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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿した妓妓のホモ百合、あるキャラの死ネタ有り

    同族愛好地下のひんやりとした空間に、唾液が絡む音が俺の耳に響く。
    地べたに座らせた目の前の"存在"に俺は唇を重ねて、その口内を舌で犯していく。
    互いの乾いた唇が唾液で濡れていき、口角からは唾液が溢れ、唇と唇の間からは互いの熱い吐息が漏れていく。その熱い吐息は互いの頬を段々と紅潮させていき、身体の熱も上げていく。
    最初は俺だけが絡めていた舌を、いつの間にか目の前の"存在"も俺の舌に舌を絡ませていき、俺の口内を犯し始めてきた。

    コイツ…慣れてやがるなぁ…

    こんな口づけをやった事なさそうな顔してんのに、目の前の"存在"は慣れた様子で舌を絡ませてくる。
    おそらく誰かとよくやってんだろなぁあ…んな顔をして……
    妬ましい……妬ましいなぁぁ……
    俺はいつもの癖で、胸を手で掻きむしる。妬ましく思う程引っ掻く力は強くなり、血が滲み出てくるが、鬼である俺には何も問題無い。
    口内を犯し犯されながらも俺は自分の胸を引っ掻き続けていると、目の前の"存在"は口角を上げてニヤリと笑い出す。
    その笑みに俺は重ねていた唇を離し、唾液の糸が引く舌を口に収め、目の前の"存在"を睨みつけながら問う。

    「なぁにがそんなに可笑しいんだぁぁ?」

    俺の睨みに怯まず、未だ不敵な笑みを崩さねぇ目の前の"存在"は、俺の問いに答えた。

    「可笑しいに決まってんだろぉぉ。テメェから口づけしておいて勝手に苛々しやがって」

    「あ"ぁ?俺がいつ苛ついたってんだぁ?」

    「引っ掻いてんじゃねぇかよぉ。ずぅっとなぁぁ。しかも血ダラダラ出しやがって。まぁ鬼だからすぐ傷治るもんなぁぁ。良いよなぁぁ。すぐ治る身体でよぉぉ。俺ぁ簡単に治らねぇからその癖直せって説教されてんだよなぁぁ。良いなぁぁ。妬ましいなぁ。妬ましいなぁぁぁ」

    そう言いながら、目の前の"存在"は俺と同じように胸を引っ掻き始めた。鬼狩りの隊服の上から引っ掻いてっから傷は付かねぇと思うがなぁ。まぁ、普段は顔とか首も引っ掻いてんだろなぁぁ。俺がそうだからなぁぁ……。

    俺は目の前の"存在"、俺と同じ顔、同じ声、同じ口調で鬼狩りの隊服を着たこの男を見下ろしながら、ハッと鼻で笑った。

    それはついさっきの事だ。珍しく俺は餌を狩るために外に出た。妹にはそんな必要は無いんじゃないかと言われたが、何故だが無性に外に出たくてしょうがなかった。自分でも不思議に思っていたが、今なら分かる。この"存在"がここに現れたからだど。
    この"存在"と目が合った瞬間に俺はこの"存在"を隠れ家として使っているこの場所、遊郭の地下へ拉致して来た。
    首を横に傾け、生意気にも下から睨みつけてきたこの"存在"。
    俺を睨みつけるその眼はどこか懐かしい色をしていた。
    澄みきった青色で、それはまるで俺達兄妹がもう見る事のできねぇ青空のような眼。
    その眼を見てると、胸の奥がざわついて、欲しくて欲しくてたまらなくなって、さっきの口づけへと発展した。

    「んで、テメェは何者なんだぁぁ」

    「それは拉致られて監禁されて口づけまでされた俺が聞きてぇなぁぁ」

    「あ"?鬼狩りならこの眼を見りゃあ分かんだろ」

    「……上弦の陸、か。悪ぃ冗談だなぁぁ」

    目の前の"存在"の笑みがようやく引きつりだす。その表情から余裕が少し消え、それは俺に優越感をもたらした。

    「上弦と聞いてようやく焦りだしたかぁぁ?まぁそりゃそうだよなぁぁ。いつ食われてもおかしくねぇ状況だもんなぁぁ」

    「そういう事じゃねぇんだよなぁぁ」

    「あ"?」

    「俺の一つの可能性が「上弦の陸」ってのが悪ぃ冗談だと思ったんだよ」

    「……テメェの、一つの可能性?」

    何の話なのか分からず、俺が呆気にとられてると目の前の"存在"はまたニヤリと不敵に笑い、テメェがどういう存在なのかを俺に語りだした。

    要はコイツは、こことは別の世界の俺らしい。
    第六感が鋭いらしいコイツは、ここに来た瞬間に自分の住むとことは別だと感じたらしい。んで暇潰しで読んだ本に、枝分かれした並行世界とか書かれてたらしく、自分の今の状況がそれだと思ったらしい。順応性高過ぎだろコイツ。んで、色々情報集めしようとしてるところで俺と目が合い、そのままここに拉致監禁されたって事だ。
    何かすげぇ夢物語みてぇな話だが、妙に納得しちまう。あまりにもコイツは俺と似過ぎてるからだ。顔、髪型、声、口調もそうだが、顔の痣も全く一緒だ。もしやと思いコイツの上衣を引っ剥がすと、必要な筋肉だけつけた痩せ方の貧相な身体に、俺と同じ位置の痣があった。ここまで全く同じな奴が別人っつう方が怖いくらいだ。

    つか、そう考えるとコイツは俺の可能性の一つでもあんのか?俺の可能性が鬼狩り…?

    そう考えると、笑いが込み上げてくる。喉を鳴らしながらクックックッと笑い、

    「悪い冗談はテメェの方だろぉぉ。俺の一つの可能性が鬼狩りぃぃ?人間の為、幸せにしてる奴らの為に俺が鬼を狩るぅぅ?有り得ねぇわ」

    「それしか生きる術が無かったんだよ。誰が他人の為なんかに鬼狩りなんざするか」

    コイツの目に一瞬影が堕ちた。それは、コイツが人間を少なからずも憎んでいると俺に伝える。

    「…少しは安心したぜ。テメェは人間に対して良い感情は持ってねぇみてぇだな」

    「寧ろ嫌いだなぁぁ。妹と好いてる奴以外はどうでもいいわ」

    「あ"?テメェ…妹以外にも大事な存在がいんのかよ」

    「あぁいるぜぇぇ。1人だけなぁぁ」

    そう勝ち誇ったように目を細めニヤリと笑ってみせるコイツ。
    前言撤回だぁぁ。

    「女がいんのかよッ。ふっざけんなよなぁぁぁッ!俺の癖によぉぉぉぉッ!」

    「女じゃねぇ。男だ」

    「……は?」

    「だから男だよ。ちなみに俺は突っ込まれる方なぁぁ」

    「……ソイツ、ゲテモノ好きかよ」

    「俺もそう思うわ」

    「お前の穴の具合が良くてヤッてんじゃねぇのかぁぁソイツ…」

    「ヒヒヒッ。それも有るかもなぁぁぁ」

    俺と同じ汚え笑い方しやがって。「まあ色男だからそれでも身体許すけどなぁぁ」とか、ソイツの話をしてるコイツからは幸せしか感じねぇ…。クソがっ。
    結局コイツは俺じゃねぇ。俺とは全く違う存在だ。俺ほど惨めな思いをした事ねぇから、妹以外に気を許してやがんだろうなぁぁッ。
    一瞬でも目の前の"存在"を欲しいと思った自分に腹が立ってきた。貧相な身体してやがるが、今ここで食ってや……

    「…んで?お前は何で鬼になった?」

    笑っていやがったコイツの眼がいきなり俺を貫いてきた。その鋭い眼光に俺は思わず出しそうになっていた手を止め、息を呑む。

    「…んな事聞いてどうすんだ」

    「……梅は?梅はどうした?」

    「………梅?」

    梅………梅…………

    その名前を何度も何度も頭で繰り返す…

    そうだ……「梅」は俺の妹の名前……アイツの名前だ……

    それを思い出した瞬間に流れて来たのは、絶望の記憶…

    「ッ……クッ……ア"ァァッ!」

    やめろ……思い出すなッ……
    あの時を思い出すなぁぁぁあッ!

    「ぁ、ぃつはッ……梅はッ…生きたままッ、侍に焼かれッ……!」

    神も仏も呪ったあの日の記憶が俺を苦しめる。

    「俺もッ…斬られッ……でも、殺して、ゃったッ…!」

    そして傷付いた俺達兄妹を助ける人間は誰もいなかった。雪の中唯一助けてくれたのは鬼…
    そう。俺達兄妹は鬼となるしか生きる術はなかった……

    絶望の記憶に俺は頭を抱え苦しむ。

    どうして…ッ
    どうして俺達だけがこんなにも不幸を背負わなけれりゃいけねぇんだッ…!
    周りの奴らはあんなに幸せそうにしてるってぇのにッ!!

    取り立ててやるッ…
    幸せな奴ら全員から取り立ててやるッ!

    今目の前にいるコイツからもッ…!

    今度こそコイツの首を斬り落としてやるッ。そう思った瞬間に、コイツは「ヒャハハハッ!」と甲高い汚え声で笑いやがった。

    「ッ…テメェッ……何が面白ぇんだ!!」

    「ヒヒヒッ…違ぇよッ…面白えから笑ったんじゃねぇ」

    「あ"ぁッ?」

    「そんな状況なら俺だって鬼になるなぁぁって思ったんだ。実際俺んとこにもあの状況で鬼が来て「鬼になるか?」とか聞かれたら鬼になってたわ」

    あの、状況……?

    汚く笑ってるコイツの眼に再び影が堕ちる。それはさっきの比じゃねぇくらいデカイ影だ。
    もしかしてコイツも死にかけたのか?人間に殺されかけたのか?妹も一緒に。

    「でもそうかぁぁ……オメェは梅とずぅっと一緒に居れたのかぁぁ……良いなぁぁ……妬ましいなぁぁぁ」

    「……あ"?」

    梅と一緒に居れたのが妬ましい?何でだ……。
    頭を上に向けているコイツの眼はどこか遠くを見ている…口元は笑っていやがんのに、青空のようにすんでた眼は曇って今はまるで死んでるみてぇだ……

    「……お前、まさか梅を」

    「………守れなかったなぁぁ」

    コイツは上を向いたままポツポツと語りだす。
    遊郭から足抜けしようとしたところを見つかり、殺されかけ、傷付きながらも雪の中を彷徨った事。傷付いた貧しい兄妹を助ける奴なんて誰もいやしなかった事。人間を呪い、神や仏も呪った事。途中で力尽き雪の中に倒れた事。そこを鬼狩りに救いだされ一命を取り留めたが、梅は…コイツの妹は、コイツの腕の中で息を引き取っていた事。

    それがどれだけコイツを絶望に突き落としたか、俺は余裕で理解できた。

    「お前アホだなぁぁ。何で鬼にならねぇんだよ…人間を呪ってやりてぇんだろぉぉ?」

    「鬼にはなったなぁぁ。人間のままでだけどなぁぁ。んで鬼を狩りまくった」

    「八つ当たりかよ…鬼関係ねぇじゃねぇか…みっともねぇなぁぁ」

    「あぁ。本当……みっともねぇぇ…」

    「妹守れねぇで……この、虫けらボンクラ」

    「ノロマの腑抜け、役立たず」

    「「何の為に生まれてきたんだ」」

    俺達の同じ声が揃う。
    俺はコイツを見ながら。コイツは上を見ながら。
    互いの口元には同じ笑み浮かべた。

    何だよ…やっぱりコイツは俺と同じじゃねぇか……
    醜くて卑屈でみっともなくて…幸せそうにしながらも、結局それは妹を失った穴埋めなだけで。

    良いなぁぁ。コイツ良いなぁぁ。欲しいなぁぁぁ。

    「なぁぁ。お前、このままここにいろよ」

    「そりゃ困るなぁぁ。好いてる奴がいるって言ったろぉぉ」

    「オメェを幸せになんかさせねぇよぉ。オメェはここでこのまま俺と一緒にとことん堕ちてもらうぜぇぇ」

    「悪ぃ冗談言うなよなぁぁぁ。まぁ、俺がお前だったら全く同じ事言うだろうけどなぁぁあ」

    「"だろう"じゃねぇなぁぁ。絶対ぇ同じ事言うだろお前」

    お前は俺。俺はお前、なんだからなぁぁ。
    本当は鬼にしてやりてぇとこだが、昔懐かしいその空色の瞳は残しておきてぇ。しょうがねぇから人間のままで居させるかぁぁ。

    上を向いたコイツの顎を持ち、クイッと俺へと向けさせて、俺は再びコイツに唇を重ねた。







    補足※この鬼殺隊if妓は梅ちゃん失ってるのでかなりイカれてます。
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