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    whatalife94

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    すけべ下着王〜‼︎‼︎と思ったのに何故か全然違うところに着地した。すけべ未満の都承旨王(現代AU)。

    ふたたびの紅「う〜〜ん………」

     スマホを片手にハソンは「この中だったら水色がいい」と言ったけど、僕は「そんなの似合わないだろ、赤がいい」と頑なだった。夕食後に二人揃って部屋に閉じこもり、某ネット通販サイトと睨み合いをすること一時間。なかなか意見が揃わない。

    「もういい加減に決めよう」
    「結局そうやって俺の意見聞かないじゃん!」
    「参考にするって言っただけだ」

     双子の弟は爽やかなパステルカラーが似合うだろうけど、自分にはもう少し強い色が似合うと思う。例えば黒とか、紫とか。同じ顔なのに不思議だ。というわけで提案は却下。

    「もういいよ、好きなの買いなよ。どうせ俺が着るわけじゃないし」
    「いや、お前のぶんも買ってやる」
    「え………なんで」
    「ムヨンに見せれば喜ぶだろ」
    「い、いやぁ………どうかな……?」

     問答無用で商品をカートの中に放り込んで決済画面まで進むと、ほんのり赤い顔をした弟がおずおずと上目遣いで覗き込んできた。ほんとに買うの?着たら俺にも見せてくれる?なんて、馬鹿馬鹿しい。なにが悲しくて、自分と同じ顔の人間がそんなものを着ている姿を見たいと思うんだ。

    「ほら、俺が着たときのイメージ?」
    「………ばか」
    「だって自分じゃ恥ずかしいし」
    「見せる方が恥ずかしいだろ!」
    「いいじゃん〜!見せてよ!」
    「絶対見せない」

     そうして二日後の夕方に届いた小さな小包は、時間指定にしたので誰にバレるでもなく無事に受け取ることができた。こっそりとバイト中で不在にしているハソンのベッドにビニールに入ったままのそれを置いて、自分の分を取り出すと指で摘んで眺めてみる。思った以上に恥ずかしい。

    「……はぁ…………」

     商品は届いた。袋から出してタグも切った。最後に必要なのは、今夜これを身につける勇気を出すことと、ハクサンの帰宅が日付を跨がないこと。

     帰宅したハソンが例のものを見つけてしばらく大騒ぎしたけど、「じゃあお前も着て見せろ」と言ったらピタリと黙ったので良しとする。
     敢えて一番最後にシャワーを浴びて、使い終わったドライヤーのコンセントを束ねていた時だ。図ったようなタイミングで聞こえた「帰りました」の声に心臓が跳ねる。チラリと視線を落とした先には、新品のそれと勝手に拝借したハクサンのTシャツ。唾を飲み込み、この数時間何度もそうしたようにダメ押しで言い聞かせた。

    (大丈夫、これくらいなんてことない……普通の恋人同士だってやってるはずだ)

     震える指で真っ赤な紐を持ち上げて頭から被る。肌を滑るつるりとした質感は馴染みが薄く、脇腹で結んだリボンの尾が太ももの付け根あたりをくすぐった。チラリと鏡を盗み見て、反射的に顔を逸らす。急激に襲ってきたあまりの恥ずかしさに、急いでシャツを纏った。僕には少し大きいサイズで、それでも裾からはチラチラと伸びた紐やらレースの裾が覗いている。

    「もう、いいかな」

     これ以上はどうしようもないと覚悟を決めてバスルームの扉を開く。裸足で向かう先は彼の寝室だ。



    「………おかえり」

     扉を開けて、そこからひょいと顔だけを覗かせる。綺麗に整った寝室で、部屋の主はシャワーを浴びる支度をしているところだった。僕の声にくるりと振り返って、タオル片手に笑みを見せる。

    「ああ、起きていたのですか」
    「まだ十一時過ぎだぞ」
    「……本当ですね。最近帰りが遅くて、すっかりそれに慣れてしまった」

     ところで。とハクサンが不思議そうな顔で首を傾げた。続く言葉は予想の範囲内。

    「そんなところでなにをしているのですか。部屋に入っては?」
    「…………いや、その」
    「用事があるのではないのですか」
    「あるにはあるけど」

     しばらく似たような応答を繰り返す。しかしそのうちに、しびれを切らした僕が良い加減にしようと腹を括って、そろそろと部屋に入ると後手に扉を閉めた。
     全身が露わになった瞬間、ハクサンが目を丸くする。それもそうだろう。だって今、僕は彼のTシャツ一枚だけを纏っているように見えるだろうから。痛いほどに露骨な視線がつま先を経て剥き出しのふくらはぎから腿にかけて流れていく。たまらずに膝頭を擦り寄せた。

    「あの、王?あなた何をしているのですか、パジャマのズボンはどうしたのですか、というか風邪ひきますよ」
    「おい。そんな目で見ておきながら『風邪ひきますよ』しか言うことないのか」
    「いや、正直に申し上げて状況についていけておりません。第一、それは私のシャツでは?」
    「うるさいな!」

     今更に視線を右往左往させるハクサンの元へ飛んでいって、恥を忍び腕を掴んでベッドに誘う。彼のワイシャツの袖を摘む指先がほんの少し震えていて、我ながら根深いトラウマに嫌気が差す瞬間だ。ゾッとするような感覚を振り切って舌を舐める。落ち着け。

    「だからその、つまり……最近してなかっただろ」
    「それは学会前で忙しくて、私の帰りが遅かったからですよ。あなたのせいじゃないですし、もうひと段落しましたから」
    「うん、だから……」

     きちんと整えられたベッドは、前に横たわった時からシーツが変わっている。明日はハクサンにとって久しぶりの休みで、お互いにこういうことをしても問題はない夜のはずだ。それなのに「拒否されたらどうしよう」とか、「自分のしたことを気に入ってもらえなかったらどうしたらいい」だとか、不安感は次々に襲いかかる。
     それでも全てに蓋をしてハクサンを押し倒し、その腰に跨った。怪訝な顔で見上げてくる男の視線を振り切って、ゆっくりとTシャツの裾をたくし上げる。薄暗闇に真っ赤な布地が艶々と浮かび上がって、見下ろした男の目が驚きに見開かれていくのがよく見えた。

    「…………どう?」
    「どうって、あなた、どこでこんなもの」

     胸元まで捲り上げたシャツをぎゅっと握りしめて自分の身体を眺める。
     所謂ベビードールはキャミソールの形をしているので、男の自分でも特に肩幅や腕周りのゆとりを気にせず着ることができた。胸元と裾にあしらわれたレースも可愛らしく、ぱっくり割れた脇腹は細い紐を編んだ繊細なデザインになっている。僕自身もひと目見て「可愛いな」と思った部分だ。

    「ネットで買った。ハソンと色違い」
    「ハッ………?あ、そう、ですか、はぁ……色違い……」
    「うん、あいつは水色にした」

     目を白黒させるハクサンの手首を取って、そのまま自分の腰に回すように促す。初めは恐々と慣れない手触りの布を弄んでいたが、次第にその手は剥き出しの太ももへと伸ばされた。シルクの下に指先が潜って足の付け根に触れられた瞬間、ぴくりと身体が震える。

    「んっ、」
    「うん?ちょっと待ってください王、あなたちゃんと下履いてますか?」
    「………履いてない。だって女性ものだったんだ、無理だろ」
    「だからって、何も履かずに着ることないでしょう」
    「っ、そ、そう言いながら、触るくせに」
    「……まぁ、それは」
     
     僕よりもひとまわり大きい手のひらが、いよいよしっかりと腰を掴み、親指でぐりぐりと鼠蹊部を摩る。強制的に肺を押されるみたいに意図しない喘ぎ声が飛び出して、背中が弓形になった。思わず力の抜けた手のひらからシャツの裾が落ちて、たちまちに身体をすっぽりと覆う。

    「王。せっかく綺麗に着ていただいたのに隠れてしまいましたよ」
    「ぁ、んっ、おまえの、せ………」
    「脱がせても?」
    「…………ん」

     こくりと小さく首を縦に振ると、ハクサンがゆっくりと上体を起こした。思わず仰け反りそうになったところで腰を抱かれ、至近距離で見つめ合う。衝撃に意図せず涙が溢れて、僅かに肩が震えるのをどうしてもコントロールできない。

    「ああ、もう泣かないで。今更恥ずかしいんですか」
    「………ちがう」
    「無理しなくていいんですよ」
    「だから、違う!」

     よしよしと僕の頭を撫でて訳知り顔で頷く男に耐えきれず、拳で何度もその胸を叩いた。今も昔もハクサンは何もわかっちゃいない。僕がどんな思いでいるかなんて。分かっていないし知らないから、あんなことができたんだ。そしていまだに僕を「王」と呼ぶ。

    「もういいから脱がせろ」
    「そうおっしゃるなら」

     僕の攻撃にダメージなどひとつも受けてないみたいで、苦笑を浮かべたハクサンの手がシャツの両脇を掴んだ。するりと頭から抜かれた拍子に、華奢な肩紐が二の腕に落ちて右の胸元があらわになる。自分の服をベッドの下に落とした彼は僕の身体をじっくりと眺めると、嬉しそうに微笑んだ。

    「それにしても不思議ですね。あなたとハソンは同じ顔をしているのに、似合う色もこんなに違う」
    「ッ、」
    「本当に綺麗ですよ。あなたには紅色がよくお似合いだ」
    「…………あ、りがとう」

     なんの悪意もない言葉に潜む忘れられない過去に心臓が冷える。きっと彼は覚えていない。初めてあの赤を纏った時にも同じ言葉をかけてくれたことを。

     それ以上を思い出しては惨めになりたくなくて、僕は過去を振り切るようにハクサンの唇に噛みついた。乾いた大きな手のひらが布越しに素肌を掻き乱し、密着した下半身に熱がこもり始める。先走りの水気を吸ってじわりと濡れた布地が赤黒く染まって、僕は何故かその色に安堵した。


    (続かない)
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