鳴かぬなら「おまんはほんに静かじゃのう」
昼間はあれほど来客の多かった長屋も、人間2人と幾ばくかの獣たちの営みの音のみを残し静まりかえっている。
ごろりと隣で共に横になっていた龍馬がふと起き上がる。
「おまんはまっこと静かな人じゃ」
こちらを見下ろし、ぽつりとこぼす。
「わしがおまんに触れてもおまんはこうしてただ静かに受け入れるだけ」
するりと頬を撫でられ暖かな手のひらを追いかけるように目を閉じる。
「…不満か?」
確かに自分は口達者でもなければ愛しい人の触れ方も知らぬ身だ。愛想を尽かされても何の疑問も抱かない。
「いんや、別に不満なんて思っちょらん。ただ…」
「…ただ?」
薄目を開けて龍馬を見やると暗い部屋の中でも確かに目と目が交わった。
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