学んだ。
    非術師からみた呪いがどんなものなのか、術師はどんな存在なのか。
    あえて非術師の中で、その差異を嫌という程知った。
    自分の立場、状況、そして"里香"のこと。
    里香の解呪は難しく、とうとうこの六年では成せなかった。しかし、里香のコントロールはほぼ完璧にできていた憂太は、高専総監部に一時睨まれるも、なんとか半人前術師として非公式ながらも五条と共に祓除に行くことも多々あった。

    五条曰く、今の憂太は『特級被呪者』という立場らしい。コントロールこそできてるものの、憂太の成長と共に安定してきた呪力量に影響されて里香は『特級過呪怨霊』という尋常でない呪霊に膨らんでしまった。祓除はほぼ不可能。憂太自信が術者として解呪してしまうのが一番早い。
    それには憂太に一刻も早く、術師として成り立ってもらうしかなかったのだ。

    高専で里香を解呪する。

    それが憂太の目的のひとつ、それから、これは誰にも言ってはいないが、目標として、

    五条の隣に立つ。

    (・・・頑張って強くなりたい。置いていかれないように、傍にいられるように)


    そう思うようになったのは何時からだろうか。

    村のこと、里香のこと、自分の出自のこと。
    思った以上に、厄介なことを背負った憂太だが、五条はそれ以上に重いものを背負っている。


    (・・・強いから独りなんて、淋しいよ)


    すぐには無理かもしれない、でも必ず、そこまで行ってみせると憂太は決めていた。

    恩とか、情とか、五条への憧れとか。

    今はまだ、それが強く重い"愛"だとは、憂太はまだ気づかないーーーー




    「そうだ憂太、君を含めて今年の新入生は四人だよ」
    「そうなんですか?楽しみだなあ!あ、パンダくんも居るんですよね?」
    「 うん。パンダも寮に入るから、楽しくやりなよ」


    パンダは夜蛾が作った突然変異の呪骸だ。五条が任務に着いているときは憂太は大概、夜蛾か家入のもとへ預けられた。憂太にとってパンダは幼馴染のようなものだ。


    今年は少し冷え込んだせいか、花の咲きが遅く敷地内の桜もまだ盛りだ。


    「憂太、こっち向いてー」


    五条がスマホのカメラを構えれば、ディスプレイにはには薄紅色の花弁を纏った少年の笑顔。

    もう子供ではない、慈しんできた大切な存在。


    彼がこの先、どんな未来を選択しようとも、その気持ちは変わらないだろうーーー










    「特級被呪者に特級過呪怨霊・・・悟も学長もずるいなぁ、こんな面白そうな子を隠してて」


    隠し撮りであろうその写真に写るのは、呪術高専1年乙骨憂太。

    それを見つめる男が動き出す運命の聖夜までは、まだ少し先のことであるーーーーー



















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