弟子と秋の味覚『い~しや~きいも~。おいも~』
紅葉色づく公園の付近で、毎年この時期から現れるトラックがお決まりの文句を唱えていた。
「お芋~お芋~。美味しいお芋~」
ショップのお手伝いで忙しかった紙屋レイスさん。ショップの人からも聞いていて気になっていた焼き芋のトラックでお芋をゲットできてご機嫌。
「は!右ヨシ左ヨシ!上もよし!敵影な~し!」
以前カラスに上空からクレープを奪われたせいか、屋外で美味しいものを買うときは周囲をついつい確認してしまう様子。
このまま公園で食べていくのもいいけれど、お店に戻ってお茶と一緒にというのも捨てがたい。
そう考えていると前方から知っている姿が走ってくるのが見える。
「あれ?ミズナ?」
「あ、おししょー!おししょーはお散歩ですか?」
「うん。休憩のお散歩ついでに、ショップの人から聞いていた焼き芋屋さんに買いに来たんだよ~」
「あ、私もなんです!とってもおいしいって聞いて気になっちゃって」
「それなら、あっちに……」
トラックがいるよ。と続けようとしたところで
『い~しや~きいも~。おいも~』
宣伝文句を唱えながらトラックは軽快にその場を去ってしまっていた。
「……」
「……」
移動販売であるがゆえにありえないことではないのだが、何とも間の悪い出来事であった。
「いっちゃった……」
「あうぅ~」
ミズナちゃんの落ち込む姿に、なんとなく昔の自分が重なってしまったレイスさん。
そしてちょうどいいことに今回買えた焼き芋はなかなかの大きさだった。
「ミズナ。僕が買ったお芋、お店で半分こして食べよ」
「え、でも……」
「いいからいいから。その代わり、ミズナがお茶を入れてね?」
「ししょー……。はい!美味しいお茶入れますね!」
一転して笑顔になった弟子に、よしよしと微笑むレイスさん。
焼き芋の味は聞いていた通りに美味しかった。
静かにおやつを楽しむのもいいけれど、弟子と一緒に食べるのも悪くない。とおやつタイムを楽しむのでした。
めでたしめでたし