甘えたがり②「なかなか感動的な映画だったな!」
「終盤は号泣してたもんねぇ、司くん」
「…っ見てたのか」
映画館を出てから司くんの顔を見ると未だに涙目で、まだ映画の余韻が抜け切れていないようだった。それを指摘すればたちまち司くんは頬を赤く染め、目を手で擦る。
「こらこら、目が腫れてしまうよ」
司くんの手首を掴み、その動作を止めてから、ハンカチでなるべく優しく涙を拭う。司くんはそれが不本意だったようでじっとりとした目線を送られた。
「…むぅ」
「……、司くん?」
「…なんだかオレの方が年下みたいじゃないか」
案外可愛らしい理由で不貞腐れていたようで思わず笑みが溢れた。なんとなく撫でてあげたくなって、先程撫でられた仕返しも兼ねて司くんのその柔らかそうな髪に触れる。その指通りの良い髪はずっと触れたいと思っていたものだった。嬉しくて、つい長い時間撫で続けてしまっていた。
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