『ムーン・スポット・ライト』『本日はフェニックスワンダーランドへ御来場頂き、誠にありがとうございました───』
「もうこんな時間か」
「本当だ。気づかなかったねえ」
閉園のアナウンスと蛍の光のBGMが鳴り始めてようやく、司と類は辺りが暗闇に包まれている事に気付く。
今日はえむは部活の助っ人・寧々は一歌との歌の練習との事で、2人で舞台装置のメンテナンスや台本と演出の擦り合わせなどを行っていた。
練習が無くとも、ショーの話をしていれば時間はあっという間に過ぎてしまう。
「僕らもそろそろ帰ろうか。照明を落としてくるよ」
「ああ、頼む」
司が荷物を纏めている間に、類は舞台裏の配電盤へと消えていく。
間もなく、控えめに抑えられていたワンダーステージの照明がフッと落ちた。
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