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    ma-e-ka(仮)

    @maeka46940974

    駄文、拙文、メモ、色々

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    ma-e-ka(仮)

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    今ループ、ふこちゃから”物語”を託され夢を叶え
    漫画家になった安野先生が或る漫画の連載をスタート
    させて…という幕間妄想甚だしいIFストーリーです
    アン風強火担の先生に二人の記念日イラストを描いて欲しい
    という妄想から何故か枝葉がモリモリ伸びて…
    妄想冗長過積載…相も変わらぬ拙文駄文…マジで好き勝手
    書いてる(いつもの事)ので、ホントに何でも許せる方
    向けです!
    (アニメ派の方は注意してね)

    #アンデッドアンラック
    undeadUnluck
    #アンデラ
    andela.
    #安野雲
    #出雲風子
    izumoKazuko

    『ねがい(仮題)』!注意!
    ・この話は漫画『アンデッドアンラック』の二次創作です。
    書きかけです…バカみてぇだろ?まだ続くんだぜ、これ(苦笑)
    ・今ループの風子から”物語”を託され、その後夢を叶えて漫画家
    になった安野先生が”或る漫画”の連載をスタートさせるべく…という
    幕間妄想甚だしいIFストーリーです(いつもの事)
    ・一応今ループのお話です…アニメ派単行本未読の方はご注意を!
    ・先だってのアン風記念日、気の利いた事も出来ない…そうだ!
    アン風強火担の安野先生ならきっと超エモい二人のイラストを
    描いて祝ってくれるはず…という妄想から何故か枝葉がモリモリ
    伸びて…一つのお話が脳内に爆誕しました(苦笑)
    本当に好き勝手書いてるので何でも許せる方向けです(ガチで)
    『ご飯食べてきたから』って明くんのセリフだけで色々と
    幕間を好き勝手妄想…きっともっと長くなる(確信) 
    ・舞台が過去バナに飛んだり、登場人物の設定が好き放題だったり
    色々齟齬があるかもなので…その旨ご容赦ください
    ・因みに、”或る漫画”の連載はまだ始まってません(苦笑)
    安野先生、ネーム頑張って(笑)
    ・安野先生は僕、過去明くんはボク、大人な九能氏は俺、と
    使い分けてます…読み辛くてすみません
    ・一人称、ってやつで物語を編むの初めてで…難しいです(沈)
    不自然な部分あるやもですがご容赦の程を…
    ・何でも許せる方向けです! 何でも許せる方向けです!!

    それでは、良しなに…





    「よぉしっ…やるか!」
    気合を入れる様に呟いた俺は使い慣れたクロッキー帳を取り出すと、愛用の
    シャープペンシルを手に、真っ白な紙の上に線を引いた。
    ザックリとアタリを入れ、建物と人物の配置を決めていく。
    イメージする場所は……世界有数の乗降客数を誇る日本の首都圏のと或る駅
    …ランドマークともいうべき高層ビル群に囲まれた大きな高架橋。
    その欄干から眼下の鉄路を臨み、独り静かに俯く少女……頭上には彼女の
    心情と相反する様な澄み切った夏の青空。そして……

    『ねがい(仮題)』


    「……はい、OKです。こちら、印刷上がり次第献本させて頂きます
    ので……わざわざ足運んでもらいまして有難うございました……そして、
    無事に最終回を迎える事が出来て……連載、お疲れ様でした!」
    「多比岡さんも、お疲れ様でした。……なんか描き下ろしとかおまけとか
    増えちゃって……ごめんね?」
    「そんなことないですよ!おまけページのカットや裏話、読者の皆さんも
    楽しみにしてるんですから!」
    「そう?本編に直接関係ない裏話とか、結構好き放題やってるから……
    呆れられてるって思ってたんだけど…それ聞いてちょっとだけ安心したよ」

    担当の多比岡さんと話すうち、僕は気になっていた件について聞いてみた。
    「ねぇ、この前渡した次の新作のネームだけど…編集陣の反応、どう
    だった?」
    「あぁ、それなんですが……主人公の女の子のキャラは結構感触良かった
    んですが……その、相手役?……ヒロインと絡む彼のキャラが……」
    「えぇぇ~!?イメージボード見て貰った時は好感触だったって言って
    たのに!?」
    「あの時のイラストは……高架橋に一人佇むヒロインの背後に何者かの
    人影が伸びて…ってやつだったじゃないですか……編集会議の方でも見て
    貰ったんですが……なんて云うか……相手役がゴリゴリ筋肉のマッチョ、
    っていうのがどうも…」
    編集会議というワードに……今まで僕を導いてくれ、共に戦ってきた嘗て
    の仲間の事を思い出す。
    「あ、編集会議なら誉田さんに早志本さんも居たんじゃ?…二人の
    反応は?」
    「それが……意見欲しくて目線送ったら……顔逸らされました。」
    「だあぁぁ~何それぇ……ん~彼の造形に関しては絶対譲れないんだよ
    なぁ」
    項垂れる僕に、申し訳なさそうに多比岡さんが答える。
    「私、個人としては……今までの少女漫画にない彼氏像?というか…
    面白そうだな、とは思います……すみません、力及ばず……」
    「いや、これは僕の努力不足だ!君が思い悩むことはないよ…もっと
    もっと内容を練り上げて、皆をあっと言わせるネーム持ってくるよ」

    多比岡さんが僕に問い掛けてきた。
    「誉田さんや早志本さんから担当の仕事引き継ぐときに聞いてます…
    先生、デビュー当初からこのお話描きたいっ、て言ってらしたそう
    ですね?」
    「うん、こんなこと言うと大袈裟だけど……小さい頃からの夢、目標
    だったんだ…このお話を漫画にしたい、描きたいって!そのために
    漫画家になったっていってもいい位だから」
    「小さい頃から!?……そんなに思い入れあるんですか?」
    「伝えたい想いがあるんだ。このお話を通じて、届けたい想いが…」

    次の打ち合わせ日の確認をし、僕等はそれぞれミーティングルーム
    代わりの会議室を後にした。

    「はぁぁ~やっぱ難しいなぁ……それに…お腹空いたなぁ」
    ポソッと愚痴をこぼしながら、僕は何度も通った勝手知ったる
    フロアの廊下を歩いていく。廊下は節電対策なのか薄暗くって、まるで
    僕の心の内を表してるように思えてくる。
    左手首に納まる腕時計を見れば、時刻はあと1時間程でナイトタイム
    ってやつで…早めに終われば帰りに何処かで晩御飯でも、と思ってた
    けど…どうしよっかなぁ……

    あ、僕の名前は「安野(あんの)雲(うん)」! 少女漫画家やってます!
    ちなみにこの名前は筆名(ペンネーム)だよ!デビューしたての頃、本名で
    いこうかとも思ってたんだけど、当時の担当編集…僕を見出してくれた
    恩人の一人でもある誉田さんに『障りがあるかも…』って言われて…
    同じ出版社の少年マンガ誌で連載してた作家さんが“女性”ってだけで酷い
    嫌がらせを受けた事があったらしく、その逆も…って心配してくれたんだ
    …マンガの表現の仕方や技術は、その人がそれぞれ培ったその人の能力
    だと思う。それを“性別”で否定されるなんてナンセンスだよね…
    ま、個人の意見だけどね。

    まぁそんなこんなで僕の中で結構思い入れのある言葉を筆名にさせて
    もらったんだ。この名前で漫画家やってたら……きっと気づいてくれる、
    って信じてるから。

    デビューして10年以上経って……いろんなテーマで作品を発表して、
    連載もいくつか持たせて貰った。
    今日は、つい先日無事に最終回を迎えた連載作品のコミックスのおまけ
    ページや描き下ろしに関する打ち合わせと、先日提出した次の新作のネーム
    の一件で編集部の入るビルの打ち合わせ用の会議室へと来てたってわけ!

    ちなみに作品の内容は…双子の姉妹とその幼馴染の青年とのラブコメディ!
    恋愛要素に、サスペンス、アクション、SF要素も織り交ぜて……なんと
    アニメ化に、実写映画化までされちゃって!
    (幼馴染の青年を、有名なイケメン俳優さんに演じて貰っちゃって!!
    すっごく喜んでたっけ……何故か僕のお母さんが(笑))
    僕の描いたお話が、いろんな人の手でどんどん僕の知らない魅力を引き出さ
    れていくのを見守るのって……自分の作品なのに…何だか面白くって…
    イイね!最高だよね!!
    3人の後日談はコミックスの方にたっぷり描き下ろしたからね!この3人を
    愛してくれてたファンの皆に喜んで貰えたら……嬉しいなぁ。

    その勢いのまま、今度こそ!と気合と思い入れを込めて切った、次の
    新作のネームなんだけど……今の所、OKは貰えてない。

    実は、デビュー時にも『これが描きたいっ!』って誉田さんに話した
    ことがあるんだ。
    (拙いながらも当時の全力をぶつけたネームも見てもらった……一見した
    だけでそのノートを伏せられちゃったけどね(泣))
    誉田さん曰く……
    『君が、このキャラクター達をとても大切に…愛してるのが伝わって
    くる。でも、正直今の君の実力ではそれを伝え切れないのでは、とも
    思う。君としてもそれは本分ではないだろう?……私個人の意見としては、
    これとは別の話で……色んな意味で己を鍛えて…実力を、キャリアを充分に
    積んでから取り組むべきものだと思うんだが……しかし荒唐無稽な……でも
    面白いテーマだね……世の中のあらゆる理を否定する者…否定者と呼ばれる
    者達の物語、かぁ……これを少女漫画で?』

    確かに、当時の僕は“期待の超大型新人!”と持ち上げられてはいても、
    デビュー間もない、商業誌での連載経験も、この業界での実績も何もない
    新人(ルーキー)だった。
    ならば、と僕は漫画を描き続けた…色んなジャンル、シチュエーションで…
    自分が面白い!と思うものを……読んでくれた皆に楽しい!面白い!って
    思って貰える漫画を……描いて描いて描いて描き続けて……その内に、僕の
    漫画を“好きだ”って言ってくれる人が増えてきて…
    気づけば僕は……最新刊のコミックスが出れば、既刊本と一緒に平積み
    して貰える位の…アニメ化や実写化までして貰える一端の漫画家になって
    いた……でも…
    「はぁ…毎回思うけど…連載開始に扱ぎ付けるまでの最初の突破口が、
    いっっつも大変なんだよなぁ~~解っちゃいるけど……何年経っても
    この壁は………高いなぁ』

    すれ違う顔馴染みの編集スタッフと挨拶を交わしながら、いつの間にか
    僕はフロアの一角に設けられた、休憩スペースに辿り着いていた。
    廊下の突き当りにあるそこは、ちょっとした打ち合わせなら出来る位の
    ソファーや机などの応接セットが並べられ、それを取り囲むように飲料
    や軽食の自販機が設置されている。
    薄暗いフロアの廊下の、そこだけが煌々と明るくて……僕は何故か
    懐かしい気持ちに誘われて…吸い寄せられるように革張りのソファー
    に深く腰掛けた。
    座る直前に、目の前の自販機で買い求めたオレンジ味の炭酸飲料の
    缶を開け一口含めば、馴染みのあるシュワッとした喉ごしに……
    僕はあの日の出来事を…僕の運命を…いや、人生を変えた、荒唐無稽で
    素敵で不思議な出逢いを思い返していた。

    「あの時、風子お姉さんがご馳走してくれた、大っきなハンバーガー
    と山盛りのフライドポテトに茶色いソースとチーズのかかったやつ……
    すっごく濃くって甘酸っぱいレモネード…あれ美味しかったよなぁ」

    誰もいない廊下の片隅…僕は独り言ちると照明の眩しさに瞼を
    そっと閉じた。




    1972年9月11日の夕方……学校帰りのボクは、買ったばかりの週刊
    ジャンプを抱えていつもの通学路を歩いていた。
    ふと、何かに呼ばれた気がして……薄暗い路地裏に足を踏み入れた
    ボクの目の前に…まるで拾ってください、とでもいう様に何かが
    置かれていた。
    それは、一本の付けペン……所謂Gペンってやつだった。
    漫画家になるのが夢!と言っているボクにとって、目の前のそれは
    ある意味憧れの道具で……でもこんな所に落ちてるなんて……もしか
    したら落とした人困ってるんじゃ、とボクは数歩足を踏み出した。

    「ダ~メ、そのペン(Gライナー)には触らせない」

    柔らかな女の人の声が聞こえたと同時にボクの視界は急に持ち
    上がった。
    声のした方に顔を上げれば……大きなリュックサックを背負った、
    まだ9月なのに真っ赤なニット帽と揃いの手袋を付けた若い女の人が
    ボクを荷物の様に抱え上げていた。
    ママにしか見せた事ないはずの、ボクの漫画のファンだっていうお姉さん
    は、ボクをそっと地面へ下ろすと、ペンを拾い上げながら語り出した。

    不明?アンノウン?前のループ?否定者?何だか少しワクワクするお話
    だけど、落し物はちゃんと警察に届けなきゃ!って、そう言おうとしたら、
    「…じゃあ、信じてもらおっか……ムーブ」
    呼び掛けた直後、お姉さんの肩越しに、三角形を組み合わせたサイコロ
    みたいな形の、大きな口とすごい歯の生き物が現れた。
    学校の図書室にある、お化けや妖怪の図鑑にも載ってないその姿に、ボクが
    驚いて大声を上げた直後…

    ボクの体はさっきみたいに荷物の様に抱っこされて空を飛んで……
    違う、これ…おっ?おっ!?落っこちてるうぅぅ!!
    「落ちるっ!落ちるぅぅ!!」
    ビックリして叫ぶしかないボクにお姉さんが言ったんだ。
    「ここはカナダ!……私達とキミが初めて出逢った場所!」
    初めて、ってボクがお姉さんと会ったの、ついさっきだしあそこは
    東京だよ?

    でもほんの一瞬見えた、お姉さんの泣きそうな笑顔に…ボクは何も言え
    なかった。

    思ったより柔らかな衝撃と共に地面に着地したボク等の前に在ったのは
    ……背後に大きな森を抱えた、月の光が照らす夜の海が眼の前に煌めく
    芝生の公園と木製の簡素なベンチだった。

    「へっ?ここ……どこ?」
    「ここはカナダのバンクーバーって都市にある、スタンレーパークって
    いう公園。安野先生…前のループの君と初めて出逢ったのも……」
    しみじみと語るお姉さんには悪いけど、ボクは混乱の真っ只中にいた。
    「さっきまで夕方だったのにっ!?なんでっ!?なんで、こんなに
    真っ暗なの!?」
    「あぁ時差があるからね。確かカナダと日本の時差は…マイナス16時間?
    だっけかなぁ……今は夜中の1時頃位、かな?」
    「うえぇぇっ!?夜中の1時ぃ!?」
    ボクそんな夜更かししたことない!心の中で叫ぶボクに、お姉さんが問い
    掛けてきた。
    「そういえば向うはそろそろ御夕飯時だったっけ…お腹空いてない?
    何か食べに行こっか?」
    「ふえっ!?で、でもっこんな夜遅くに開いてるお店なんてあるの!?」
    ぱっと見渡しても辺りは真っ暗で、お店らしきモノの灯りは一つも見当た
    らない。
    「ムーブ!この近くの街で営業中の飲食店まで連れていってくれる?」
    『何故お前等の腹具合の都合で我が動かねばならぬ』
    「へっ?この声どこから…うわっ!?さっきのサイコロみたいなお化け!」
    『誰がサイコロだ!この小童!』
    ここへ連れて来られる直前に見えた、サイコロみたいなお化けがお姉さん
    の肩越しにひょっこり顔を出した。
    「まぁそう言わずに……こんな時間だし、何か起こるかも知れない
    かもよ?もしかしたら…ね?」
    お姉さんは何かを含んだような言い方をしながら、お化けに呼び掛けた。
    すると、さっきみたいに地面が急に無くなって!また落ちるっ!って
    思ったら…
    ボク等は明かりが灯る一軒のお店の前に到着していた。


    道路に沿って立つ街灯以外ほぼ灯りの無い真っ暗な街の中で、唯一皓々と
    灯りの点るお店の前に突然現れたボク等を、道路を挟んだ向かいの歩道
    から3人の男の人達が興味深げにじっと見てる。
    着地に失敗して尻餅付いたボクをお姉さんが引っ張り起こしてくれる
    様子もジロジロと見られて…恥ずかしいのと怖いのとごちゃ混ぜの気持ち
    の中、ボクはお姉さんの後ろに急いで隠れた。
    お姉さんは小声で「離れちゃダメだよ」って囁くと、ボクの肩を抱く
    ようにしてお店に入って行った。

    店内は、机に突っ伏して眠ってる人、がつがつとすごい勢いでご飯を食べ
    てる人、隅っこの方でご飯食べながら何かお話してる人達がいたりと、
    こんな夜中なのに思ったより人がいて……ボクは、みんな眠くないのかなぁ
    って、ちょっと不思議な気持ちだった。
    そんな深夜のお店に現れた、日本人の若い女性と男の子……思わぬ来訪者に
    店内にいたお客さん達がじっとこっちを見て来て少し怖かった。
    けれど今まで体験したことない独特の空気に、ほんのちょっぴりワクワク
    してたのも嘘じゃない。
    お姉さんと一緒にいれば大丈夫、って安心感もあったのかも……

    でもなんでだろ?お姉さんとはさっき出逢ったばっかりなのに……
    ずっと前から知ってる様な…何時も傍に居てくれてたような感じがする。

    お姉さんは、まるで外国の人みたいにペラペラと店員さんとお話してる。
    「……あ、ここサイドメニューにプーティンあるっ!……嫌いなモノとか
    ある?飲み物は何にする?コーラ?……それともレモネードにする?この
    お店の手作りでお薦めなんだって」
    「へっ!?あのっなんでも食べれるよ!辛いのはちょっと苦手……
    レモネードって、どんなの?」
    お姉さんが見せてくれるお品書き(英語だから横に描かれてるイラスト
    で判断するしかないけど)からあれこれと指で示してたら……赤と白の
    ラベルの飲み物の絵があった。
    「あ、これは?美味しいの?B…u…d……ブ、デ…何?」
    「……バドワイザー……それはビール…お酒だから子供はダメだよ」
    「えっ?お酒なの、これ!?」
    お姉さんは懐かしそうにその名前を呟いてたけど、それは選ばずに結局
    お薦めっていうレモネードを3人分とハンバーガーや他のメニューを
    幾つか注文して、持ち帰り用にって店員さんに頼んでた。
    (何で3人?あ、あのお化けの分か…食べるのかな?)

    暫くして、怠そうな顔をした(…眠いのかなぁ?)店員さんが、出来上が
    った注文の品物を入れた紙袋をちょっと乱暴にカウンターに載せた。
    お姉さんはリュックから横長のメモ帳の様な物を取り出した。
    その1枚にさらさらっと数字を書いて店員さんに渡し、何か話し掛けてる。
    すると、店員さんがすっごい笑顔でこちらに向かって話し掛けてきた。
    何言ってるのか判らなくてボクがキョトンとしてたら、お姉さんが教えて
    くれた。
    「『小さな旅人さんの旅の無事を祈ってるよ。もし、レモネードの味が
    気に入ったなら、またこのお店においで』だって!」
    旅人さん、だって!もしかしてランドセルがリュックサックに見えたの
    かなぁ……

    ボクとお姉さんは、食べ物が詰まった紙袋を抱えて店の外へ出た。
    その時、
    「Hey,Girl Do a good thing with us Okay」
    静かな暗闇の中に何者かの声が響き渡った。
    声の方を見れば、道路を挟んだ向かい側の街灯の下……さっきの男の人達
    がこっちを見てニヤニヤと笑ってる。
    それを見たお姉さんが、苦笑いしながらぽつりと呟いた。
    「あ~あ………ま、やっぱりそうなるよねぇ…はぁ」

    あいつ等はニタニタ笑いながらお姉さんに向かって話し掛けてくる。
    ジェスチャーで何か示しながら仲間達とゲラゲラ笑ってる。
    何言ってるかは解んない……けど、何を言おうとしてるのかは解る!
    きっとお姉さんの事バカにしてるんだ!何なんだよ、あいつ等!!
    お姉さんは、ただ黙ってあいつ等を見つめている。
    ボクは男なのに……体も小さくって…お姉さんを守る事も出来ない……
    今もほら、怖くて……
    お姉さんの後ろに隠れて俯くボクに、優しい声が舞い降りてきた。

    「荷物持っててくれるかな?しっかり抱えて離さないでね。それと…
    ちょっと騒がしくなるけど、ここから動かないでね。」
    お姉さんは、食べ物の詰まった紙袋をボクに渡すと、ふうぅぅと小さく
    深く息を吐いた。
    瞬きの一瞬、お姉さんは道路の向こう側…あいつ等の前に立っていた。

    えぇ!?いつの間にっ!?ボクがビックリしてるのと同じように、
    あいつ等も身動きひとつ出来ずに呆然とお姉さんを見つめてる。
    お姉さんは、いつの間にか外してた手袋を片手に、素手の方の手で…
    その白い指先であいつ等の鼻先を、ちょん、ちょん、ちょん、と
    軽く突いた。

    直後、ボクの体は荷物ごとふわっと持ち上がっていた。
    「うわわっ!?な、なにっ!?」
    「ただいま!ちょっと、おとなしくしててね?」
    あ、お姉さん…って、えぇっ!?ボ、ボクいつの間にか抱っこされ
    てるぅ!これ知ってる!この前TVドラマでやってた、お姫様抱っこ
    ってヤツだ!これっ男の人が女の人にするヤツだよね!?な、何で!?
    ボク男なのに!……でもちょっとドキドキするの、何でだろ?

    お姉さんはボクを荷物ごと抱えたまま、道路の向う側でぼぉっと
    突っ立っているあいつ等に向かって、こう言ったんだ!

    「来るよ……小さいだろうけど、不運が!」



    「ふぇっ!?ふ、不運って!?」
    道路の向こう側を見れば、あいつ等が何か喚きながらこちらへ向かって
    道路を横断してこようとしてる。
    何言ってるかは解んないけど滅茶苦茶怒ってるっ!

    その時、道路の向こうの暗闇の中に、ピカッと車のヘッドライトが光った
    …と思ったら、突然ガシャンッって大きな物音がして、直後ゴロゴロ…
    と何かが転がって来る様な音がした。
    その正体は…大きな車のタイヤだった!!

    「何でぇっ!?タイヤだけぇ!?車はどこいったのぉ!?」
    ビックリして叫ぶ僕を他所に、お姉さんは僕を抱っこしたままこちら
    へ転がってくるタイヤを見つめている。
    危ないっ!と思ったその時、道路に落ちてた石か何かに当たったのか、
    タイヤはボク等の目の前で大きくバウンドした。
    前を通り過ぎていったタイヤは、ホップ、ステップ、ジャ~ンプ!と、
    その勢いのまま……あいつ等めがけてぶつかっていった!

    タイヤはボウリングのピンの様にあいつ等を吹き飛ばし、街灯の柱に
    ズシ…ンッと音を立ててぶつかり止まった。
    大きな物音に、さっきまで居たお店の人達が飛び出してきて…道路は
    何だかちょっとした騒ぎになってきた。
    あいつ等は、助けに来てくれた人達に向かって何か大声で喚いてる。

    お姉さんはそれを見て、安心した様にほっと息を吐くと、ボクを抱っこ
    したまま近くの路地裏に駆け込むと、またアイツの…サイコロお化けの
    名前を呼んだ。
    「ムーブ!」

    浮く様な、落ちる様な感じの直後、柔らかな地面の感触と静かな波の
    音がボクの体を包み込んでいた。

    色んな事が有り過ぎてぼんやりしてたボクをお姉さんはそっと地面へと
    下ろしてくれて…ボクの抱えてた荷物を受け取ると、何事もなかったか
    のように近くのベンチをテーブル代わりに、買ってきたものを並べだした。
    『期待させておいてあの程度の騒ぎか…』
    「あの程度って…あれ位で済んで良かったの!あんなこと言われて…」
    お姉さんはサイコロお化け…ムーブだっけ?…と、口喧嘩しながら袋の中
    の物をすっかり並べ終えると、
    「よし!先ずは腹拵えだね。さぁ、食べよ!!」
    そう言うと、ボクに笑い掛けた。


    カナダのハンバーガーはすっごく大きくて……この前ママと一緒に
    行ったハンバーガー屋さんのと比べても何倍もあって…でもとっても
    美味しかった。お姉さんは、フライドポテトに茶色と白い色のソース
    のかかった料理……プーティン、っていうんだって……を、
    「うん、うみゃい……そうだ、そうだった、こんな味だった…」
    って懐かしそうに言いながら食べてる。

    すっごく甘くって酸っぱくって、でも美味しいレモネードをストローで
    吸い上げて……すっかりお腹いっぱいになったボクは、ずっと気になっ
    てたさっきの出来事についてお姉さんに聞いてみることにした。

    「あのっ……さっきの“不運が”ってやつ……もしかして、あいつ等に
    突っ込んでったタイヤの事なの?お姉さんが何かしたの?」
    お姉さんは一瞬ピク…と肩を揺らすと、ゆっくりとボクの方へ体を向ける。
    僕の顔を見てニコッと優しい目を向けると、真っ赤な手袋を付けたまま、
    ソースでべたべたになってたボクの口元を、手にしたナプキンでそっと
    拭い取ってくれた。 ボクの顔からナプキンを離したお姉さんは、
    「あの路地裏で初めて逢った時、私が言ってた事憶えてる?」
    「ん~~と、あ、“否定者”…とかってやつ?」
    「うん、そう……さっきのタイヤがあの人達にぶつかっていったのは、
    彼等の『運』を否定したからなの……私が」
    「へっ?『運』を否定、する?って……どういう事?」
    お姉さんは小さく息を吐くとベンチに座り直し、目線を夜空に…
    満月に向ける。そして、ゆっくりと語り始めた。
    「この世界には、“神”と呼ばれる存在(もの)が創った理がいっぱい
    有るの…食べる事、眠る事、動く事、伝える事……他にも健康、言葉、
    病気、性別……正義や真実、季節や運…そして、死ぬ事も…」
    「死ぬ、こと?」
    お姉さんは……こっちを向いて、ボクの目を見つめて…

    「私は『UN LUCK(不運)』…出雲風子……人に直接触れる事で
    触れたその相手の『運』を否定する…『運の否定者』なの」

    「えっ…触れ、る……!!?」
    そういえばボク、さっきお姉さんに口元拭いて、貰って…!?
    ボクは思わずのけぞって、ベンチから飛び退いた。そして周りを
    見回した。さっきのあいつ等みたいに、ボクの所にも何か飛んで
    来るんじゃ、って思って…

    ボクの慌てる様子を見たお姉さんは、一瞬の後あっ、って顔をして
    「あ、私の能力は相手の素肌に直接触れる事で起こるの!さっき
    口元拭った時、手袋つけたまんまだったでしょ?だから大丈夫、
    不運は来ないよ!……ごめんね、ビックリさせちゃって…怖がらせて
    ……嫌な気持ちにさせて…ごめんね」
    申し訳なさそうにそう言うお姉さんを見て、ボクは…

    ボクは思わずお姉さんに駆け寄って…お姉さんの手を…真っ赤な手袋
    に包まれたその手を両手でぎゅっと掴んだ。
    「ボ、ボクもごめんなさい!話聞いてびっくりしちゃって……その、
    だから……ほ、ほら……手袋越しなら平気なんだよね!大丈夫だよ!
    怖くないよ!ボクも……お姉さんのこと、嫌な気持ちにさせて…
    ごめんなさい」
    うまく伝わったかな、お姉さんに…ボクの気持ち……

    お姉さんは、手袋に包まれたもう片方の手でボクの手を優しく包んで…

    「ありがとう……キミは、やっぱり……優しい人だね」

    そう言うとボクの手をきゅっと握ってくれた。


    「もうお腹いっぱいかな?それとも、まだ食べられる?」
    「え?あ、うん!もうお腹いっぱい!とっても美味しかった!御馳走
    様でした!」
    そう言うボクに笑い掛けてくれながらそっと手を解くと、お姉さんは
    手つかずのハンバーガーや飲み物の入った包みをサイコロお化け…
    ムーブに「どうする?食べる?美味しいよ、このレモネード」って
    言いながら渡してた。
    どうやって食べるんだろ…って何処に入るんだろ?

    お姉さんはベンチに座り直すと、ボクの方へと向き直り、
    「今から面白い話をしてあげる。ちょっとだけ…付き合ってくれる
    かな?」
    そういえば初めて出逢った時、そんな事言ってたような……ボクも
    ベンチに座り直すと、お姉さんの顔を見上げて、こくん、と頷いた。
    お姉さんはボクににっこりと笑顔を向けて、
    「さぁ、何処から話そうかなぁ……それじゃあ…むか~し昔、ある
    ところに…」

    お姉さんが話してくれたのは……ボク等が今いるこの世界を創った
    “神”なる存在に与えられた力=色んなものごとを否定する力によって
    大事なモノ…家族を、友人を、仲間を、矜持を、愛を奪われた否定者と
    呼ばれる者達の…そんな彼等の…“神”への叛逆の物語だった。

    そのお話は……今まで見聞きしたどんな漫画や物語や映画よりも荒唐無稽
    で面白くてちょっと怖くてどこか寂しくって、でもすっごく楽しくって…

    そして何故か、『何処かで体験した憶えのあるような物語』だった。


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    Replies from the creator

    ma-e-ka(仮)

    MAIKING今ループ、ふこちゃから”物語”を託され夢を叶え
    漫画家になった安野先生が或る漫画の連載をスタート
    させて…という幕間妄想甚だしいIFストーリーです
    アン風強火担の先生に二人の記念日イラストを描いて欲しい
    という妄想から何故か枝葉がモリモリ伸びて…
    妄想冗長過積載…相も変わらぬ拙文駄文…マジで好き勝手
    書いてる(いつもの事)ので、ホントに何でも許せる方
    向けです!
    (アニメ派の方は注意してね)
    『ねがい(仮題)』!注意!
    ・この話は漫画『アンデッドアンラック』の二次創作です。
    書きかけです…バカみてぇだろ?まだ続くんだぜ、これ(苦笑)
    ・今ループの風子から”物語”を託され、その後夢を叶えて漫画家
    になった安野先生が”或る漫画”の連載をスタートさせるべく…という
    幕間妄想甚だしいIFストーリーです(いつもの事)
    ・一応今ループのお話です…アニメ派単行本未読の方はご注意を!
    ・先だってのアン風記念日、気の利いた事も出来ない…そうだ!
    アン風強火担の安野先生ならきっと超エモい二人のイラストを
    描いて祝ってくれるはず…という妄想から何故か枝葉がモリモリ
    伸びて…一つのお話が脳内に爆誕しました(苦笑)
    本当に好き勝手書いてるので何でも許せる方向けです(ガチで)
    11030

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