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    gnad_uq9

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    ドラヒナ

    #ドラヒナ
    drachina

    「今日はいい月夜だね、ジョン」
    胸に抱いたジョンもご機嫌そうに鳴いている。
    ー今日は賑やかな繁華街の方へ行こうかな。どうせ、あの五歳児もギルドで楽しんでいるだろう。久々に外食でもするかな。
    そんなことを考えながら、閑静な住宅街から裏路地を抜けて行く。
    辺りは飲食店や街灯で昼間のように明るい。
    「今日は何にしようか、ジョン。昨日は魚料理だったから、肉料理はどうかな」
    ジョンは嬉しそうに首を縦に振り、機嫌よく鼻歌を歌い始めた。
    「もう、口が肉料理の口になったって?気が早いな、ジョンは。肉料理なら…唐揚げでも作ろうか」
    ジョンの鼻歌を聴きながら、道を急いでいた時だった。
    急に辺りが暗くなった。
    街灯でも切れたのか、そう思いドラルクは上を見上げた。
    「危ない!」
    聞き覚えのある声と一緒に、よく知る人物が降って来た。
    「ヒナイチくん!?」
    受け止めようと手を広げるも、遅い。落ちてきたヒナイチの膝が顔面に当たったドラルクは、その衝撃であっという間に塵になった。

    「ドラルク?!すまない!まさかこんな所に誰か居るなんて思わなかったんだ!着地を誤ってしまって…」

    「副隊長!!」
    「ッ半田!そっちに行ったぞ!!目的地まで追い込め!私は巻き込んだ市民の対応に当たる!」
    よく通る声が辺りに響く。走り去る半田の背を見やると、ヒナイチは再生し掛けているドラルクに向き直った。

    「大丈夫か、ドラルク。怪我はないか?いや、怪我というか、もう死なせてしまったが…」
    「上から人が降って来るのに驚いて死んだから怪我なんてしていないよ、大丈夫…と言いたい所だが…。私今ヒナイチくんで下敷きになっちゃってるから、少し退いてくれるかい?」
    「す、すまない!どうりでお尻がザリザリすると思った…。」
    そうして再生して、改めてヒナイチを見る。
    いつもと違い、化粧をして余所行きのドレスを身に纏っていた。
    風でふわりとドレスの裾が靡くと、生地に施されたラメやスパンコールが月明かりに輝いて、幻想的な光景だった。

    「…ヒナイチくん、どうしたんだね?その格好は…」
    手を差し伸べてきたヒナイチの顔を見ると、恥ずかしそうに目を反らした。
    「仕事でちょっと…。こういう服は慣れなくて…やっぱり、似合わないだろうか…」
    「いや、よく似合ってるよ。空から妖精でも落ちて来たのかと思った。それほどまでに、今日の君は神秘的だ」
    手にキスをすると、ヒナイチは耳まで赤くした。いつものヒナイチの反応に、少し安心した。

    「ところで、ドレスアップして何の仕事なんだい?囮捜査ってヤツ?ドラマみたいじゃないか。私もそれやってみたいな」
    面白いものを見つけたように、ドラルクはソワソワしている。
    「残念だったな、ドラルク。もう仕事は終わった」
    珍しくスーツ姿の半田が現れた。汚れてぐしゃぐしゃになったジャケットを脱いで、砂誇りを叩いて落としている。ああしていると、上司に気に入られそうな若いサラリーマンにしか見えない。
    「半田!一市民のドラルクに捜査の話を教えてはいけないだろう!」
    「俺は仕事が終わったとしか言ってないぞ、副隊長。逃げ出したヤツは無事サギョウが仕留めた。だから、今日はこれで終わりだ」
    「報告があるだろう」
    「報告は俺がやる。副隊長は早く帰れ。後の処理は俺達でやっておく。ここ数日仮眠も取ってないだろう」
    「そんなことはない…昨日はちゃんと寝たぞ!」
    「フン、隈が酷いぞ。強がるのも程々にするんだな。あと、高いヒールで無理して生まれたての小鹿みたいに歩くのは無様だぞ」
    「ちょっと、半田先輩!VRC呼んでくれませんか?暴れて連れてくの一苦労ですよ、コイツ」
    「大分前に呼んだんだが…また、ストでも起こしてるんだろう。仕方ない。車持ってくるからサギョウはその間犯人を霊長類最強の並みの力技で抑えとけ」
    そう言って半田は何処かに無線で連絡を取る。
    「無茶言わないでくださいよ!僕半田先輩みたいにチート能力的なのないんですけど?!」
    「冗談だ。車は今モエギに頼んだからここで待つぞ。ほら、副隊長。仕事の邪魔になるから、その一般市民の吸血鬼とマジロを送ってやれ」
    「大丈夫だと言ってるのに…」
    「じゃあ、ヒナイチくん。か弱い私とジョンを保護して無事事務所まで送ってくれ。そうすれば、晩御飯と美味しいクッキーをご馳走しよう!」
    「クッキー…なら、仕方ない。この辺はオッサンアシダチョウも出るしな。無事送り届けよう」
    「流石、吸血鬼対策課の副隊長様だ。だが、ヒナイチくん。エスコートはさせてくれ。じゃないと紳士の名折れだ」
    「ふふ、相変わらず変な所だけキザだな」
    「それは、格好良いということかね?さあ、レディ。お手を」
    ヒナイチの手を取ると、ヒナイチが恥ずかしそうにはにかむ。今日は良い日だ。釣られてドラルクも口元を緩めた。
    少し歩いて、ヒナイチが何かに躓いた。ヒールが折れてしまったようだ。
    「あらら、ヒナイチくん。その靴はもう駄目だよ。ヒールがポッキリ折れてしまっている」
    「さっき、飛び降りた時に折れてしまったんだな。仕方ない、裸足で…」
    「ちょうどいい。ほら、そこに座って」
    公園のベンチにハンカチを敷いて、そこに座るように促すドラルクに、ヒナイチは大人しく従った。
    いつの間にか持っていた紙袋の中からスニーカーを取り出した。
    「君の所の隊長さんは、私よりもキザだな。シンデレラの靴だ。どうせサイズもピッタリだろう」
    「隊長が?いつの間に…」
    「半田くん達と別れる前にね。半田くんが渡してくれたんだ。手当する道具も入ってる。君は愛されてるね。少し妬いちゃう位にね」
    そう言ってヒナイチの足元に跪くと、ヒールをゆっくりと脱がせる。
    スニーカーを履かせようとして、ドラルクは声を上げた。
    「あー!やっぱり!ヒナイチ君、酷い靴ずれじゃないか!美味しそうな匂いがすると思った」
    「お、美味しそうって…」
    血の滲んだ足首を持つと口元に持っていき大きく口を開いた。
    「ちょっと待っ、ドラルク!汚いから駄目だ!」
    「…なんて、冗談だよ。さすがにこんな痛そうな傷口、触るのも可哀想だしね。」
    ペットボトルの水を傷口に掛け、傷口の周りを拭いて絆創膏を貼る。
    「はい、終わり。どうしたの、ヒナイチくん、顔が真っ赤だ」
    「…何でもない。その、ありがとう。ドラルク」
    「どういたしまして。…それにしても勿体ない。靴に吸わせる位なら私に味見させてくれたらいいのに」
    そう言って足にキスを落とすドラルクの顔面を、ヒナイチは思わず蹴り上げてしまった。
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