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    Magatu_FF14

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    Magatu_FF14

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    完成〜!!!

    美しい彼と美しいその友人フィリルくんとのお話
    「こんにちは。お邪魔します」

    涼やかな声が美しいドレスを纏ったトルソーや艶のある仕切り扉の試着室、丁寧に並べられたアクセサリーが置かれている店内に響くと数秒後に室内の奥の方から扉越しに返事が聞こえた。

    「申し訳ありません、少々お待ち頂けますでしょうか」

    派手な音は聞こえてこないものの何やら慌ただしそうな空気を感じた美しい声の主は大人しく待つことにした。

    手持ち無沙汰で店内を見渡していると店に入ってすぐにぐるりと見ただけではわからなかったインテリアや装飾品の飾り方にこだわりが見えるのに気が付いた。

    と、奥の扉の方から華やかな香りを運んだ風が流れてきた。

    「大変失礼致しました。御予約のラウィーニアソン様でよろしかったでしょうか」

    少し長いミルクティ色の髪を揺らし歩いて来た店主らしき人物が女性的な見た目に反した低い声で問いかけてくる。

    「はい。フォーマルな場に着ていく事の出来る服の仕立てを予約させて頂いたフィリル・ラウィーニアソンです。」

    その返事に一つ頷くと深くお辞儀をしながら店主が出てきた扉とはまた違う部屋へと案内をする。

    「本日はここ、Aurora fibraをお選び頂きありがとうございます。お客様に必ずご満足頂けるものを仕立て上げることをお約束させていただきます」

    にっこりと微笑む店主は先程よりも雰囲気が柔らかいように見える。

    「よろしくお願い致します。」

    と涼やかな声も返すと扉がゆっくりと閉じられた。









    通された部屋には沢山の生地が収まった引き出しやビーズの詰められたケースが並ぶ。
    雑多に見えるようで一定の法則性があるようだ。

    1つのトルソーにいくつかの染めが美しいレースがかけられているかと思えばそれは沢山の種類の糸で編まれた1つの生地であったりと驚いた。

    「凄いですね…」

    「お客様をお通し出来る程には整理しているのですが…雑多でお恥ずかしい限りです」

    「そんなことはありません。とても洗練されたアトリエだと思いました。」


    それを聞くと少し恥ずかしそうに眉を下げた店主はありがとうございます、と会釈した。


    「フォーマルな場に着用できる服を、との事でしたが具体的にはどのような場所に着ていくかはお決まりですか?」

    「どのような…ですか?」

    「はい。男性用の礼装にはいくつかありまして正礼装ならば3種類、セミフォーマルと呼ばれる準礼装もございます。それぞれ用途や使用出来る場所が違いますので…」


    フォーマルな服、と言っても沢山ある様で一着はそういう服を持っておいた方がいいらしい、と聞いただけなので迷ってしまう。

    素直にフォーマルな服を仕立てるに至った理由を話した方がいいだろうと口を開いた。

    「実は、」








    「そういう事でしたか。」

    話を聞き納得した様子の店主はそういうことでしたら、と2つ提案をしてくれた。

    1つはセミフォーマルの昼夜共通で使うことの出来るブラックスーツ、2つ目はフォーマルの燕尾服、またはタキシードのどちらかという事だった。

    ブラックスーツは余程のことが無い限りどんな場であっても失礼に当たることは少ない上に昼夜どちらでも使えるためオススメだと言う。

    2つ目のどちらかのフォーマルは使われる場がほぼ夜に限られる事とホワイトタイやブラックタイなど指定される場合には持っていない方を指定された時が大変だということらしい。


    大人しく1つ目にオススメされたブラックスーツを仕立ててもらう事にするとテーブルへ誘われた。

    椅子を引かれ大人しく座ると向かいに同じく座った店主が

    「紅茶はいかがでしょう?」

    と琥珀色の美しい紅茶が出された。

    「セイロンのキャンディです。癖がないので飲みやすいかと」

    微笑んだ店主に勧められるまま紅茶といつの間にやらテーブルに置かれたティーカップと揃いの皿には食欲をそそるバニラの香りのクッキーが。口に含むと苦過ぎない紅茶とクッキーの甘みが心地よく鼻を抜けていった。









    紅茶とクッキーを頂きつつ店主からの質問に答えていく。
    好みや自分の体の隠したいコンプレックス、予算などを聞かれたが残念ながら服などにはあまり好みらしい好みが無く黙り込んでしまうこともあったがそれにも嫌な顔ひとつせずに答えやすいように質問の仕方を変えたりしてくれた。


    いつの間にかこういった物が好ましい、と自分から言えるほどになっていたのは本当に驚いた。

    それから採寸をする事になったが測った数値を見る度に満足そうな頷きや声が聞こえてくるのが気になった。
    つい聞いてしまうとどうやら理想的な体型をしているのだそう。

    「スーツと言えど体型により似合う似合わないがあることもございますから」

    と楽しそうに話す店主は本当に服を作るのが好きなのだろう。
    採寸をされているだけなのにこちらもなぜだか楽しくなってくるように思えた。


    店主が型紙のようなものにメモや数字を書き込むと採寸部屋から店までもどる。

    値段といつくらいまでに出来上がるのか、などの説明を受けたあと受け取り用の控えを渡され出口まで案内される。


    「この度はオーダーメイド商品のご購入誠に有難うございました。必ずご想像以上の着心地のものを仕立てあげます。」

    「こちらこそありがとうございました。あまり外見に気を使うことは無かったのですが、店主さんのお話のおかげでなんだか楽しみになりました。」

    「それは…とても光栄です。お引き取りに来ていただけるのをお待ちしております」











    「懐かしく思えてくるね」

    「ちょっとフィリル動かないで」

    「おっ、と ごめんね」


    身体を動かしてしまったフィリルに鋭い声で注意をするのはあのブラックスーツの仕立てを頼んだ裁縫師のアウロラである。

    採寸用のメジャーを首にかけ新しく仕立てあげた燕尾服の袖口などを確認している。
    急な依頼にも関わらず了承してくれた事に感謝しつつ親しくなったが故の容赦の無い鋭い言葉遣いに苦笑した。

    「アウロラはあの燕尾服を着ていくんだよね」

    「私は行かないよ」

    「え」

    「じゃあの燕尾服は?」

    「私じゃ入らない」


    少し笑いながら言われた言葉。確かにそうかもしれないがならば何故自分のスーツと同じく装飾や刺繍の入った燕尾服が…?
    聞こうと思った時にはそのスーツは箱に詰められ美しい包装紙に包まれて自分の近くのテーブルに置かれていた。

    「アウロラ、」

    「弟さんへのプレゼント」

    「え」

    「ほら早く持って行きなよ」


    燕尾服の入った箱を持たされたままグイグイと背中を押され店の出入口まで辿り着く。
    アウロラが扉を開けるとそこには華やかな装飾の施されたチョコボキャリッジがあった。

    「じゃ、行ってらっしゃい」

    「待って、燕尾服の代金が…」


    どこにそんな力があるのか強引にキャリッジの座席に押し込まれ自分の言葉は聞こえていませんと言わんばかりの顔で走り出すキャリッジを見送るアウロラ。


    着ている燕尾服のポケットにはいついつ入れたのかメッセージカードが入っていた。

    𓈒𓂂𓂃◌𓈒𓐍

    弟さんはキャリッジが1度止まるホテルの部屋にいるよ。割と早く付くから先に連絡して着替えの用意をさせておきなさい

    美しい貴方の美しい友人より

    𓈒𓂂𓂃◌𓈒𓐍

    カードの端にはアウロラお気に入りのリップで書かれたカードの差出人とキスマークが付いていた。


    「街で持て囃されるどの美人より美しくて素敵な友人だね、君は」

    キャリッジの外の景色を見れば既に周辺で1番大きなホテルの見える道に差し掛かっていた。

    アウロラの言う通り早く弟に連絡してあげないと。
    誰が見ても一瞬で恋に落ちてしまいそうな笑顔を浮かべたフィリルは早速大切な弟へ連絡をすることにしたのだった。
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