私が審神者でマスターです。大変だ!マスターくん!小特異点が発生した!レイシフトを…いや、こっちに近づいてる!?!?
緊急招集で集まるとダ・ヴィンチちゃんの切迫した声が響いた。
そして突然英霊召喚が始まる。
特異点のサーヴァント召喚!?
全員が身構えたところに現れたのは小さな狐。きつね?
狐というよりマスコットのような惚けた顔をしている。
???
その場にいた職員全員の頭にはてなマークが飛び交ったのは幻ではないと思う。
「お初にお目にかかります。私はこんのすけ。貴女は我が本丸の審神者に選ばれました」
私に向かってきつねが話しかけてきた。
「は?」
この狐はどの英霊なんだろう…狐…狐…。
まさか、あの陰陽師の…!!!!!
「わたしは2205年の政府から派遣されたナビゲーターのこんのすけです」
ナビゲーター…
いや、
「2205年!!??」
世界は2017年で空白になってしまったのに、その先から来たの!?
「マスターくん、それが小特異点なんだよ、きっと」
そっか…そうだよね…
宇宙とかにも行けちゃうもんね、特異点て。
「ご理解頂けたようなので話を先に進めますね」
いやいや、理解はしてないけど、まぁわかった。
「さて、あなたと縁が強い刀剣男士が初期刀として顕現します」
そういうとこんのすけの目の前でまた英霊召喚の光が溢れ出す。
「おおー、げにまっこと明るいところじゃのぉ」
聞き慣れた土佐弁の一声を上げた青年、どこかで見たような風貌。
「わしは陸奥守吉行。坂本龍馬の刀じゃ」
かた、な?
「審神者は刀剣を付喪神として顕現させる力があるのです。
政府は彼らを刀剣男士と呼び審神者と本丸を守り歴史を正しく導くのが役目です」
んー……なるほど?
「つまり彼らをレイシフトさせて正しい歴史を守れってことか」
さすがダ・ヴィンチちゃん、理解が早い。
「でもそうなると誰が聖杯を使って小特異点を作ったんだろう?」
「まぁいつものことだろう。現地にレイシフトすればおのずと分かる。いや私はここカルデアで指揮をとるので行かんがね」
新所長がそういうとこんのすけは
「このカルデアを本丸とします」
と宣言した。
「ちょっと待ちたまえ!ここはノウム・カルデア。『本丸』ではないぞ!なんだ!?乗っ取りか!?敵か?敵なのか!!??」
大声をあげた新所長の声で我に返ったけど、ダ・ヴィンチちゃんもホームズも一瞬スルーしかけたよね!?!?
「しかし、私がこちらに来たということはここが本丸では?」
こんのすけも困惑気味にそういうけれどたしかにカルデアなのか本丸なのか問題が発生するのは間違いない。
「先輩…先輩。この感じ、ぐだぐだな予感がします」
えーーー、やっぱりマシュもそう思う?
じゃぁノッブがまた何かやらかしたのかぁ〜。
「あれ?なんだか懐かしい雰囲気がするけど、今日は何の集まりなのかな?」
管制官に入ってきたのは肩におりょうさんを乗せた坂本龍馬さんだった。
「あ!!!あぁ!!!!龍馬じゃないがか!!!!」
そこにいち早く反応したのは先ほど『顕現』した刀剣男士の陸奥守さん。
「なんだ?龍馬に似た匂いがする」
坂本さんの肩にいたおりょうさんがするりと飛び出し陸奥守さんの匂いを嗅ぎ始めた。
「なんじゃぁ?おんし蛇みたいじゃのう」
「あはは、彼女は『おりょう』さん。蛇、ではないかな」
やんわりと訂正する坂本さんに対して
「何?おりょうゆうたら龍馬の嫁さんじゃないがが。ここでは「ヒト」じゃないんかの。
まぁ刀が「ヒト」の形になっちょるワシがおるんじゃ、そんなこともあるか」
「えっと、マスター。彼は?」
妙に納得している陸奥守さんをようやく「誰?」と認識したらしく坂本さんが遠慮がちに聞いてきた。
「陸奥守吉行さんだそうです。坂本さんの刀の」
「えーーと、陸奥守吉行。そ…っか、英霊が側面により同一人物が多数存在するカルデアだし、そんなこともあるのか。おりょうさんが僕に似ているというのなら間違いないだろうしね」
二人とも理解が早すぎませんか??
「君たちもだからね!この状況に馴染むの早すぎだからね!!私は頭が痛い。ぐだぐだな予感しかしない」
*****
こんのすけが来てから三日が過ぎた。
刀剣男士の陸奥守さんとレイシフトして歴史改変?を修正するつもりだったけどどうやらこの特異点ではマスターや英霊は同行できないようで刀剣男士のみがレイシフトする仕組みになっているらしい。
ならば刀剣男士が一人っていうのも大変なのでこんのすけのナビゲートのもと刀剣男士の召喚を試みた。
その結果、小夜左文字くん、今剣ちゃん、へし切り長谷部さん、加州清光くん、乱藤四郎ちゃんの召喚に成功。
うーーん、勉強不足でごめん。刀の名前はわかんないなー。
なーんて思ってたけど、初めましての挨拶の後に日本の刀剣が顕現するってことで和英霊が野次馬してたお陰で彼らの元の持ち主に会えたみたい。
「わあ!!よしつねさま!!ぼくよしつねさまのふところがたなのいまのつるぎです」
「なっっ!!!!信長公!!!!
????女子の姿なのは何故!?!?いやしかしこの方が信長公だと分かってしまうっっっ」
「えー!もしかして沖田総司??なんだよ俺より可愛いじゃん」
ふむふむ、あの三振りの所有者は分かった。
あとは
「何何〜!!可愛い!!そのふりふりのスカート可愛いね!」
更に野次馬の野次馬をしていたアストルフォが乱くんに抱きつこうとしていたところだ。
「乱くん、彼はアストルフォ。見ての通りの」
「おにーさんも可愛い服好きなの!?やったー!」
あ、問題ないみたい。
「きみはひなたぼっこはすきかい?」
「……、すき」
「よかった、いっしょにひなたぼっこをしないかしら?」
「……うん」
小夜ちゃんもボイジャーくんのおかげて打ち解けはじめたみたい。最初は復讐なんて言うからどうしようかと思ったけど。
刀剣男士のレイシフトは敵のドロップアイテムで刀剣が手に入るらしく、彼らはそれを持ち帰り審神者の私が男士を顕現させるという流れになっているためあっという間に刀剣男士の数は増えていった。
さらに戦国時代や幕末ゆかりの刀が多いせいかノッブと新撰組の部屋は入り浸る刀剣男士で溢れかえっていた。
「これは……流石に増えすぎだ……」
ダ・ヴィンチちゃんとキッチン担当のエミヤが頭を抱え込んでる。
「英霊と同じく食事に意味はないとはいえ、食べさせないわけにもいかないし。それに飲酒の量が多すぎる」
「だから!『本丸』をよそにしなさいとあれだけ言ったのだ!」
新所長がここぞとばかり捲し立てた。
「そうですね……時の政府に相談してみます。本来は審神者は本丸に常駐いていただきたいのですが……」
こんのすけが空中にホログラムのような画面を開き何やらぶつぶつと操作している。
「審神者…彼女のことか。ならん!ならんぞ!カルデアにいつ何が起こるとも限らん!刀剣男士どものレイシフトにマスターや英霊が同行しない以上、彼女はカルデアにいてもらう」
「ふっふっふ、そんな時のためにこの天才ダ・ヴィンチちゃんは新たな礼装を開発したよ!名付けて『ダ・ヴィンチちゃん特製審神者くん1号』さ。
着想はハロウィンの時のかぼちゃマスターくん人形からだ。」
ダ・ヴィンチちゃんが持って来たのは一枚の見慣れない礼装だ。
中にはかぼちゃだった私の絵が書いてあるが大きな文字で『審神者』と書かれている。
「この礼装をマスターくんの令呪一画を使って顕現させると、君の分身ができる。
しかも〜」
礼装を手に令呪を行使してみる。すると礼装が輝き始め形が変形していった。
現れたのは……
「じゃーん!ちゃんと人型になるよ!流石私!天才!!
今回は『本丸』でも活動しなくちゃいけないのでかぼちゃの時のような動けない人形では困ると思ってね。しかも刀剣男士って刀とはいえみんな男でしょう?問題があってはいけないのでマスターくんを男の子に変換してみました!
審神者マスターへの魔力の供給はカルデアからマスター本人を通じて行うし、お互いの記憶は夢を通して共通できるようにしてある。
ただし休むという行動も立派な仕事だから、あくまで夢という形で安眠は妨害出来ないようにプログラムしてあるから、定期的な記憶の交換を行なった方がいいかな。」
『ダ・ヴィンチちゃん!天才!!』
二人の私が同時に同じ言葉を発した。
自分でも違和感のある男の私。
外見は黒髪の短髪で私よりも少し背が高い。
なんとなくだけどイシュタルの面影に似ている気がする。血縁とかないから気のせいだろうけど。
英霊のみんなは男の子私に同様きてたけど、刀剣男士のみんなは顕現してからまだ日が浅いせいかすぐに馴染んだ。
ホームズとダ・ヴィンチちゃんのおかげでシュミレーターの中に彼らの本丸をセッティングしてもらえた。時の政府とかいうのとやりとりをしていたらしい。
「本来の本丸同様、本丸から直接レイシフトすることが可能になったよ。
それに伴って、こちらからもあちらからもマスターも含めしばらくはカルデアと本丸の行き来は私かゴルドルフくんの許可がないと禁止とします。
時間遡行群による本丸の攻撃というのもあり得なくはないらしくて、事が起きた際に容易にカルデア内にはいってこられては困るからね。
ま、お互いの内情は私とこんのすけが行うので危険が伴う際には対処できるようにしてある。」