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    Tsubame

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    Tsubame

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    去年、鰤界にお邪魔してから初の京浮らしきSS書いたやつ発掘したので。
    ゑろくも何ともないけど一応ちゅうはしてる。
    だから何って感じだけど😅

    漸く、二人きりになった。

    「お疲れ様」

    その言葉を合図に、頬に手を添えられ、彼の顔がぐっと近付く。
    以前なら、指先が触れた段階で緊張したものだったが、慣れというのは恐ろしいもので、今ではすっかり瞼を閉じ、彼を待つ態勢になっていた。
    程なく、口唇に厚みと温かみを伴った、しかしやや乾いた感触のものが押し当てられる。僅かに唇を開くと、浅く啄むように食まれた。
    が──。
    何故か京楽は、決してそれ以上深く口吻けてはこない。花街の女性には、いっそ軽率とも言えるほどに容易く、貪るような口付けを与え、それ以上に触れてもいるというのに。
    わかっている。
    花街の女性はそれが商売なのだし、京楽は上客だ。そんな事は当然といえば当然なのだろう。
    それでもどこかに、釈然としない、燻る何かが確実にあった。
    今もまた、すぐに唇を引きそうな気配がした。
    咄嗟に、此方から仕掛けた。
    離れそうになった彼の口唇に、噛みつく。
    ほんの一瞬、愕いたような気配がしたが、すぐに同じ程度の深さで彼は応じた。
    あくまで、その先へ踏み込んで来ようとしない相手に焦れて、さらに深めてやろうとした刹那、留めるかのように、大きな手で両頬を包まれた。
    続いて、唇が離される。
    互いの口唇を繋ぐ銀糸は、自分のはしたない心の現れなのだろうか。
    思いを言葉にできない代わりに、目の前の強健な体躯に双腕を回し、少しだけ力を込めた。
    ちゅ、と、今度は額に触れるだけの口付けを贈りつつ、京楽は徐に口を開いた。

    「……うん。わかってる。わかってるよ浮竹、君の言わんとする事は……」

    転瞬、弾かれたように浮竹の顔が、眸子が上げられ、その全神経は京楽に向けられる。
    ゆっくりと、丁寧に、彼は言葉を選びながら続けた。

    「僕ももっと深く触れたいし、君を抱きたい。けどね、……迂闊な事をして、君を傷付けたくないんだ。君を大切にしたい。君が、誰よりも大切だからこそ──」
    「……っ、馬鹿……!」

    突然の罵声に言葉を遮られ、京楽は目を丸くした。とりあえず口を閉ざすと、今度は浮竹の番だった。

    「俺はそんなに柔じゃないし、お前が相手なら、傷なんか付かない!……これほど長く付き合ってるのに、そんな事も解らないのか!それともお前は、そんなに自信がないのか」

    解っていた、つもりだった。自分に向けられている浮竹の視線の奥に、潜むものが何かを。

    ──ああ、そうか。それがあまりにも熱くて、大切にしたいという感情を隠れ蓑に、逃げていたのか。

    「ご免よ……」

    何に対してなのか、主語をあえて省いて。
    別れを切り出されるのかと、一瞬動揺した痩躯を、しっかりと抱きしめて。



    ねえ、もう一度口づけて、いいかい?
    今度は君を、まっすぐに受け止めてみせるから。




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