失う恋私は何て愚かなんだろう。
バンジが私のことを好きなわけがないのに。そんなことは分かりきっていたのに。なのに、なぜ、こんな勝手な期待をもってしまったのだろう。なぜ、勝手に傷付いているのだろう。なぜ、バンジは私のことが好きではないのだろう。なぜ。なぜ。
バンジ。白髪に黄金の虹彩。美しい彼は皆からとても頼りにされ、そして愛されている。私だって、彼のことを愛している。皆に負けないぐらい。皆よりずっとずっと。とても愛している。
しかし、よくある恋愛小説にあるように、彼もまた私のことを好き…なのではない。いや、きっと好いてはくれているのだろう。ただ、意味が違うだけで。
だから、私は勝手に変な期待を抱いてしまっていたのか?彼が私を好いてくれているから、上司として慕ってくれているから、あんな思わせ振りが言動が起きたのか?それにまんまと浮かれてしまっていたのか?
「なに?」
寝起きのか掠れた低い声が聞こえた。人工心臓が脈打っている。循環液が沸騰しそうだ。
ああ、お前は、私のことが好きじゃないんだな。…駄目だ、思考が停滞する。身体が思うように動かない。メンテナンス室に向かいたい。
「お、バンジ!やっと起きたか!」
「ちょっと何?僕寝起きなんだけど」
「今、みんなと恋バナしてたんだけど~」
「えっ、は?ちょ、なにやってんの?」
「昔、バンジが俺に教えてくれたの、覚えてる?」
「……さあ、なんのことかな」
「バンジ、指揮官のこと、好きなんだって?」
カムイの軽い声が今は錨のように重たい。腹の底に沈んでいく。
「
バンジが喋る前に部屋を出る。よかった。やっと動いた。ああ、いま、私、どんな顔をしているのだろう。情けない顔だろうか?怒りに震えた顔だろうか?嫉妬に泣き崩れそうな顔だろうか?
部屋を出て、顔を下に向けてヅカヅカ歩いている。自室に向かい真っ先にカプセルに入る。カプセルのガラスに写った顔はもはやぼやけて見えなかった。