新横浜人狼ゲーム失敗 導入から2日目まで <導入とルール>
「私は吸血鬼人狼ゲーム大好き! 人狼ゲームが大好きなのでちょっと大規模に楽しめるように当ご町内周辺を支配下に置いた! ルールはかんたん! 参加者は村人と狼と占い師と狩人に裏切り者の5つの役割のうちどれかを割り当てられて演じるロールプレイ! 狼を殺し尽くしせば村人陣営の勝ち、村人の数が減って人狼と同数になれば人狼陣営の勝ち、占い師は1日に1人だけを対象に人狼かそうでないかを知ることができる、狩人は一晩にひとりだけを狼から守ることができるが自身は守れない、裏切者は裏切者!」
とか言う吸血鬼が出た。
通行人まで巻き込んでいたのでとりあえず殴ったのに、結界は丈夫で解除されない。クソが。
ゲームが終わるまで結界は解除されない。
ゲーム中にゲームマスターへ攻撃してはならない。ゲームだから。
ゲームマスターはゲーム内で死んだ者から50ccほど吸血する。ゲームだから。
メタ行為もダメ。ペナルティとなります。ロールプレイングゲームだから。
ロールプレイの放棄は当然ダメ。ペナルティとなります。ゲームが成り立たなくなるから。
結界内で起こることは全て催眠による幻覚で、ゲームが終了すれば、死んだ者はゲームの記憶を忘れる。トラウマになるから。
ゲーム終了時に記憶を保有したまま終われるのは最後まで生き残った者のみ。ご褒美ですよ。
ローカルルールとして、村人の陣営の勝利は最後の人狼を吊るした夕方を越えた瞬間に確定する。同様に、人狼陣営の勝利もまた村人を食い殺す夜を超えた瞬間に確定する。
なお、ペナルティはゲーム終了あるいは退場までの行動権と発言権の剥奪です。
ロナルドは村人のカードを引いた。
「とりあえず狼殺せばいいのか?」
「多数決でその殺す相手を決めると言っているだろう、村人陣営ができるのは殺すのではなく吊るすだ。頭を使うゲームだからロナルドくんにはむずかちいでちゅかな?」
「よしわかったてめえが狼だ」
ドム。スナ。
ハイハイだめです、日常の死は無効になります。あくまで吊るか、食い殺されるか以外に、ゲーム内での死はありません。
まずは自己紹介。後の投票に名前は必要だから。
参加者は退治人たちとヒナイチ、たまたま通りかかった一般の人数人。
なお18歳以下のおこさまとワンちゃん猫ちゃんマジロちゃんは安全な場所でお預かり。
人質?いいえ、安心してゲームに臨んでもらいたくて。
<初日夜>
スタートは「夜」
村人は眠る時間です。
いたい
いたいいたいいたいうそだゲームだっていたいいやだたすけておまわりさん退治人さんいるんだろたすけてどうしていたいいやだいたいいたいいたいいたいいたいいたいどうして
「朝」人狼があらわれました。1人減りました。
「昼」人狼だと思う人に投票して吊るす相手を決めてください。
<2日目昼>
「暴力で解決したい」
切実にロナルドが言った。
「それはそうみんなそう」
「野球拳いるじゃん、どうにかできないの?」
「結界使いが結界に巻き込まれてんのかよ」
そういう吸血鬼対策に3年溜め込んだ畏怖欲での結界です。
「変なとこで頑張りやがって」
「さっさとこんなゲーム終わらせてあいつ殴ろうぜ」
退治人と吸血鬼たちが人狼ゲームをどうやって殴るかを相談する横で、ヒナイチは巻き込まれた一般人たちに声をかけている。殴ろうと言う言葉に反応しているので、彼女も隙あらば暴力を行使しようとしているのだろう。
「でも死んだら忘れちゃうんだよね」
ぽつりと静かなほどの声音にも関わらず、それはやけに耳に刺さる言葉だった。きっとその場にいる全員が聞いた。
「若造はあれを殴りたい?」
発した吸血鬼はさして気に留めず傍らの退治人に尋ねる。
「ぶん殴りたい」
こちらも躊躇わず日常のように答える。
「そっか。私もあれきらい」
「あっそ」
「なんかもうめんどくせーな、俺が裏切り者とかいうやつなんだけど」
「マリアさーん!!」
「だって人狼陣営が優位になるように動けとかわかんねーしそもそも誰人狼」
「それを当てるゲーム!!」
「当て方がエグい気に入らない、つまり狼か村人どっちか全滅させりゃ終わるんだろ」
オッケー、ペナルティです。
マリアの影が揺れて立ち上がる。それはマリアの姿をしてマリアの猟銃を構えていた。
「は?」
ぱん、と軽く響く発砲音、あるいは破裂音。破けたのはマリアの左脇腹の皮膚と肉と内臓だ。
ペナルティです。ゲームマスターが告げる。
悲鳴。
崩れるマリアを隣にいたサテツが受け止めた。
「参加者として中止を提言する、GM! これは不当だ、ゲームにおいてプレイヤーは自らの陣営以外の役職を明かす自由がある」
ドラルクが声を張る。
疑義を否定します。役職の名言は自由ですが、彼女はロールプレイを放棄する発言をしましたので。ペナルティとして、彼女の行動権と投票権を剥奪します。
「クソが、剥奪ってそういうことかよ!」
脱いだ上着をマリアの傷口に押し当てながらロナルドが吐き捨てる。
「他に、役職持ちのやつはいないか?」こちらも上着を脱いで止血布に仕立てながら、ショットが声を上げる。「占い師とか、狩人とか、誰か」
「占い師?」
なんだっけ、と思い返す余裕がロナルドにはない。じわじわと、赤い上着の色がさらに濃くなっていく。
「夜に一人を指名して、人狼か否かを知ることができるのが占い師」
ショットの代わりにドラルクが答えた。
「通常のゲームであれば、占い師は偽物が出やすい。人狼陣営から標的を反らすことができるからね。けれどこのゲームに於いては、両陣営ともに最大の行動目標は陣営の勝利ではなく、ゲームを終わらせること」
「終わらせて殴る」
ロナルドが追加して補足する。そうだな、とショットが頷いた。
「名乗っていいんならよ」と野球拳が言った。「俺はその占い師ってやつだ」
「お前かよ、いやヨシ! 初日で誰か見たか?」
「いや」
「なんでだよ見とけよ情報よこせよ!」
「知らねーよこっちは初心者だぞいつ見るんだよそれ!」
ゲームを知っているらしいショットが野球拳に詰め寄る。
止血布はサテツに引き継がれていた。コユキがマリアの意識を失わせないために、彼女の名前を呼びかけている。
ドラルクがふと、ショットと野球拳、それから横たわるマリアを見た。
「ドラ公」なんか気になるのか、とロナルドが尋ねようとした時、コユキの隣でマリアを診ていたゴウセツが立ち上がった。
「GMさんとやら、質問をよろしいでしょうか」
ええ、はい、どうぞ。
「吊るされる対象は、立候補は可能でしょうか」
おとうさん、とコユキが呼ぶ。ゴウセツはそれを無視して続けた。
「そうですね、私は娘のいる父親です。村は今強硬状態にある。誰しもを疑う中、家族を守るため、その潔白を証明するために自らを吊るせと申し出る親の演技といったところでいかがでしょうか」
審議します。…立候補自体は可能ですが、決定は投票によります。
「それに、状況を把握するための時間を稼ぐならば、一般の方やルールを把握している方を減らすより良いでしょう」
おとうさん。強く引き留めように娘が呼ぶのを、父親は無視した。
夕方に吊るす人を決めてください
ゴウセツ 4票
ドラルク 3票
野球拳大好き 2票
ロナルド 1票
サテツ 1票
あとは無効票です。
「夕方」ゴウセツさんが吊るされました。
「夜」
人狼たちは今夜の標的を選んでください。
狩人は守る相手を指定してください。
占い師は占う相手を指定してください。