麻雀配信のちょっとした裏側「あの……なつの様?」
「ん?なに?」
「それはいったい?」
「え?麻雀だけど」
それはまぁ、見れば何となくはわかる。とはいえそうではなくて……。
「いえ、そうではなく……。その点数はいったい?」
「……みんなして俺の運気を吸っていくんだもん」
画面に映る数字で「祭夜なつの」のところはマイナス表記。いわゆる「飛ばされた」という状態である。
「新年早々に麻雀とか~とは言うなよ?配信活動だって立派な信仰集めなんだから」
「いえ、新年に麻雀を打つ風習の土地があるとは聞いていますのでそこはいいんです。問題は、仮にもお山と運気の御利益を扱っているのに飛ばされてどうするんですか?というところで……」
「うるさいな~」
若干ムスッとしたような、拗ねたような声で抱え込まれる。
今日は獣姿なのでスッポリとなつの様の腕に収まってしまう。
「ちょっとここでじっとしてて」
「自分の運気使っても変わんないと思いますよ?」
だって、ものすごく細い線で運気が流れて行ってしまっているのが見えるから。
なつの様と比べれば自分の運気なんて比べるまでもないほどに違うというのに……。
「いいからいいから。ちょっとだけ」
そう言って自分を撫でつつ、笑いながら再び画面に向かう。
自分は麻雀のことはほとんど知らないが、なつの様が楽しそうなのでそれでいいと思う。
ついでなので、なつの様に抱えてもらっている感触を楽しむことにしよう。この方は普段から割と薄着なので、肌面積のほうが大きかったりする(工務店業務の作業服よりは露出度は低いけど)。
もちもちの肌にさりげなく頬を寄せながら麻雀を打つなつの様を見守る。
「新年早々役満あがるとかどうなってんの」
「あ……やっぱり」
なつの様の首元を(物理的)に吸いながら見守っていれば、やはり視聴者もただものではないらしく大きな手を狙ったりなんだりでなつの様を追い詰めていく。
「この二人怖いんだけど……」
「いやぁ……このお二人強いですねぇ」
「お前はどっちの見方なんだよ?」
「なつの様の味方を基本として、なつの様のかわいいお姿を拝めるならそちらに味方します」
「欲望駄々洩れじゃねぇか」
「いじゃないですか。なつの様が不利益を被るようなことは絶対に!しないんですから」
「……そうだけどさ~」
自分の毛並みをモフモフとしながら考え込むなつの様。その手つきはやさしくて溶けそうになるほど心地いい。
「それより、よかったんですか?あんなに布面積削った衣装で」
「みんな喜んでくれてたし、ヨシとする!それに」
「それに?」
「おまえだって喜んでたじゃん?」
図星だったのでそっと目をそらす。そんな自分を見てなつの様は笑った。
こうして今日も平和に過ごすのであった。