Hold hands 妙な間柄だと、伊月はナッシュとの関係を思っていた。
二人きりで飲みに行ったり食事をしたり、あまつさえ体を重ねもしているけれど、恋人というわけではない。しいて言うならセックスフレンドだろうか。けれど体だけと言い切るには、セックス抜きでの交流のほうが多い。
――いったいこの男はどういう認識でいるのか。
伊月はアルコールの支配下にある思考で、前を歩くナッシュの背中を見つめる。十月下旬の夜風は真昼よりも格段に冷たいが、酒精にまとわりつかれた頭を平静にはしてくれなかった。
きっとこの後もナッシュの部屋で一晩を共にすることになるのだろう。そのまま同じベッドで眠りについて、目が覚めると抱き枕さながらにホールドされていて驚くことになるのだ。
1920