岳七が死んだ 暑い暑い夏のある日。
いつもと変わらないクソみたいな日だった。
垢にまみれた子らは道端で物乞いし、沈九もその中にいた。
茹だるような暑さの中でみな苛立ち、木陰を取り合ってワザとぶつかっただの違うだのから乱闘が始まった。
違ったのは、いつもなら誰かがすぐに呼んでくる七哥がいつまでたっても来なかったことだ。
「七哥が倒れてる!」
見回り役の七哥を探しに行った子供が叫んだ。
喧騒の場は一瞬静まり返った。
子供らが我先に押し寄せた先で、
七哥は路地裏に打ち捨てられた飼い葉桶にもたれ掛かり、眠るように事切れていた。
子供が死ぬのはここでは日常だ。
それでも、七哥ほど育っていればなかなかそんなこともない。
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