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    yuewokun

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    ##萩景
    ##sc16受けお題

    sc16受「アイドル」萩景「弊教場におけるアイドルは? 五秒以内に答えよ」
    「諸伏景光」
    「ひろくゆ」
    「ひろみっちゃん」

     返ってきた答えに男は神妙にに頷いた。
     場所は警視庁警察学校のとある寮室。消灯時間をとうに過ぎたというのに規則を破ってまでこっそりと集まった警察官の卵たる男たちが話しているのは、一人の人物についてだった。
     その名を諸伏景光。彼らと同じく今年の春に警察学校へ入校した同期のひとりだ。品行方正、成績優秀は言わずもがなだが、その見目においてもなかなか優秀な男だった。
     彼らの同期には有名が五人組がいる。主席で入校した降谷、機械修理などの実技に特化した松田、洞察力に優れた萩原、リーダシップや正義感を備えた班長たるべき要素を全てかねそなえた伊達、そして先ほど名前の挙がった諸伏。
     彼らは優秀さと見目の良さとで教場内外で有名だ。

     その中で諸伏景光という男は、優秀ではあるのだがいまいちひとりではそこまで目立たない人間だった。というのも、彼は特別秀でたものが無いのだ。よく言えばオールマイティー、悪く言うと器用貧乏だった。
     だがしかし。彼は一部の熱狂的なファンを呼び寄せていた。


    「今日の諸伏すごかった……みたか? ご飯少なめだったぞ? おくちもちっちゃい……きゃわだ」
    「やっぱ女の子なんじゃ」
    「馬鹿言え! 風呂で何度も確認しただろうが」
    「でも口に手ェあてて笑うのはもう育ちのいいお嬢様だろ」
    「俺は今朝目が合ったら微笑まれた」
    「うっそだろおまえ録画したか?」
    「できるわけねぇだろ! 隣に降谷がいたんだぞ」
     諸伏景光は涼し気な目元とは裏腹に、あまりにも柔らかく可愛らしい男だった。口調はマシュマロがそのまま言語を喋っているようなやわらかさと甘さで、表情は花のように艶やかでそして何処か幼い。
     その魅力に気付いてしまった一部の同期たちはこうして夜な夜な彼の魅力を語り、そして恍惚の表情で彼へ思いを馳せるのだ。

     ふと一人が、身を乗り出した。
     車座になって話し込んでいた男たちはその男を見やって、話を促した。
    「あのさ、俺は昨日ホームランバーを食べてるひろくんをみた……」
    「!」
    「おま、おまえはそれは……ちゃんと、撮影したか?」
    「それが、となりにあいつがいて」
    「まさか」
    「また降谷か?」
     諸伏には優秀な幼馴染がいる。主席で入校した降谷零だ。浅黒い肌と金に輝く髪色で度々誤解を受けるが彼はまごうことなき根っからの日本男児だった。悪を許さず、まっすぐに生きる男で少々融通がきかない。ついでに幼馴染に対して少々過保護な面があった。

     彼は諸伏が邪な視線を受けているとわかると真っ先に飛んでくる男だった。
     それを思い出した男たちはゴクリと喉を鳴らす。
     すっ飛んできたときの降谷はそれはそれは世にも恐ろしい形相をしているからだ。
     だが、話し出した男は静かに首を横に振った。
    「萩原だ」
    「萩原?」
     少々意外な男の名前に他の男が首を傾げた。
     萩原は例の五人の中でも、女性好きで有名で、物腰も柔らかい。男が男に懸想することにも偏見がないと大声で口にする男だ。そんな男が隣にいたことでなにかあるだろうかと一人が聞き返せば、男はゆっくりと首肯する。
    「そう、萩原だ。アイツが隣にいて、それで」
     男は一度口を噤んで一呼吸置いたあと、やっと再度口を開いた。
    「諸伏の手に落ちてきたアイスを舐めとってた」
    「ヴァッ!?」
    「ころせ!」
    「おれたちのアイドルになんてことを!!」
    「あいつ女が好きだったんじゃないのか!? いやまあ俺たちのひろくゆは確かに女の子にも劣らない可愛さなんだがな!?」

     ダン、とベッドを叩く音が響いた。その音でその場にいた男たちは冷静さを取り戻す。
     いまはすでに消灯時間を過ぎている。騒ぎすぎてはいけない。熱くなりすぎてはいけない。

     とはいえ、これは大問題だった。幼馴染の降谷であればまだぎりぎり距離感のおかしい幼馴染で納得したかもしれないが萩原はダメだ。全員は同じ結論に至って同時に首を横に振った。
    「萩原は、だめだろ」
    「俺達の諸伏景光が幸せになれない絶対泣く」
    「だってあのプレイボーイと名高い萩原だぞ」
    「どうやって離す?」
    「ていうか舐め取られたときのひろみっちゃんの様子ってどうだったんだ」

     なんとか抑えた声音でひとりが訪ねた。言い出しっぺの男は「それが、」と言い淀んだ。顔を赤くして、青くして、最終的にずっしりと重い石を背負わされたような顔になる。掠れた声で彼はやっと言葉を発した。
    「……照れてた。顔を真っ赤にしてた。可愛かった。でも、でも、そうだ。そうだった」
     頭を抱え、その場に踞る。
    「舐め取られたところに自分でも口をつけてた」
    「ハッ!?」
    「それ、それは!!」
    「スキャンダルです!!」
    「俺たちのアイドルがあ!!」

     彼らがその後も無事にアイドルを追い続けられたのかを知る者はいない。
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