風呂風呂 ロナ半
ギルドの慰労会が吸対の慰安旅行と被った日。結局どんちゃん騒ぎになって、気付けば宴会場で雑魚寝をしていた。
まだ周りは騒がしい。酒に強い奴らは飲み足りないのか、酒を追加しているようだった。まだ飲むのかよ。
ロナルドは宴会場の壁の時計を見た。まだ午前2時。風呂はまだ開いていたはずだ。
眠気覚ましにと、ロナルドは露天風呂のある大浴場へと向かった。
脱衣場に知った顔がいた。
「半田?お前も風呂?」
「なんだ、ロナルド。貴様が来なければ貸し切りだったのに。」
「え?俺ら二人しかいないの?」
「ロッカーの鍵を見ろ。ここ以外は鍵が刺さったままだろう。」
「マジかよ!やったじゃん!俺一番乗りしたい!」
「フン、貴様には負けん!」
そう言って、あっという間に裸になった二人は露天風呂の入口へと走った。
「俺が一番乗りだな、ロナルドォ!」
「は?俺だろ?てか、風呂入ろうぜ。」
「待て、身体をちゃんと洗え!貴様の汚ない汗が湯に混ざる。」
「分かってるって。てか、お前潔癖かよ。」
そう言って、身体を洗う。半田と風呂に入ったのは、高校の修学旅行と今日の温泉位だ。半田の裸なんて見慣れているのに、こういう場は少し緊張する。
横で身体を洗う半田をチラリと見る。白い肌が綺麗だ。あの肌が汗ばんで、ピンク色に染まるのを知っている。首筋にキスをして跡を残すななんて怒られて。ベッドの中の半田はいつもより大人しくて、可愛い。
マズイ。風呂に入れなくなる。
ロナルドは、シャワーの水温を下げて水を浴びた。
早く落ち着かせねぇと。素数なんて分かんねぇから九九でも唱えるか。
そんな調子だから、露天風呂に浸かるのが遅くなってしまった。
「今日は疲れたな。」
「貴様は酔っ払って寝ていただけだろう!」
「つーか、半田お前も寝てただろ。」
しかも半裸で。後輩だというサギョウに背中に虫を並べるように乗せられて上機嫌で眠っていた癖に。
宴会場でのことを思い出して、ロナルドはだんだん腹が立ってきた。
半田、お前他の男に虫乗せられてんじゃねーよ。虫?なんかカッコつかねぇ。てか、サギョウ君特殊な性癖してんな。やっぱり吸対ってストレスがヤバいんかな。半田が先輩って嫌だな。四六時中半田に振り回されてんのか。なんだかかわいそうになってきた。
「半田、お前さ…その、サギョウ君には優しくしてやれよ。」
「なんだと?!サギョウには優しくしているぞ!弁当を作ってやったり、誕生日を祝ったりな。第一貴様に後輩育成のことでガタガタ言われる筋合いなどない!」
「待て、お前、サギョウ君に弁当を作ってんの??てか、俺の誕生日も祝えよ!」
「そうだが?それに貴様の誕生日はいつも祝ってやっているだろうが!」
「セロリはいらねえんだよ!普通に祝えよ!その、俺ら付き合ってんだしだな…え、エッチなプレゼントとかくれよ、なあ!」
「何を言っているんだ貴様は!!」
バシャリと湯が飛んで来る。それを避けると、半田は舌打ちをしてバシャバシャと湯を掛けて来た。半田はその内楽しくなって来たようで、「待て!スケベルド!」なんて言いながらもニヤリと笑っている。
このままじゃ溺れる。
びしょ濡れになった頭を振って、ロナルドは髪をかきあげた。反撃開始だ。
半田に向かって湯を掛けると、いつもの生意気な顔が前髪が下りて一気に幼くなった。
「やったな、ロナルドォ!」
「てめえが先にやったんだろ!てか、風呂位大人しく入れ、アホ!うおッ!」
「ばかめぇ!隙アリだな、ロナルドォ!」
「てめえ、俺が大人しくしてたら…待てコラ!」
バシャバシャと湯を掛け合う二人は、その後やって来たヒヨシに、苦い顔で叱られたのだった。