休憩と爪切りと「ごしゅじーん!頂き物のお茶なんだけど一緒にのも~」
キッチンで何かをしていると思ったら、コップを二つ持ってリビングに来るるくくん。
「お茶パックでもらったんだけど、水出しでも美味しいって聞いたから淹れてみたんだ~」
そう言ってうれしそうに笑う姿はとてもかわいい。
「マスカットの香り?さわやかな感じでいいね」
「なんかすっきりしてて夏っぽい感じのにおいだね~」
味も本当にお茶なのか不思議になるような甘みのある味でなかなかにおいしい。
「なんか落ち着くね~」
「そうだね~」
いつもとちょっと違うのは、るくくんが自分の膝に座ってきていること。
普段は隣に座ることが多いのに今日は膝に座って背中をくっつけてきている。
でも知ってるんだ。これは犬系種族特有の甘え方で、相手を信頼してるときに出る癖のようなもだって。
だから彼の温かさをいつも以上に感じられるうえに、信用されてるんだってうれしくなる。
そしてついでなので……。
「るくくん、ついでだから爪切りしようか?」
お茶を飲み終わったタイミングで切り出す。
「え?」
「最近爪切ってるの見てないし、若干伸びてきてるよね?」
「あ、後で切るからいいよ」
そう言って立ち上がろうとするのをやんわりと捕まえる。腕を前に回して抱きしめるようにするのは不可抗力だ。
小柄故に腕に納まってしまう。ピコピコと揺れる犬耳が頬にあたってくすぐったい。
「そう言ってまた爪割っちゃったらどうするの?気が付いた時に切っておかないと~」
言いながら爪切りを取り出す。いつでもできるようにソファのあたりに置いておいて正解だった。
ゆっくり丁寧に爪を切っていく。彼を堪能するためというのもああるけど、やっぱり丁寧にやらないと落ち着かないから。
なんだかんだ言いながらも大人しくしてくれるるくくんにはとても助かる。いつも切り始めるまでが大変で、切り始めてからは大人しい。
「そういえばるくくん?」
「なぁに?」
「今度ケモノ姿の肉球のお手入れもさせてね?」
「……考えておくね」
爪を切り終わったと悟るや否や腕の中から抜け出してしまう。そして……
「ありがとね、ごしゅ」
頬にちょっと柔らかい感触。それが何かを理解する前にそそくさと部屋に戻っていってしまった。
「今日の晩御飯、ちょっと頑張っちゃおうかな」
彼と一緒にいると本当に毎日が楽しい。