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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿した学パロ

    ##宇妓
    ##学パロ

    卒業いつもより華やかに飾られた学校。
    周りの連中が門出の祝いで泣いたり笑ったりしてる中、俺は誰もいない美術室にいた。
    いや、正しくはもう一人…この美術室の主である、派手で色男な美術教師が椅子に座る俺の前に立っている。

    「卒業おめでとーな」

    ニカッと子供っぽい笑顔を浮かべて俺に祝いの言葉を贈るコイツ。

    「これでやっとお前はうちの生徒じゃなくなるわけだ」

    そうだな。俺はこの日をもってこの学校を去る。もう二度とこの美術室にも来なくなる。
    そして…

    「俺が言いたい事、分かるよな?」

    あぁ、わかってるよ。
    そんな念を押さなくても充分に分かってるってぇの。

    アンタとの関係も今日までだってな…

    俺とコイツは一応付き合ってる関係だった。恋人ってやつだ。
    でもそれはただの「ごっこ」だった。
    だってそうだろ?コイツと付き合うってなって1年ぐらい経つのに未だキスしかしてこねぇ。普通なら恋人とは深い関係になりたいって思うもんだろうが。俺がコイツに思ってるようになぁぁ。でも、コイツは絶対にキスから先はしない。身体に直に触れる事もしない。
    キスをするのも決まってこの美術室。休日遊びに誘っても、ただの男友達のように接してきて恋人らしい事なんてやった事がねぇ。

    俺はこの美術室だけの恋人。この空間だけで成立する浅い関係…
    卒業してこの美術室に来なくなったら、俺とコイツの関係は何も無くなる。

    そして今日が最後の日…俺がこの学校から卒業する日。
    コイツと恋人でいられる最後の日だ。

    いつもと変わらない笑顔を浮かべがら、両手で俺の両頬を包みこむコイツ。
    図体がデカイコイツの大きな手。それでも綺麗な手をしていて、ゴツゴツなだけの俺の手と比べると妬ましくなってくる。
    そう。妬ましい筈なのに、コイツのこの手で頬を包まれるのは嫌いじゃなかった。寧ろ居心地良かった…

    ムカつくくらい綺麗で整った色男の顔が徐々に近付いてくる。いつもは目を閉じちまうが、今日だけは最後まで目を開けていようと思った。この色男の顔をこんな間近で見られるのも今日で最後だから…

    唇を重ねると思っていたが、コイツは俺の下唇を吸いだしてきた。男の癖にその唇は柔らかくて、カサカサな俺の唇とは正反対だ。リップぐらい塗ってくりゃあ良かったと少し後悔する。
    チュッと音を立てて唇を吸われ、そのまま唇を重ねられる。重ねられた瞬間からコイツの舌が俺の口の中に侵入してきて、俺の舌にねっとりと絡まってくる。

    「ぅんんっ…ふぅぅッ…」

    濃厚な熱いキスで、俺の吐息が漏れる。
    俺はこのねっとりとしたキスが苦手だ。
    身体中が熱くなって、腰に力が入らなくなる。
    欲情してコイツから離れたくなくなっちまう…
    限られた関係…俺が卒業するまでの関係なのに、ずっとこうして俺の口内を犯してほしいと願ってしまう。

    脳が蕩けそうなくらいのねっとりとしたキスに思わずコイツの腕をギュッと掴む。
    分厚いパーカーの下にある逞しい腕。イケメンで肉付きも良いコイツに抱かれる女はさぞ幸せなんだろうなぁと顔の分からない女に嫉妬してしまう。俺なんて絶対に抱かれる事ないってぇのに…。
    それにしても、今日で最後だっていうのに、いつも以上にねっとりと絡めてくるなコイツ…
    いや最後だからなのか?最後の遊びとして、コイツなりに楽しんでるのか?
    あぁぁ…コイツならやりかねねぇよなぁぁあ…
    だったら俺も楽しんでやるよ。いつもヤラれっぱなしだったからなぁ。

    腕を掴んでいた手をコイツの後頭部へ回し、立ち上がってはグイッと俺の顔を顔に押し付けてやった。そして吐息が漏れる隙間もないくらいに唇を重ねて俺からも舌を絡ませていく。
    押し付けた瞬間、目を見開いて驚いた顔をしやがったがその後すぐに目を細めて俺の腰に手を回してきた。こっちはしてやったりな感じだったのに、何か大人の余裕ってやつを見せられてムカついた。

    二人だけの美術室には、くちゅりくちゅりと唾液が絡む音だけが響く。

    もう少し…
    もう少しだけコイツの視界を占領しておきたい…
    もう少しだけコイツと唇を重ねていたい…
    もう少しだけコイツに抱き締められていたい…

    もう少しだけ…もう少しだけ…

    だけど俺の息が続かなかった。プハッと唇を離して、互いの舌に糸が引く。

    「あ~あ。慣れねぇ事して息すんの忘れちまってか?」

    ハァハァと空気を取り込む事に必死な俺をクックッと喉を鳴らしながら笑うコイツ…ムカつく…
    腰に回されてた手もいつの間にか解かれていて、その解いた手で俺の頭をグシグシと荒く撫で回す。

    「馬鹿にすんなよなぁぁ」

    「馬鹿にしてねぇよ。可愛いって思ってんの」

    「はぁッ?」

    聞き間違いか?今コイツ何て言った??
    男の俺に…こんな醜男に…

    かわi……

    「…あんな熱烈なキスしてきたって事は、マジで覚悟できてるって事だよな?」

    馬鹿にしたような笑顔をやめて、急にらしくない真剣な顔つきになるコイツ…
    コイツのさっきの発言で思考停止しかけてたが、「覚悟」っつう言葉で我に返る。

    そうだ…もう今日で終わりなんだよな…
    コイツとはもう会わねぇ…もうこうして二人で会って談笑してキスしたりして…その関係は今日で終わるんだ…

    俺のコイツへの気持ちも綺麗に捨てなきゃいけない…

    その「覚悟」ができてるのかって強く念を押された気がして、胸がズキンッと痛んだ。

    そりゃそうだよな…卒業してまで俺みたいな醜男に付き纏われたらたまったもんじゃねぇもんな…コイツはイケメンだし女にもモテるし…どうせ俺は火遊び感覚だったんだしなぁぁ…

    俺は今日、この学校から卒業して、コイツへの気持ちも卒業する……

    分かってた事じゃねぇか…

    言え……
    伝えろ………

    後腐れねぇように……

    「ああぁ勿論……覚悟できてるぜぇぇ」

    いつものように生意気に、ニヤリと笑って言ってやる。強がりだってのは分かってる。強がってなきゃ自分を保てねぇ。そんくらい俺は気が滅入ってた。あり得ねぇくらい落ち込んでる。
    そんな自分がみっともなくて泣きそうになる……
    さっさとこの場から…コイツの前から消えねぇとマジで泣きそうになる…コイツの前で涙なんか流したくねぇんだ…

    「その割には、随分悲しそうな顔すんだな」

    コイツの目がいつも以上に真剣で真っ直ぐに見つめてきてた。
    見透かされた気がした。いや、確実に見透かされてる。俺の気持ちが…
    コイツと離れたくないって気持ちが…

    「ッんなわけねぇだろぉぉ。さっきも言ったけどよ、ちゃんと覚悟できてるっつうのぉぉ」

    バレたくなかった。絶対に俺が真剣にコイツの事を好きだったって、バレたくなかった。
    それは俺のプライドだ。
    お前が遊びならこっちも遊びだったんだと。
    顔が引きつらないように、ニヤリと笑ってみせる。
    口に出さなきゃそれは真実にならねぇ。逆に口に出した言葉が真実になる。
    俺は覚悟はできてる。アンタへの気持ちは今日限りを持って綺麗サッパリ忘れる。
    それが、コイツへ告げる真実だ。

    「…ま、お前が何を考えてんのか今は分からねぇが、とりあえず言質は取ったからな」

    俺の態度に多少疑問があるようだが、俺が覚悟できてるって事は信じ込ませた。
    これで良いんだよ…元々俺とコイツじゃ不釣り合いだったんだからなぁぁ…
    自分の気持ちを早く整理したくて、この場から早く立ち去りてぇと思って、足を動かそうとしたら、急にガッシリと両二の腕を掴まれた。掴んできたのは勿論、目の前のこの男。

    「な、何だよ宇髄…」

    「宇髄じゃねぇだろ。天元て呼べ」

    「…は?」

    天元っつうのはコイツの名前で普段は姓の宇髄呼び。
    …何で今更名前呼びを要求してくんだ?しかもそんな真剣な表情で。

    「やっとだ。ようやく…」

    真剣な表情から段々と口元に笑みを浮かべていくコイツ。何か日の当たり方のせいか、不気味な笑顔に見えてくるんだけども…
    ま、まぁそうだよなぁぁ。ようやく俺と別れられるんだもんなぁぁ。そりゃ嬉しい……

    「お前に手ぇ出せる」

    ……………
    ……………
    ……………

    「は?」

    俺の思考は一瞬完全に停止した。

    手を、出せる……?
    それって所謂殴るって事か?
    いや確かに輩先生呼ばれたり過去とんでもねぇ事してる(今現在も大概だけどなぁぁ)奴だけど、今の今まで一応付き合ってた奴を殴ろうとするかぁぁ?いやでも、俺結構コイツに生意気やってたから本当は割と俺にムカついて………

    「覚悟しとけよ。デロデロのトロトロにしてやるからな」

    あ、これ違うわ。殴るとかじゃねぇわ。別の意味の「手を出す」だわ。

    んで、誰が?誰に?

    んんんん〜ッ?

    「なぁ、妓夫太郎」

    いつもは謝花呼びなのに、急な名前呼び…
    コイツの口から俺の名前が呼ばれて胸がドキッと高鳴った。
    二の腕を掴んでいた腕はいつの間にか俺の腰に回され、気が付いたら身体はガッチリとホールドされていた。逃げる事なんか一切できねぇ。つか、なーんか、腰に回った手が徐々に下に行ってる気がすんだけどもぉぉ…?

    「ちょ…何か手付きがエロくねぇかぁぁ?」

    「エロくしてんだよ。本当はずっとこうしたかったわ。でも教師の俺が生徒のお前に手ぇ出すわけにはいかねぇだろ」

    んん?あれ?これってもしかして…
     
    「まぁようやく卒業してくれたからもう容赦しねぇけどな」

    俺はとんでもねぇ勘違いをしてたんじゃねぇのかぁぁッ?!

    コイツが今の今までキス以上の事してこなかったのは、その気が無かったからじゃなくて、俺が生徒だから卒業するまで待ってた感じでッ。
    でも俺はキス以上の事してこねぇのはコイツが遊びだからと思って、卒業したら関係終了と思っててッ。
    自分の勘違いやら誤解やらで頭が混乱して冷てえ汗がダラダラと流れる。
    勘違いだった事は嬉しい筈だ。抱き締められて、俺だけを見つめていてくれて、名前で呼ばれて、そして欲情されて…コイツとの関係を終えなくて済むっていう、嬉しい事な筈なのに…

    「もう長い事我慢してたんだ。最初は優しくするけど、途中からどうなるか分からねぇからな?」

    俺を見下ろし、目を細めて笑みを浮かべながら舌なめずりをするコイツに、ゾクッと寒気を感じる。

    「その"覚悟"、ちゃんとできてるって言ったもんなぁ?妓・夫・太・郎」

    笑顔のまま、まるで獲物を捕えた肉食動物のような瞳で俺を見つめるコイツ。
    その威圧感に思わず顔を引きつらせ、ゴクリと唾を飲み込む。
    俺は今、「肉食動物に狙われてる小動物」の気持ちがとてつもなく理解でき、自分が告げた言葉を猛烈に後悔した…。
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