純一くんとさくらちゃん。つまらない魔法使いだけど
「……っ!」
胸に飛び込んできたぬくもりを出来うる限り優しく、やわらかく、包み込む。
ふわりと二つに束ねられたきれいな金髪が俺の腕を撫でた。
小さな手で懸命に俺に抱きつく少女はそれきりしばらく微動だにしない。
おそらく、彼女の言葉を使って今の状態を表すなら充電中、なんだろう。
「さくら」
名前を呼んだらよりいっそう強く、ぎゅううと引っ付いてくる。
うるさすぎる心音は、二人分。
小刻みに震える小さな肩。
シャツの胸の辺が濡れていくのを感じる。
そろそろ限界だ。
「かったる……」
ぐいと無理矢理さくらをひっぺがし、まっすぐに見つめる。
やっぱり。そう思った。
俺はさくらの瞳に唇を寄せ、そこに溜まる涙を順に吸い取っていく。
21109