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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿したうぎゅ学パロ

    ##宇妓
    ##学パロ

    キメ学不良物語キメツ学園だけど、梅ちゃんだけ年齢変えてるよ!
    セリフ多めのプロットみたいな読み物だよ!!
    宇妓はほんのりな感じと、最後だけだよ!!!
    書いた奴の自己満作品だよ!!!!


    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

    キメツ学園高等部…週始めの月曜日の本日は、珍しく何事もなく午前授業を無事に終え、昼休みのチャイムが鳴り響く。
    職員室では、教師が各々昼食を取ろうとしていた矢先…

    「先生ぇぇぇーーーー!!!!」

    急いで走って来たであろう1年筍組我妻善逸が、息を切らしながら、職員室のドアを勢い良く開けた。そして……

    「廊下を走るなッ我妻ぁぁぁッ!!」

    ちょうどぼっち飯に行こうとしていた風紀担当冨岡義勇先生から鉄拳制裁を食らう羽目になってしまった哀れな生徒善逸…。

    「うむ!!元気があって何よりだ!!」

    「今のやり取りでそう言えんのお前だけだぞ煉獄」

    ハハハ!と笑っている煉獄に対し、宇髄が引き攣った笑顔で呆れたように告げる。

    「い、いや!今それどころじゃないんですよ先生!」

    冨岡からの鉄拳制裁から何とか復活した善逸は、慌てた様子で叫び出す。

    「3年の謝花先輩が今校舎裏で、乗り込んできた他校の不良グループに囲まれてるんですよ!!しかも大勢!!相手武器持ち!!」

    その善逸の言葉に職員室に衝撃が走る。

    「何故もっと早く言わない!!」

    再び理不尽な冨岡からの鉄拳制裁を食らってしまう善逸…。

    「アンタのせいだよ!!」

    涙を流しながら必死に訴える善逸だが、教師陣は今それどころではない。
    宇髄、煉獄、不死川と続き、職員室から駆け出していく教師陣。その後を冨岡が追い掛けて行く。

    「我妻、相手は武器を所持していたのか?」

    「え?あ、はい!金属バットとか鉄パイプとか!」

    伊黒の質問に答えながら「漫画みたいな不良だなぁ」と思う善逸…。

    「武器を所持しているのなら警察を呼んでおこう」

    「確かにそれが良いかもしれませんねッ」

    冷静に対応している伊黒の提案に胡蝶カナエも賛成し、悲鳴嶼、響凱両教師は、校長へと報告しに職員室を出ていく。

    そんな職員室を駆け出した教師陣は、ようやく件の校舎裏へと辿り着く……その場所から聞こえてきたのは、耳を塞ぎたくなるような悲鳴……

    「ギャァァァァァッ!!」

    「嘘だろ!?この人数相手だぞ!?」

    「ば、バケモンだぁぁぁッ!!」

    「オラァァァァァァッ!!!テメェらから喧嘩吹っかけてきておいて逃げんじゃねぇぇぇぇぇッ!!!!」

    「ギィィヤァァァァァァァァッ!!!!」

    多勢に無勢など関係ない……キメツ学園一の不良こと謝花妓夫太郎の圧勝である。勿論無傷である。
    その場を目の当たりにした教師陣は皆思った。

    うん。知ってた。

    逃げようと這いずる他校の不良たちを蹴飛ばしたりと追い打ちをかけていく妓夫太郎。そんな妓夫太郎を宇髄が後ろから羽交い締めにして止めにはいる。

    「ほらほら落ち着け。もう勝負はついてんだろ」

    「あ"ッ!?」

    「君らにも話を聞きたいからまだここに残っていてくれないかな!」

    「だ、誰がこんなとこに…」

    「残れって言ってんだろうがぁぁッ!あ"ぁぁッ!?」

    妓夫太郎以上に狂気満ちた目で睨む不死川に他校の不良たちは「ヒィィッ」と震え上がり、腰を抜かしたりとその場に蹲ってしまう。そんな時、遠くから聞こえてきたパトカーのサイレンの音が学園内で止まった事に気付いた冨岡が、「警察が来たようだ」と呟く。その冨岡の呟きに、宇髄に羽交い締めにされながらももがいていた妓夫太郎がピクッと反応をする。
    その後、警察から事情聴取され、相手が大勢だった事、相手が武器を所持していた事、相手から暴行を加えようとしてきた事が3年蓬組胡蝶しのぶのスマホの録画によって証明され、妓夫太郎はその場で注意を受けるだけに済んだ……のだが………

    「謝花……お前、何でここに呼び出されたか分かってっか?」

    職員室で不機嫌なオーラを放ちながら椅子に座る妓夫太郎を、不死川、煉獄、宇髄、冨岡が囲み、全教師がその光景を見つめていた。
    不死川の問いに、妓夫太郎は不貞腐れながら、

    「学園内で喧嘩したからかぁぁ?」

    「それは一応正当防衛として許してもらった事だから問題ないぞ!!」

    「んじゃ知らねぇなぁぁ」

    「あのなぁぁぁッ!!」

    悪びれる様子の無い妓夫太郎に、怒りを顕にする不死川を煉獄が落ち着かせる。

    「警察への態度だ。何だあれは?」

    冷静な冨岡が話を進めていく。そしてそれに続くように煉獄が、

    「うむ!あの態度は頂けないぞ!あちらの質問に一切答えず、あまつさえ睨んで威嚇するなど言語道断!!それに加え、「税金泥棒」などと呼んでは駄目だろう!!」

    「お前なぁ。野良猫じゃねぇんだから。警察にはそれなりに媚売っとかねぇとこの先暴れる際にやりづれえぞ」

    「宇髄!その助言は教師としてどうかと思うぞ!!」

    輩先生としての助言に煉獄からの喝が入る。

    「……別に俺は間違った事言ったつもりねぇけどなぁぁ」

    「テメェなぁッ!あの態度でテメェは警察署に連れて行かれるとこだったんだぞ!!胡蝶しのぶの録画があったから良かったものの!!」

    「…んじゃぁ胡蝶には後で何か奢らねぇとなぁぁ」

    「全っっ然反省してねぇなテメェ!!」

    「まぁまぁ!落ち着け不死川!!」

    今にも妓夫太郎に飛びかかりそうな勢いの不死川を煉獄が宥める。その横から宇髄が前に出て、妓夫太郎の顔を覗き込んでくる。

    「なぁ謝花…お前、何があった?」

    「あ"ぁッ?」

    「いつもならあそこまで暴れねぇだろお前。それに朝からお前不機嫌だったしな」

    珍しく真剣な表情を浮かべている宇髄に、周りの教師陣も「そうなのか?」と妓夫太郎を見つめる。その視線には心配する気持ちも含まれ、妓夫太郎は「ぅぐッ…」と言葉を詰まらせた。

    「ほら言ってみろ。相談に乗るぜ」

    「うむ!悩み事があるなら乗ろう!」

    「それも教師の務め…」

    生徒の悩み事ならばと、静観していた悲鳴嶼も前へとやって来る。

    「…別に、悩みなんて」

    「謝花君。この際だから話しましょう」

    胡蝶に微笑まれ、再び言葉を詰まらせる妓夫太郎…。「最早逃げ道はないぞ」という伊黒の言葉に、ようやく観念し、視線を泳がせながら話し始める…。

    「…昨日、妹と2人で街に遊びに行ったんだよ」

    「ほう!謝花は妹がいるのか!」

    「小学6年の妹な。コイツにべったりの」

    妓夫太郎に妹がいた事が初耳な煉獄に宇髄が軽く説明をする。

    「途中まで買い物したり普通に遊んでたんだけどよ…」

    そこまで話すと、妓夫太郎は言葉を詰まらせた。眉間にシワを寄せ、辛そうな表情の妓夫太郎。その先に何があったのか、不安に思い始める教師陣。

    「んで?どうした?」

    「……他の奴には言うなよ」

    「生徒の悩みは他言無用だ!!」

    「……その、妹と手ぇ繋いで歩いてたら、後ろから急に腕を掴まれて……」

    「ん?お前の?」

    「あぁ。んで……」

    言葉を詰まらせながらも、話してくれる妓夫太郎に皆耳を傾ける。そして次の言葉に、その場の全員が絶句した……

    「「変質者確保」っつわれたッ……」

    ……………

    「ちょっと待て待て待て待て待て」

    あまりにも予想外の展開に、さすがの教師陣も困惑気味…一旦宇髄が話を切り、妓夫太郎の肩をポンポンと叩く。

    「それ言ってきたの、警察か?」

    「あぁ…私服警官だった…」

    「……何で??」

    「誰かが通報したんだよッ!小学生くらいの可愛い女の子を連れ回してる怪しい男がいるってなぁぁぁッ!!」

    「…そこは普通兄妹と思われないか?」

    誰もが思った疑問を伊黒が問うと、

    「俺の妹は俺に似ねぇで可愛いんだよッ!!そりゃとびっきりになぁぁぁッ!醜男な俺と一目で兄妹って分かる奴いねぇぐらいなぁぁぁぁッ!!」

    必死にそう訴えてきた妓夫太郎に、数人の教師は「コイツ、まさかのシスコンか…」と妓夫太郎の意外性に目を丸くした。

    「その後、無理矢理引き離されて、パニクった梅が泣き始めるし!!」

    「梅ってコイツの妹な」

    「梅が泣き出したのは怖かったからだと勘違いしたもう一人の女警官が更に俺から引き離していったし!!俺が「兄妹だ!」って何回も説明しても聞く耳もたねぇし!!メチャクチャ注目の的で野次馬からはスマホで撮られるし!!最後は「公務執行妨害だ」とかぬかして手錠かけやがったからなアイツ等!!!」

    あまりにも悲惨な妓夫太郎の日曜日に、教師陣は愕然としてしまう……

    「まぁ丁度通り掛かった竈門一家に助けられたけどなぁぁッ!!アイツ等自分らが間違ってた事一切悪びねぇで、「今後は誤解されないように」って逆に注意してきたんだぞ!?何様だよアイツ等!!」

    思い出しただけでも腸が煮えくり返ってきそうな妓夫太郎は、ゼーハーゼーハーと荒く息を切らす…。
    伊黒や後藤等は哀れにも思いながら「それは御愁傷様…」と他人事のようだが、

    「なぁ。その警官、どこの警察署だ?」

    宇髄はニッコリと笑って妓夫太郎に問いかける。

    「そうだな!大事な生徒をここまで侮辱されたのだ!ここは1つ厳重な抗議を!!」

    「今すぐ爆破してきてやっから教えろ」

    「落ち着け宇髄!!それは立派な犯罪だ!!」

    真っ当な抗議をと思っていた煉獄だが、過激過ぎる抗議(最早テロ)を実行しようとしている宇髄(ダイナマイト所持)に慌てふためき、必死に宇髄を止める。

    「全く…宇髄は相変わらずだな…」

    「全くだ……」

    何でも爆破しようとする宇髄に呆れた様子の伊黒と、それに同調している不死川……

    「本っっっ当、警官っていうのは人を見た目で判断する事多いよなぁぁぁぁッ!」

    前言撤回。不死川が同調していたのは妓夫太郎であった。そんな過去に何かあったであろう不機嫌な不死川を見て、伊黒は「ここにも経験者がいたか…」と憐れみの目で見つめた…。

    「お前の事情はよく分かったが、今回来てくれた警察官には関係ない事であろう?」

    落ち着いた声で悲鳴嶼がそう妓夫太郎を諭す。

    「そうだな!今回来てくれた警察官は親身に話を聞いてくれる方だったな!」

    「謝花、世の中には色んな大人がいる。1人がそうであったからといって、皆がそうとは限らん。警察官も一緒だ。そこを心に留めておきなさい」

    厳しい口調ながらも優しさを含んだ悲鳴嶼の言葉に、流石の妓夫太郎も…

    「無理」

    そう即答する妓夫太郎…。全く心に響いていなかったようだ……。
    そうこうしているうちに、チャイムが鳴り響き、キメツ学園らしい慌ただしい昼休みは終わりを告げる……



    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

    「クソッ…謝花の野郎!」

    キメツ学園に乗り込んできた不良たちは警察から解放され、溜まり場として使っている工場跡地に集まっていた。

    「何なんだよアイツの強さ!意味分かんねぇよ!この人数だぞ!?」

    「しかも痩せてんのに何であんな強ぇんだよッ…漫画かよッ…」

    「クソがっ…!何かいい手はねぇのか!?」

    「……いい手ならあるかもしんねぇぜ」

    「マジかよ!」

    「ほら。これ見てみろよ」

    1人の不良がニヤニヤしながらスマホの画面を他の不良たちに見せる。そこに映っていたのは、

    『お兄ちゃぁぁん!』
    『梅!良かった!!』

    「何だよこれ」

    「昨日、誤認逮捕されそうになった奴って知り合いから回ってきたんだけどよ。これ、謝花だろ?」

    「マジだ。え?アイツこんな笑顔すんの??」

    「お兄ちゃんって……え?この美少女がアイツの妹??」

    「嘘だろ……」

    「コイツのニヤけた顔見ろよ。絶対ぇコイツシスコンだぜ。つまり……」

    不穏な空気を纏い、不良達はニタリと笑みを浮かべた…。

    場所は変わり、キメツ学園中等部校門前……下校の時間となり、竈門禰豆子は家へ帰るべく校門へと向かっていた。そこに昨日街で見かけた姿を見つけ、禰豆子はその者へ駆け寄っていく。

    「梅ちゃーん!」

    「あ!禰豆ちゃん!」

    小学校に通う謝花梅は、禰豆子の姿を見て、笑顔で手を振る。

    「昨日はありがとね!これ!お礼のクッキー!お兄ちゃんと一緒に作ったの!」

    「わぁ!ありがとう!でもお礼なんて良いのに」

    「禰豆ちゃん達が居なかったらあのクソ警官にお兄ちゃん犯罪者にされてたんだもん!」

    「梅ちゃん。クソ警官なんて言っちゃ駄目だよ」

    きっとお兄さんの影響なんだろうなぁと思いながら禰豆子は梅の口の悪さに少々戸惑い気味となる。

    「ねぇ禰豆ちゃん!一緒に高等部行こう!!お兄ちゃんと一緒に帰りたい!!」

    「ん〜そうだねぇ。たまには私もお兄ちゃんと一緒に帰ろうかなッ」

    笑顔を向け合いながら、2人は仲良く高等部の校門へと向かって行く……そんな楽しげな2人の背後から、数人の影が襲い掛かる。それは、人目の少ない場所で起こった…。

    「おい!1人多くねぇか!?」

    「しょうがねぇよ!見られちまったんだ!一緒に連れて行こうぜ!!」

    「2人とも美少女だな……ヘヘ」

    そんな怪しい姿が走り去っていくのを見掛けたのは……

    「あ、あれって……」

    黒髪のサラサラキューティクルが特徴的な、キメツ学園高等部2年山椒組村田…。偶然見てしまった少女連れ去り現場……。1人は確か、1年の竈門炭治郎の妹……。

    「た、炭治郎に言わなきゃッ……!」


    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

    高等部駐輪場……妓夫太郎は自身のバイクの前で、スマホの画面を見ていた…。その顔は険しく、怒りに満ちているのが誰もが分かり、その怒りに触れたくないと誰も駐輪場に近付けないでいた…。そんな場所にやって来たのは…

    「妓夫太郎先輩!!!」

    血相を変えて妓夫太郎の元へ駆け寄ってきた竈門炭治郎。そして、同じクラスの善逸と、嘴平伊之助が続く。

    「あの!2年の村田さんが教えてくれたんですけど!禰豆子が!禰豆子が誰かに連れ去られたって!それで白髪の小学生の女の子も一緒だったって!それって梅ちゃ…!」

    炭治郎が言い終わる前に、妓夫太郎は自身のスマホを炭治郎へと見せる。そこに映っていたのは、

    「!禰豆子!!」

    工場らしき背景に、禰豆子が怯える梅を抱き締め、カメラに睨んでいる画像……禰豆子と梅の周りには数人の男の脚が見え、2人を囲んでいるように見える。

    「……妹返して欲しけりゃ1人で来い、だと。梅のLINE使って送ってきやがった」

    今にもスマホを握り潰しそうな程の握力。その手から伝わる、妓夫太郎の凄まじい怒り。炭治郎は妓夫太郎の顔を見上げた。そこには今にも人を殺してしまいそうな鬼のような形相の妓夫太郎…。額に青筋を浮かばせ、ギリギリッと唇を噛み締めるその姿は妹の身を案じる兄の姿でもある…。炭治郎はグッと拳に力を入れた。

    「俺も行きます!」

    「あ"?」

    「だから!俺も禰豆子と梅ちゃんを助けに行きます!!」

    「……お前ぇは関係ねぇだろうが」

    「関係あります!!俺は禰豆子の兄です!!兄が妹を助けるのは当たり前でしょ!」

    芯の強い瞳で妓夫太郎を見つめる炭治郎。その瞳に迷いは無いなと妓夫太郎はフッと笑ってみせた。

    「これでテメェも不良の仲間入りするかもしんねぇぜぇ?」

    「禰豆子を助ける為です!!だからこれは正当な理由で不良ではないです!!」

    「あっそ…まぁいいわ。とりあえず乗れよ」

    そう言い、妓夫太郎はバイクに跨る。

    「はい!!」

    「ヨッシャー!!行くぜー!!!」

    「突っ走っていこー!!!」

    「………ん"ッ?」

    炭治郎1人が後ろに乗ったと思っていた妓夫太郎だが、後ろから明らかに定員オーバーの声が聞こえ振り向く。そこには、バイク後部にギチギチに跨った炭治郎、善逸、伊之助の姿…。

    「ちょっと待て。黄色と猪は何で乗ってんだぁ?」

    「禰豆子ちゃん攫われて黙ってられるかって話だ!!」

    「スッゲームカつく連中だから俺様もブッ飛ばしてぇ!!!」

    「行きましょう!妓夫太郎先輩!!」

    「………」

    何か知らんが、連れてったら役に立ちそうだなと思い、妓夫太郎はニヤリと笑ってエンジンをかけた。

    「振り落とされんじゃねぇぞテメェらぁぁぁッ!!」

    アクセル全開で発進させる妓夫太郎。急発進に思わず仰け反る3人だったが、何とか持ち堪え、振り落とされずにそのままバイクは学園を出ていく。
    2人乗りのバイクに、4人……誰が見ても完全に違反である……。そんな違反なバイクを、2階の校舎窓から覗いていたのは、

    「随分ド派手な事やってんなぁアイツ等」

    冨岡には黙っておいてやるか…と派手好き宇髄は感心しながら4人を見送る。そんな宇髄の元へ、後藤が慌ててやって来る。

    「大変だ!2年の村田からの知らせだが!!」

    「ん?」


    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

    工場跡地……妓夫太郎を目の敵にしてる不良グループの溜まり場……

    「うっ……ひっくっ……」

    「大丈夫だよ梅ちゃん。私がついてるからッ」

    恐怖から泣いてしまった梅を禰豆子が優しく抱き締める。

    「あ〜あ。可哀想に。あ〜んな不細工が兄貴だったせいで、こ〜んな目にあっちまってなぁぁ」

    ヘラヘラと笑う不良の1人がそう梅に告げると、

    「お兄ちゃんを馬鹿にしないでッ!お兄ちゃんは世界一カッコイイんだからッ!!」

    泣きながらも、兄を馬鹿にされた事へ怒り、妓夫太郎を馬鹿にしてきた不良をキッと睨む梅。

    「睨んだ顔も可愛いねー。あの不細工に変わって俺が梅ちゃんのお兄ちゃんになってあげようかー?」

    「黙れ不細工!!」

    「ぶさッ……!」

    「アンタ達なんかお兄ちゃんの足元にも及ばないんだから!」

    「そうだよ!こんな卑怯な真似するあなた達なんかより、妹思いな妓夫太郎さんの方がよっぽどカッコイイもの!」

    「オイオイ。それ以上俺らを馬鹿にするなら、その可愛い顔に傷付いちまうぜえ〜」

    「顔だけじゃねぇかもなぁ〜」

    下劣な笑みを浮かべる不良達。そんな不良達に負けまいと禰豆子は梅をギュッと抱き締め睨み付ける。

    「つか、謝花遅くね?」

    「もしかして、妹ちゃん見捨てたとか?」

    「うわ!酷え兄貴!!」

    ゲラゲラと笑う不良達に、禰豆子が声を上げようとした時、

    「誰が誰を見捨てたってぇぇ?」

    工場跡地の入り口から、1人、中へと入ってくる姿……

    「お兄ちゃん!!」

    「妓夫太郎さん!」

    妓夫太郎の姿に梅はパァっと笑顔を取り戻し、立ち上がり駆け寄ろうとするが、不良達がその行く手を阻む。

    「来たな!シスコン野郎!!」

    「1人で来たんだろうな!?」

    「あぁ。俺につるむ奴居ねぇの知ってんだろが」

    「そうだったな!ボッチのシスコン野郎!!」

    「んじゃ、そんなボッチのシスコン野郎の謝花君と楽しく遊んであげようぜぇ」

    妓夫太郎の返事に、不良達はニヤニヤと笑いだす。

    「舐めた真似すると…‥分かってっだろうなぁぁ?」

    不良の1人のその言葉に、不良の3人が、禰豆子と梅の周りを囲み、小型のナイフを2人の顔に近付ける。

    「!テメェら!梅と禰豆子を傷付けたらタダじゃおかねぇぞ!!」

    「テメェが大人しく俺らに遊ばれてりゃ良いんだよ!!謝花ぁぁッ!!」

    そう吠えた1人が妓夫太郎の腹部に蹴りを入れる。

    「ッー!」

    「そうそう!そうやって俺らのサンドバックになってりゃ良いんだよ!!」

    1人の蹴りを皮切りに、次々と妓夫太郎へ暴行を加えていく不良たち。梅と禰豆子を人質にとられている妓夫太郎は一切手を出さず、その暴力にひたすら耐え続ける。

    「イヤ……お兄ちゃぁぁぁん!!!」

    兄の痛々しい姿に涙が溢れ叫び出す梅。そんな梅を妓夫太郎の姿が見えないように必死に抱き締める禰豆子……。年下の梅を必死に守ろうとする禰豆子だが彼女もまたこの状況には恐怖していた。「お兄ちゃんッ…助けてッ…!」そう心の中で叫び、恐怖に耐える。

    「ハハッ!マジでコイツ何もしてこねぇな!」

    「可愛い可愛い妹の為だもんなぁ!頑張れよお兄ちゃん!」

    「ギャハハハハッ!!見た目不細工で重度のシスコンとかマジでウケんだけど!!」

    地べたに丸くなっている妓夫太郎の身体を足蹴にしたり、鉄パイプで殴ったりと不良達の暴行は続く…。妓夫太郎の頭からは血が垂れ、唇からも血を滲ませている。

    「なぁ。そろそろ俺らもそっちに加わりてぇんだけど」

    「誰か変われよー」

    「あー早く謝花をボコりてぇ」

    禰豆子と梅2人の見張りをしている3人は暇そうに暴行を見続けている。

    「なぁ早……」

    「……シン………モウシン………」

    「…お前、何か言ったか?」

    「いや?何も??」

    「何か聞こえ……」

    「猪突ッ…猛進ーーーーーッ!!!!」

    「ハァァァァァァァァッ!!!???」

    突如、床のコンクリートに穴が空き、そこから謎の猪(?)が飛び出し、見張りの3人は愕然としてしまう。

    「い、いのs……」

    「こっっのォォォォォッ!!」

    「ハッ!?」

    続いて穴から勢い良く飛び出してきた、額に痣のある少年が頭を勢い良く振りかぶり、見張りの1人に強烈な頭突きを食らわせる。頭突きを食らった不良はその強烈な衝撃に一瞬で気を失い、ぶっ倒れる。

    「なっ!?」

    「オラァァァァッ!!」

    続いて、目にも留まらぬ速さで、金髪の少年が不良へ勢い良くタックルし、その速さからなる衝撃はとてつもなく重く、その不良もまた一瞬で気を失い、ぶっ倒れる。

    「なっ、な……」

    「後はテメェだな!食らえ!!獣の呼吸!ヘッドバーーーーット!!」

    残る1人を猪がヘッドバットで沈め、見張り全てを撃沈する事に無事成功。

    「あ、あ…おにぃ……」

    「禰豆子!もう大丈夫だぞ!」

    「お兄ちゃんッ……」

    「禰豆子ちゃーん!大丈夫だったー!?」

    「ぜ、善逸さんッ…」

    「よう!俺様が来たからにはもう安心だぜ!!」

    「伊之助さッ……」

    いつもの3人。禰豆子の周りにいるいつも助けてくれる3人の頼れる姿に、禰豆子の緊張の糸は切れる。

    「ウワァァァァン!!怖かったよォォォォォッ!!」

    「うん!よく頑張ったな禰豆子!!」

    泣きじゃくる禰豆子を炭治郎が優しく抱き締める。

    「梅ちゃんもこっちにおいで!」

    「あ……」

    善逸に促され、梅も3人の元へ……。

    そんな光景を目の当たりにした、妓夫太郎を痛め付けていた不良達は…

    「お、おい……どういう事だよッ……コンクリートぶち破ってきやがったぞ…あり得ねぇだろッ!」

    「漫画かよッ!」

    「つか、これ……人質………」

    色々と常識外れな事が起こり、混乱している不良たちの背後に、凄まじい殺気が漂う……その殺気を感じ、不良達は冷たい汗を滝のように流し始める……。

    「ようお前ら………」

    「ヒッ……」

    「俺はよぉぉ、重度のシスコンだからよぉぉぉッ……妹泣かせた奴らは地獄に突き落とさねぇと気がすまねぇんだよなぁぁぁぁッ!!」

    口角を上げニタリと不気味に笑い、眉間にシワを寄せながら眉を釣り上げ、ギロリと睨み付ける妓夫太郎……指をパキパキッと鳴らし、完全に臨戦態勢。血を流しながらも殺気から伝わるその強さは健在。その姿に、先程までの威勢は露ほどにも消えた不良達は震え上がり、「ギャァァァァァァァッ!!!」と情けない叫び声を上げるのだった……。


    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


    妹2人を無事救出し、いざ家路へッ………とは行かなかった、高等部4人。

    「お前らなぁぁ……」

    キメツ学園高等部職員室で、炭治郎、善逸、伊之助、傷の手当を受けた妓夫太郎が正座させられていた……。その目の前には、怒りを顕にした不死川と、静かに怒りをみせる冨岡、いつもの表情ながら真剣な顔つきと分かる煉獄、少々呆れた様子の宇髄。後方では完全に呆れた様子の伊黒と心配そうに見つめる胡蝶の姿。

    「どう考えても誘拐!!どう考えても犯罪!!どう考えても警察に通報!!だろうがッ!!」

    不死川先生の言葉はごもっとも。

    「まさか謝花だけでなく、お前たち3人もとはな…」

    妓夫太郎なら1人で動いただろうが、1年筍組の3人組まで一緒になって禰豆子と梅2人を救出するとは思っていなかった冨岡はフゥと溜め息をつく。

    「でも先生!!妹が拐われたら動いてしまうのが兄です!!」

    「その妹の為に最善を尽くすのが本当の兄ってもんだ!!」

    同じ長男としての不死川の言葉に、返す言葉もない炭治郎。

    「謝花!お前もだぞ!!結果助かったから良かったものの、もっと酷え目に合ってたらどうする気だったんだ!?妹にトラウマ植え付けても良いのか!?」

    「ッ……!」

    不死川の言葉に妓夫太郎は顔を歪める。
    今回の作戦は自分が考えた。自分が囮になって、1年3人が2人を救出してから方をつける。結果作戦は上手くいったが、痛め付けられている自分を妹に見せつけられ、妹に深い傷を負わせてしまったのも事実…。不死川の言う事は最もだった。

    「……反省してる。今回ばかりは」

    珍しく反省する姿を見せる妓夫太郎に、その場にいた誰もが目を丸くした。

    「まぁ、警察が信用できねぇお前の気持ちも分かるけどな…」

    自分の浅はかだった行動を反省し項垂れる妓夫太郎に、宇髄は膝をつき、その肩にポンと手を置く。

    「俺ら教師の事ぐれぇは信用してくれても良いんじゃねぇのか?」

    ニッと笑みを浮かべ、妓夫太郎に笑いかける宇髄。その宇髄の笑みに釣られ、煉獄も目を細めた笑みを浮かべる。

    「宇髄の言う通り、我々の事は信用してくれ謝花。我々は必ずお前たち生徒を守るッ」

    煉獄の言葉に、胡蝶と冨岡は頷き、伊黒と不死川は「まぁそれが教師だからな」と照れ臭そうにする。
    そんなやり取りに妓夫太郎は

    「……青春ドラマかよぉ」

    とボソリと呟く……。こんな時にも悪態をつく妓夫太郎に、「オイッ」と不死川がキレそうになるが、

    「……ま、アンタ等の事は信用してんよぉ」

    視線を反らしながらの言葉だったが、炭治郎の「照れ臭そうな匂いがします!」の一言にその場の雰囲気は妓夫太郎以外は一気に和らいだ。

    「余計な事言ってんじゃねぇよッ!!」

    その後、今回の件に関して職員会議では、4人は反省文を書くだけに留まり、停学などの重い処分を免れる事となった。

    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

    妹2人の誘拐事件の翌日のキメツ学園高等部放課後…美術室には部屋の主である宇髄以外にもう1人の姿があった。

    「つかよ……あんだけ派手にやったのに、警察とか何も動きねぇんだけどよぉぉ……」

    宣言通り不良たちを地獄に突き落とす為に、締めに締め上げた妓夫太郎。多少の警察介入は覚悟していたが、その後一切何もない事を疑問に思い、それを宇髄に問い掛けてみた。

    「ああいうのはな、ちゃーんと後始末も大事なんだぜ」

    そう笑みを浮かべながら告げてきた宇髄に、「やっぱアンタか…」と察した妓夫太郎は、思わず顔を引き攣らせる。

    「どういう後始末したんだよ……」

    「内緒」

    「内緒て……」

    「生徒に教えれる内容じゃ無ぇからな」

    「うわッ…ヤベェ案件かよ……」

    「当たり前だろ……」

    椅子に座る妓夫太郎の前に立ち、宇髄は妓夫太郎のガーゼが貼られた頬に手を当て、真剣な眼差しで妓夫太郎を見つめる。

    「嫁をこんなに傷付けやがったんだ。ただじゃおかねぇよ」

    そう言い、妓夫太郎へ口づけをする宇髄。宇髄からの口づけを妓夫太郎は目を閉じ受け入れる。
    舌を軽く絡ませ、唇を離すと、互いの舌は名残惜しそうに糸を引き合う。その糸を引く舌を口内にしまい、妓夫太郎は宇髄を見上げながら告げる。

    「まだ嫁になってねぇけどなぁぁ」

    「卒業したらなってくれるだろ?」

    「…妹が許可したらなぁぁ」

    「おう。兄貴を嫁にくれッて今度言っとくわ」

    平静を装っているが、頬と耳が紅潮している妓夫太郎と、そんな妓夫太郎が可愛くて愛おしくて、微笑みを浮かべる宇髄。

    そんな2人のお話はまた別のお話……。
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