いずみゆの没になったシーン中庭の隅にある粗末な墓石に水をかけ、黒く濡れた地面の上に、手折った花をそっと供える。
神薙家の敷地にあるが、これは伊澄の飼っていたペットの墓だった。……もう随分と昔のことだ。
あれは自分たちが五つか六つの時だった筈だ。ある日突然、伊澄がうちへやって来て、「おはかをつくる」と言ったのだ。幼い手には、白い布にくるまれた何かを抱いていた。
伊澄が中身を教えてくれることはなかったが、大体五、六十センチ程だったから、恐らく猫か犬だったのだろう。伊澄がペットを飼っていたなんて深征は知らなかったから、尋ねたいことはたくさんあったが、能面のような顔をした伊澄にあれやこれやと質問するのは憚られて、ただ粛々と亡骸を埋める為の穴を掘った。なるべく深く掘りたいと言われたから、小さなスコップを片手に二人で額を突き合わせて、一生懸命土を掘り返した。
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