帰る人「おかえり」
と言うと、決まって返ってくるのは、
「はい」
という素っ気ない返事だった。何度も何度も出迎えては、もしかしたら、という淡い期待も込めて、ときにはにこやかに、ときには真面目に。手を変え品を変え、色々な「おかえり」を試してみても、やはり返事は同じ。
「はい」
もう少しどうにかならないのかよ、と口に出してみたこともあったのだが、相手はいつも通りに眉をぴくりとも動かさずに、
「なぜ?」
と首を傾げてみせるのだった。
「お前とのコミュニケーションは慣れないな」
皮肉などではなく心の底から溜息をついてみせても、それに対するリアクションはなく。常に中身のある会話しかしない、フェデリコとはそういう男だった。
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