Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    melly96262246

    @melly96262246

    主にTwitterに載せていた小説を載せていきます。
    たまにitchyなものもこちらに格納する予定です。

    ※無断転載はおやめください

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ☯ 🍌 🐔 👟
    POIPOI 30

    melly96262246

    ☆quiet follow

    ラのモデルパロ🖊視点。

    ラのモデルパロ🖊視点 アイクは自身のモデルとしての在り方に、自信を持っていた。
    誰よりも服を着こなし、身のこなしだって研究を重ねて誰よりもうつくしい自信があった。
    出たいコレクションも、被写体としても申し分ないモデルであると信じている。
    そんなアイクには、密かに憧れているモデルがいた。


    闇ノシュウ。それが彼の名前だ。


    初めて彼のランウェイを見た時、アイクは衝撃を受けたのだった。まるで恋に落ちるかのような衝撃で、その日の記憶が半分消えている。
    気が付くと自室のパソコンの前で闇ノシュウが出演しているコレクションを探し出し、片っ端からお気に入り登録をしていた。
    アイクのパソコンが、闇ノシュウ関連の動画や画像で埋まるころ、自分も同じランウェイを歩きたいという欲が生まれていた。
    シュウのウォーキングは、世界を色付かせるほどの表現力と裏付けされた実力、服の魅力を最大限に引き出す知識の深さが窺える。一目見ただけで心を奪われる圧倒的な存在感が、アイクの中でいつまでも鮮やかに息づいていた。
    そして、その衝撃的な出会いから約半年後に最大の転機が訪れる。
    以前から気にはなっていたけれど、自分のスタイルとは系統が違うと諦めていたブランドのオーディションに闇ノシュウが参加すると聞いて、一も二もなくアイクも応募した。
    ポートフォリオから作り直し、同じ事務所の先輩たちに教えを請い、全力でオーディションに備えた。
    その結果、オーディションを無事に通過し、あの有名モデルヴォックス・アクマと闇ノシュウと同じグループで歩く権利を手に入れたのだった。
    書面で通知された時、アイクは言葉を発することができず、その場で泣き崩れたことは事務所でしばらく語り継がれることとなったけれど、本人は全く気にしていなかった。
    「OMG~! どうしよう、こんなことってある!?」
    正気を取り戻したアイクは、近くに居たスタッフに掴みかかり口早にそう言ったかと思えば、軽やかなステップで踊りだし、周りに困惑と恐怖を振りまいたのだ。
    この後、数日後に同じグループで歩くメンバーとの顔合わせ兼、ミーティングがあるということを告げたマネージャーが、一人でこの状態のアイクを相手しなければならないことを知っているスタッフは心の中で十字を切った。


     顔合わせ当日、アイクは興奮のせいでいつもより随分早く目を覚ました。
    まだぼんやりとした頭で、アイクは冷蔵庫からガス入りの水を取り出す。まだ薄暗い街を見ながら、今日のことを考えると自然と口角が上がった。
    シャワーを浴びてストレッチをした後、アイクは鏡で全身を映し、入念にコンディションを確認していく。
    これはアイクがモデルになってから欠かさずに行っている日課だった。
    肌の状態、ボディバランス、髪の艶、を一つ一つ確認して満足げに頷く。いつだって最高の自分でいるためにできる限りの努力をしてきたアイクは、今日も理想通りの自分でいられることに誇りを持っている。これならば、今日の顔合わせもきっとうまくいく。そんな予感に胸を高鳴らせ、アイクは出かけるための準備を始めた。


     予定時刻より幾分か早めに着いたアイクは、通されたミーティングルームでそわそわと他のメンバーを待っていた。
    ヴォックスに続いて、ミスタが部屋に入ってきたけれどあまり会話は弾まず、時折際どい発言をするヴォックスを冷めた目で見つめていた。
    「どうしたんだアイク、そんな情熱的に見つめて。私のD**kが勃ってしまうだろう?」
    「ヴォックス、君それシュウの前で言ってみなよ」
    「NO!! それはできない!!」
    どうやら噂の通り、ヴォックスはシュウのことを特別にかわいがっているらしい。
    そんなことを話していると、ドアの向こうがにわかに騒がしくなった。男の叫ぶような声と、少しの物音。
    何が起こっているのだろうか、アイクがそんな事を思っているとヴォックスが立ち上がりドアの向こうを覗き込んだ。
    「……お前たちは何をしているんだ」
    「ヴォックス、たすけて」
    ヴォックスの問いに、聞きなれない涼やかな声と、鼻を啜る音が返ってくる。
    「ルカ、シュウが困っているだろう?泣き止むんだ」
    「だって…本物、シュウが、目の前にいる~……」
    嗚咽を堪える男の言葉にアイクはガタリと音を立てて立ち上がる。前を見ればスマホを弄っていたミスタも同様に立ち上がっていて、ドアの向こうを注視していた。
    「闇ノシュウ……」
    ミスタの小さく呟かれた声には、羨望と憧れが滲んでいた。
    「ミスタ、君もシュウのファンなの?」
    「も、ってことはアンタも……?」
    しばらく見つめ合ったあと、固い握手を交わし、連絡先を交換した。
    正直シュウのファンとして、一人で抱え込む自信がなかったのだ。一緒に語り合える仲間をグループ内で見つけることができて心の中でガッツポーズをしていた。
    そして、シュウがいつ入ってくるのかとドキドキしながら入口を見つめる。
    何かを話していた声が止み、待ち焦がれた闇ノシュウがひょこりと顔を出した。その瞬間に叫び出したい衝動に駆られたけれど、それを必死で抑え込んで挨拶を交わす。
    不自然になってはいないだろうかとか、失礼はなかっただろうかとかいろんな不安が過ぎったけれど何とかその日一日を乗り越えた。
    あのあとすぐにデザイナーが来てくれたのも救いだったと思う。
    デザイナーのイマジネーションや、作品に対する思いを聞いてその真摯な姿勢がすんなりとアイクの中に入ってきてステージの完成形を垣間見たような気がした。
    そうして有意義なミーティングを終わらせた後、アイクは落ち着かない様子で視線をさ迷わせていた。しばらく一人で百面相をした後、意を決したように口を開いた。
    「ね、ねえ! もしよかったら連絡先交換しない?」
    不思議そうな表情でアイクを見返しているシュウと、よくやったとでも言いたげな三人の視線を受けてアイクは言葉を続ける。
    「同じ最終グループだし、ウォーキングを共有しておいた方がリハでもやりやすいと思うし」
    アイクの提案を肯定するようにミスタがツールは何がいいかと訊いた。ナイスアシスト!とウインクをすれば、ミスタはニッと笑って返す。
    二人の言葉に納得したように頷いていたシュウはしばらく考えた後、Discordがいいと答えた。意外にもシュウは結構なゲーマーらしい。
    憧れのモデルの意外な一面を見た後、交換されたアカウントを見ればどこかで見たことがある様なバナナのキャラクターのアイコンが表示されてた。
    「シュウ、このアイコンは一体何……?」
    「ん? バナナのキャラクターだよ」
    可愛いよね、というシュウの美的センスに少しの疑いを持ちながら笑って返しておいた。
    そんなやり取りをしていると、次第に皆の緊張はとれていき、いい雰囲気の中その日は解散することとなった。
    シュウともっと話していたかったけれど、アイクも次の仕事が控えているので、泣く泣くその場を後にした。
    どれほど後ろ髪を引かれようと、アイクはプロのモデルだったから、撮影の仕事を完璧にこなし関係者ににこやかに挨拶を済ませ帰宅する。
    帰宅して、玄関の鍵をかけた後ソファーまで走っていきダイブした。
    ゴロゴロと転がりながら交換した連絡先を眺めた。しばらくそうしているとルカから動画が送られてきた。さっそくウォーキングを練習したらしいそれはアイクの闘争心に火をつけた。
    わんわんと泣いていたルカの堂々たるウォーキングは、きっと彼に与えられた衣装によく映えるだろう。憧れのモデルと一緒に仕事ができることに浮かれていたアイクを現実に引き戻すには十分な動画だった。
    負けず嫌いで、自分の仕事に誇りを持っているアイクは早速鏡の前でポーズを決める。イメージを膨らませて、一歩を踏み出す。
    きっと最高のショーにして見せると心に決め、アイクはいろいろなウォーキングを試していった。

     アイクは、きらきらと輝くランウェイが大好きだった。
    いま舞台袖で、その大好きなステージを眺めて胸を高鳴らせている。
    「準備お願いします」
    スタッフに促され、定位置に着く。
    アイクに割り当てられたのは夏の空に浮かぶ入道雲の白い衣装。アイクらしい、まろい白色のステンカラーコート、ブランドのロゴが入ったシャツ、細いけれどしっかりと鍛えられた脚に映えるハーフパンツ。
    軽やかな足取りで、体重を感じさせないそのウォーキングはからりと晴れた地中海の夏を思わせる。観客たちの視線を独り占めして、晴れやかな表情でランウェイを歩き切ったアイクはわくわくとした表情でヴォックスとシュウを見つめた。
    「すごい……」
    そこには先ほどまで気さくに話していた二人はいない。
    それぞれが自分に割り当てられた役柄に入り込み、人ではない何かに憑りつかれたかのような男が立っている。アイクはこの瞬間が見たかったのだと、鳥肌を抑えられずにいた。
    二人がランウェイに出た瞬間、空気が変わった。
    夕闇の一瞬の青と、夜明けの朝焼けが舞台の上を支配している。その静寂が心地よく、同時にモデルとして、敗北感を感じずにはいられなかった。
    舞台袖に戻ってきた二人を笑顔で迎えられるだろうか、僅かに潤んだ瞳を伏せてアイクは考える。
    本番中に泣くなど、プロ失格だと己に言い聞かせ輝かしい舞台を眺めていた。

    きっと一生忘れられない舞台になると、アイクはそんな予感を感じていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏💴💴💴💴💴👏👏👏❤👏👏👏👏👏👏💖👏👏👏💖👏☺☺☺👏👏👏💖🅿🇴🇴🇴🇴🇴🇴🇴↪↪👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏💴💴💴💴💴💴💴
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works